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第一部最終回 行ってきます

「わぁああああ!凄いです!」

「ちゃんと掴まってるにゃよ〜」


 グレイとライルは魔獣化したネロに騎乗しているリリィを離れた場所で見守る。

 尤も、ネロに限ってリリィに何か怪我をさせるようなことはない。二人とも微笑ましそうに眺めているだけだ。


 そんなとき、グレイが切り出した。


『お義母さんはどうなったの?』


 グレイの質問を見てライルはなんとも言い難い表情を浮かべため息混じりに話し出す。


「ここから離れた場所で父上の監視付きで生活してる。……行かなくていいぞ?姉上が気に病むことじゃないしな」

『うん』


 グレイは知っている。例え夢、幻だったとしても自分がルーンを知らなかったら、ローズはあそこまで暴走はしなかった事。グレイから何か行動をしていたらまた違った未来があったかもしれない事。


 だが、それはあくまでもしも。

 既に道は別れ何事もないifとはかけ離れたのだから。


「ただいまにゃ〜リリィ、楽しかった?」

「はい!」


 グレイとライルが話しているうちにネロとリリィが遊び終わったようで戻って来た。

 魔獣化したネロに乗るリリィに手を伸ばしたライルは抱き抱えるようにしてネロの背中から下ろす。

 リリィがちゃんと降りたことを確認したネロは魔獣化を解き、グレイの元に歩いて来た。


「いやぁあそこまで楽しそうにしてくれると乗せるの楽しかったにゃ」

『今度乗せてね』

「なら帰りは乗って行くにゃ?」

『そうだね』


 グレイもネロも「帰り」という言葉を何気なく使ったがライルは寂しくなるな、と心のうちで思いつつリリィはどうだろうと妹を見る。

 ライルが見たリリィも似たような表情をしていた。


 だが、すぐにリリィは表情を天使のような笑顔に戻しグレイの元に駆け寄って行った。



◇◇◇


「初めて見ました!ルーン……あの時もこれを使って助けてくれたんですよね?」


 会話の中でルーンについての話題になった為、グレイはリリィにルーンを描いて見せていた。

 

『あの時のとは違うけどそうだね』


 流石にリリィがいる為に攻撃系のルーンは使えないので水球や火の玉程度に留めているが、それでもリリィにとっては未知の物。

 リリィはグレイのような目を輝かせた表情で眺めている。


 ネロは火の玉を見て思い出し、ライルに向かって話す。


「そういえばライルがジークに魔法を教えたんでしょ?」

「あぁそうそう!ジークさんの魔法、なんとか自爆しないようには手伝えたんだけどそれからが全くで。結局どうなった?」

『魔法で殴ってた』

「えぇ……」


 ライルは自分が教えた魔法を上手く使えているかを聞いたつもりが斜め上の答えを聞いてドン引きしていた。

 典型的な遠距離型のライルとしては近距離、まして素手に魔法を加えるとは思わなかったようだ。


「一応剣にも纏わせてたけど溶けちゃうんにゃよね〜」

「そんな魔法の使い方があるんですか?凄い人もいるなぁ」

『ダメだよ?アレはほぼ自爆と変わらないからね』


 リリィが若干良くない知識を頭に入れたので即座にグレイが訂正する。

 

 その後もリリィとの今までの時間を取り戻すかのようにグレイは楽しんだ。



 そうしてグレイが帰宅してから一週間後、グレイとネロは荷物を持って裏門に居た。

 ジーク達との約束の日になったのだ。


「一週間、意外と早く感じたな。忘れ物はないか?」

「大丈夫!最悪グレイがいれば何とかなるにゃ」

『問題なし』


 見送りに来たライルはそうか、と言って隣にいるリリィの背中を押して前に出す。


「あの、その元気でいてください!それから、それから……」


 何から言おうか頭の中でぐるぐるしているリリィを察してグレイがリリィの頭に手を乗せて撫でる。


『たまには帰って来て旅の話をしに来るから。リリィも元気でね』

「はいっ」


 この一週間でグレイとリリィの仲はかなり深まった。それは誰から見ても明らかなほどに。


 そんな子供達の様子を少し遠くから見ていたアルベルトが最後にグレイに歩み寄る。

 目を合わせ暫くの沈黙ののち、アルベルトが口を開く。


「いつでも帰って来ていい」

『うん、行って来ます』 


 たったそれだけの言葉を聞いたグレイは出発の挨拶をしてネロと共に裏門を出る。

 ライル達が米粒程に見える位置まで歩いたグレイは振り返って領主邸を見る。

 一週間前とは違う感情を抱きつつグレイはネロと共に森の中へと消えていった。


 そして、森を抜けた辺りで野営している一団をネロが発見した。


「アレ!?なんでジーク達がこんなところにいるにゃ?」

「お、来たか」


 森を抜けたところで野営していたのはジーク達だった。ちょうど薪を追加しているジークと遭遇したネロは驚いた。


 それというのも元々の合流場所はホリックだったからだ。


「ジークがいてもたってもいられなくて森で待つって聞かなかったの」

「いや、レイラも賛成したろ?」

「グレイ、ネロ久しぶり」


 一週間ぶりに会うジーク達だが何も変わっていない様子に居心地の良さを感じつつグレイは会話に参加する。


『これからどうするの?』


 グレイの言葉にジークが待ってました!、と言わんばかりに飛び起きて子供のような笑顔で笑う。


「剣を作りに行こう!ドワーフ製のやつ!」

「はいはい、まずはホリックに行くわよー。剣ならもうあるんだから我慢しなさい」

「えぇ〜まぁしょうがないか。行こうぜグレイ、ネロ!」

『うん』

「しゅっぱーつ!」


 グレイ達が乗り込んだ荷馬車は冒険者の街へと駆けて行く。

 グレイは新たな冒険の風を感じながらルーンの書を開くのだった。




作者初の長編三人称小説、楽しんでもらえたでしょうか。

この作品のテーマは【家族】でした。

まだまだ書き足りない事もあるので暫くしたらまた続きを書くと思います。

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