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騒動の後

 カシムとネロの無事を確認したグレイは疲れ果て甲板に座り込んでいた。

 甲板に上がりながらネロはリバイアサンに激突した船を見渡す。


「改めて見るとすごくボロボロになったにゃあ……」


 その言葉を聞いてグレイも辺りを見渡す。

 抉れた甲板、大穴の空いたマスト、大きく潰れた船頭。激闘の跡がこれでもかというほどに残されている。


(私も魔力が底をついてるし、カシムもネロもボロボロだ。他の冒険者たちは……どうでも良いか)


 それぞれ事情があったにせよ、グレイの中では完全にダイカンと同列の扱いになっている為、船に乗っている冒険者のことはもはや気にも留めない。

 実際、リバイアサンとの対決では全く役に立たなかったので評価が低いのもある意味当然ではある。


「親父、この船で帰れるのか?かなりやばそうなんだけど」

「マストさえなんとかすれば港までならなんとかなるだろ。そこに布ならあるしな」


 バルはチラッと冒険者の方を見る。


『確かに。全員の服を使えばマストの穴を塞がるだけの布が確保できる。やろう(まだ見たかった遺跡を壊された恨みを込めて)』

「やるってマジ?ダイカンの野郎はまだしもこいつらの服を?ってもう脱がせてるし。何こいつ怖……」


 有無を言わさずグレイは冒険者の服を剥いでいく。抵抗する者はほぼ居らず泣く泣く服を渡していった。流石にリバイアサンに対抗できる力を持った少女に対抗する気にはならなかったようだ。


(あ、そうだ)


 積み重ねた服を持ちながら冒険者に振り返ったグレイはレイラの怒った時の雰囲気を再現しながら『私の力を誰かに喋ったら……』とだけ伝えた。


 何をするのか聞くのが恐ろしくて出来ない冒険者達は首を千切れんばかりに縦に振って承諾する。


「怖いにゃ……あんなグレイ見た事ないにゃ」

「お袋いたらあんな怖いのかな……こえぇよ」


 船に戦々恐々とした空気が流れ始めたが服を受け取ったバルが思い出したかのように呟いた。


「そう言えばダイカンの野郎はどこ行った?誰か姿見たか?」


 グレイもカシムもネロも、他の冒険者もその姿を見ていなかった。

 というより途中から完全に忘れ去られていた。


「エゴチはここにいるな……おい、何か知らなぇのか?ん?」


 バルは手に持っていた相棒でえる銛をエゴチの首の辺りに突きつけて軽く脅す。

 

「しらねぇ!元々金払いの良いただの雇用関係だ、匿ったりしてねぇよ、本当に!」

「……本当に知らないらしいな、どこに消えたんだ?」


◇◇◇


「はぁはぁはぁ、ちょうど良くあいつらが乗ってきた小舟があって良かった……今頃、アイツらはリバイアサンの腹の中か。くく、私の邪魔をするからだ。アーハッハッハ!」


 バルがエゴチを脅している頃、ダイカンはカシムの船を使い先に街の人通りが少ない海岸に辿り着いていた。


(偶々船が揺れた時にあの船が下にあったお陰で誰にもバレずに逃げきれた。流石、私。悪運だけは誰にも負けんな)


 船を乗り捨て街の路地裏を隠れるように進むダイカンはこれからの行動について考える。


(ギルドには漁師連中が貼ってあるだろうな。おそらく使えない捨て駒が色々吐いているに違いない)


 作戦はかなり杜撰な物にも関わらず悪巧みに関しては人一倍頭が回るダイカンは次の一手を考えついた。


「そうだ!あの灰色の髪と獣人の小娘達を奴隷としてーーーふぎっ!?おい、ちゃんと前を」

「灰色の髪の少女について何か知っているのか?」


 考え事をしていたダイカンは明らかに普通ではない雰囲気を感じさせる男女二人組にぶつかった。


(なんだコイツら……あの小娘のことを知りたがっているのか……私の悪運はまだ尽きていないようだなぁ!)


「あぁ知っているとも!だが、情報料として私の安全と金を寄越せ!」

「良いだろう、来い」


 ダイカンと二人組は路地裏の闇へと消えていった。


(コイツらに上手いこと取り入ってまた成り上がるとしよう!これからが楽しみで思わず笑みが溢れそうだ……!)



 

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