勇者レオの終わり
最後になります。
よろしくお願いします。
ジューダを討ち、とりあえず前世の仇は取れた。
尤もこれで終わりじゃあない。
これからが始まりだ。
まず、今回の惨劇は四大国家がアマルガム王国を滅ぼすために行ったテロ行為とした。
英雄ジューダと現国王ジュリアスを始め、大勢の犠牲者が出た最悪のテロ事件。
王太子ジュドーはそのテロで最愛の婚約者を失うも、毅然とした態度でテロリスト共を殲滅。
そして裏切った四大国家を相手に、報復を行うという筋書きである。
笑えるくらいに穴だらけで無茶苦茶な話だ。
だが、それで良い。
どうせこの国のクソ共も裏切り者のカス共も皆殺しなんだ。
切っ掛けなんてどうでも良い。
英雄ジューダと国王の敵討ちという事で国民のミナサマの士気は高い。
対して四大国家のミナサマは随分と困惑していただろう。
信じて送り出した国の重鎮や王族がテロリストとして断罪され、戦争吹っ掛けられたんだからなぁ。
戦争に関しては、予めジューダが集めていた情報が役に立った。
数では劣るが、教団の末裔達やカイル王の尽力もあり、10年経たずに我が国の勝利となった。
四大国家の王侯貴族はその末端まで皆殺しにした。
流石に国民全ては処理できなかったが、今まで押さえつけられた周辺国が亡国に対してどういう事をするのか……結果はお察しだ。
そしてオレは自国民に対しその牙を剥く。
戦争には勝ったが消耗も激しく、国はボロボロだ。
オレはカイル王と教団の皆と共にアマルガム王国も滅ぼした。
魔族共は何故って顔をしていたが、理由は今更言うまでもない。
こうしてクソとカス共の五大国家は消滅した。
その後、フレイアを筆頭に神聖人理教国を立ち上げた。
その初代王は勿論フレイアだ。
新しい世界の王にはコイツこそが相応しい。
実際フレイアを女王にする事に対しての反対意見は皆無で、満場一致だった。
その結果をフレイアは受け入れ、国のトップとして立った。
ドルマンもその補佐として辣腕を振るう事となった。
サトォーレ王国とも強固な信頼関係を築いた。
その証として、カイル王の次男であるカトル第二王子とフレイアは婚姻を結んだ。
カトルと初めて会った時はまだ小さい子供だったんだが……フレイアを紹介した時に一目惚れをしたという。
初恋が叶って良かったな。
フレイアの前世は男なんだけど、今世ではそれも関係ないよな!
色々と決着が付いてオレの肩の荷も下りた感じだ。
その後、神聖人理教国の女王となったフレイアの元、国は大いに栄えた。
美しく聡明な女王は国民全てに愛され、50年もの長きに渡り国を統治した。
老いてもなお、美しさを保った女王は息子に王の座を譲った後、王配と共に離宮にて穏やかに暮らしていたという。
時々、老人とその息子と思われる男性がお茶会に呼ばれたという。
神聖人理教国において、No.2として女王フレイアに仕えたドルマン卿は建国から凡そ30年後にこの世を去った。
300歳近いという脅威的な年月を生きた、存在その物が伝説と言える稀代の傑物はその死後、神聖人理教国において守護神として祭られた。
今際の際では、女王とかつての仲間達に看取られ、その死顔は穏やかな物であった。
神聖人理教国と強固な同盟を築いたサトォーレ王国のカイル王は、嘗てのジューダや王達の罪を暴いた事で周辺国家をまとめ上げた。
この世界において、唯一並ぶものは教国の女王のみとなる程の権勢を誇るも、決して驕ることなく、その見事な統治により賢王として名を馳せた。
後を継いだ第一王子もまた、治世においては先代を超える程の傑物であったとされる。
最後に全ての発端とも言える人物である、ジュドー・アマルガム第一王子こと勇者レオの晩年は謎とされる。
悪逆のペテン師、ジューダの孫として生まれた彼は、前世において勇者として魔王を討ち取った英雄であった。
ジューダと愚王達の策略によって命を奪われた彼は、この時代に転生し復讐を目論んだ。
そして彼は見事にそれを成した。
ジューダを粛清し、五大国家を滅ぼした彼は仲間達に後を託し、歴史の闇に消えた。
彼は一体どこへ行ったのか……それを知る者は、もういない。
まぁ、普通に生活してるんですけどね。
復讐を成し遂げたけど、ぶっちゃけそれでもう満足してモチベーション上がらんのよね。
世界の王として君臨して欲しいような事を言われたけど、ぶっちゃけメンドー。
そりゃあ王太子として帝王学を学んだけどさ、やる気でねぇンだわ。
それに前世では普通に一般人だったし、佐藤礼央個人の器じゃあ王サマなんて無理の無理だわ。
そんな訳でオレは自由気ままに彼方此方を旅している。
名前と顔を変えてな。
まぁ、戦争が終わったとはいえ全てがまっさらという事は無いし、ブラブラ旅をしながらクソカス共の残党を成敗する世直しの旅をしてるって訳だ。
敵対種族の魔物も普通に存在するし、それ等の討伐も入れている。
昔テレビで見た時代劇っぽくて楽しい。
魔物を倒し、周囲の村人から感謝されるオレ。
何だかあの時を思い出すぜ……。
もう無様を晒す気は毛頭無いがな!
それから暫くの間、旅をしていたオレはとある村に辿り着いた。
例によって魔物を倒した事で、村人から感謝される。
この辺りは魔物が多いので、少しの間滞在して魔物を狩るオレ。
そんなある日、クソ共の残党が村を襲った。
村人達を安全な所まで避難させ、クソ共を迎え撃つオレの眼前で、とある母子がクソ供に襲われる。
幼い我が子を庇う母親に汚ねぇ刃が振り下ろされる寸前に、オレの一撃がクソを両断する。
そのまま母子を抱えてオレは避難所へと連れて行き、クソ共の殲滅へと向かう。
これがオレと、後の妻と息子の出会いであった。
無事、クソ共を殲滅したが村は滅茶苦茶に荒れてしまった。
半分はオレの戦いの余波もあるのだが、クソ共がここを襲わなければこんな事には成らなかったので、やっぱりクソ共が悪い。
オレはツテを使い、村人達を教国へと移住させることにした。
教国は喜んでオレ達を迎え入れてくれた。
そんでもってオレに爵位を与え、村人たちが住む地の領主にしてくれやがった。
流石にこれをほったらかして旅に出る訳にもいかず、ざんねんオレの冒険はここで終わってしまった。
まぁ、腰を落ち着けるのも吝かではない。
国は無理でも地方の領主位ならやれんことも無いし。
こうしてオレは、教国の地方領主として新たな一歩を踏み出した。
領主として割と良い感じに統治しているオレは、以前助けた母子と良好な関係を築けていた。
既に旦那は鬼籍に入っており、父親を知らない子供に懐かれ、母親とも良い感じになって来たオレは、ある一大決心をする。
告白である。
よく考えてみると、前世日本にいた時は女の子との絡みは皆無であった。
こっちに召喚された時も修練と戦いの日々ばかりで、女の子とのラブロマンスなど無かった。
今世もまぁ、復讐ばかりを考えてほぼ義務としての交流しか無い。
意識しだすとヤバイなこれ……。
正直、オレの地位と経済状況を考えれば断られることなど多分ないと思う。
いや、亡くなった旦那に操を立ててるとかあるかもしれんし、何よりオレ、クソ魔族なんだよなー。
懸念事項が多すぎてどんどん気持ちが滅入って来た……。
魔物や魔族を平気で相手取る勇者のオレが、女性に告白をするしないの話でビビるとはなー。
意を決してオレは告白をした。
その際、オレが魔族であることも一緒に明かしたが、彼女は全てを受け入れてくれた。
その瞬間、生きている事を感謝しましたわ。
そんなこんなで彼女と結婚した。
子供はそのままオレの息子になった。
幸せってこういう事だったんだなとオレは思った。
……ちゃんと童貞も卒業できたよ! やったねオレちゃん。
月日が経ち、オレと妻の間に子供が生まれることは無かったが、代わりに孤児院を設立し、オレは領主兼院長をしていた。
息子も立派に成長し孤児院の子供達の良い兄貴分へとなっていた。
最近、息子に懐かしい誰かの面影を感じるようになった。
オレだけでなく、時々様子を見に来るフレイアやドルマンもそう思ったらしい。
が、息子は息子のままなので特に何かをするわけではなく、そのまま見守ることにした。
ただ、お茶会や城に誘ったりするのはどうかと思うぞ。
息子、めっちゃ緊張してるやん。
そして更に長い年月が経った。
息子達は立派な大人に成長した。
家庭を築き、子供も生まれるなど、充実した毎日を生きている様だ。
オレ達も孫が出来てご満悦だ。
……ドルマンが遂に天寿を全うした。
オレよか長生きすると思ったんだがな……。
だが、安心して逝ったその顔は……うん、良い笑顔だったよ。
人が生きるには余りにも永い年月だっただろうが、その最後は穏やかで暖かいものだった。
フレイアも女王を引退し息子に全権を譲ったそうだ。
アイツも漸く肩の荷を下ろせたんだな。
たまーに、城にお呼ばれする。
昔話を咲かせるために。
息子も一緒だ。
昔から良く通ったからな。
先日、妻が逝った。
オレみたいな男に尽くしてくれた、本当に良い女だったよ。
最後の言葉はオレへの感謝だった。
そして、オレもどうやら終わりが近いようだ。
本来魔族であるオレは数百年は生きられるのだが、魔物を取り込む施術をし、寿命と引き換えに力を上げたこともあり、普通の人間と変わらない程度の寿命となった。
妻はいなくなったが、子供も、孫も、曾孫まで出来て今、皆に囲まれている。
若い頃は碌な死に方をしないと思ったが、なんのなんの、良い感じじゃあないか。
過去にやってきたことを思えば、天国とやらには行けないだろうが、それでも良いだろう。
あのクソカス共は間違いなく地獄に墜ちているだろうからな。
あっちで会ったら全力でボコしてやるわ。
あ、でも一度死んだ時は別に何も見てないからな……。
あの世なんてあるんだろうか? わからん。
そう考えていると、意識が一瞬遠くなった。
いよいよかもしれん。
死んだ後の事はその時に考えるとして、オレは集まった人々に感謝を告げる。
「……ありがとう。皆に会えてオレは幸せだった」
最後の言葉を伝えると、急速に意識が遠のいた。
やりたい事、やるべき事、全てやった。
悔いはない……オレは人生に満足して、そして……。
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