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子を求めて

 リバイアサンが遺跡を留守にしてる隙をついて冒険者が侵入していく。リバイアサンの住処である遺跡の周囲にはサハギンもいない為中に入ってしまえば襲われる心配はない。


 爆発にやって倒壊した遺跡は残骸となって海に沈んでいるため手分けして探していく。


(ダイカンさんは見ればすぐ分かるって言ってたが……)


 上手い話があると聞かされて依頼に参加した冒険者である彼は素潜りが得意であったことから見つけるのは俺だ!、と息巻いていた。実際、息継ぎのために他の冒険者が浮上していく中彼だけが未だに捜索していた。


 壊れた破片が海底の砂を巻き上げているせいで視界が悪く手でかき分けながら進む。しかし、一向に見えるのは瓦礫、瓦礫、瓦礫。

 卵らしき物は見つからない。


 本当にあるのだろうかと疑い始めた頃、息継ぎを終えた冒険者達がまた潜水を始めた。この依頼、実は頭金以外に見つけたものに更に褒賞が付くというものでそれにより冒険者達は我先にと探している。


 そろそろ自分も息継ぎをしなければと思ったていたその時、不意に土煙の先に何やら青色の光をみつけた。空気が足りず息苦しいのを堪えながら向かった先にはまるで宝石のように輝く楕円形の物体と大きい卵のような物が落ちていた。


 見つけた喜びで残る空気を吐き出しそうになるのを堪えながら両方を抱えて急いで浮上する。息苦しさなどなんのその。これから始まる豪遊生活を想像しながら急いで泳ぐ。


 そんな彼を見た冒険者達はああ、アレ!、と指を指す。奪おうかと思った者も居たようだが彼の泳ぐ速さが速かったこと、海の中で戦えるほど時間的猶予も余裕もなかった為に悔しげに彼に続いて浮上していく。


「ぶはぁ!はぁはぁ……あった!見つけたぞー!俺が見つけたんだ!」


 久しぶりの空気を肺に大量に送り込みながら万感の思いで彼は卵らしき物を掲げる。


「おぉ!よくやったぞ、さぁ卵を持って来い!」


 甲板から顔を出し卵を掲げる冒険者を見たダイカンはそれはもう気持ち悪いくらいに笑顔で船へと上がる縄梯子を自分で投げ入れた。


「おぉコレが……」

「なんか二つあったんで両方持って来ましたけどどっちが卵なんすかね」

「フッあのリバイアサンの卵だぞ?こんな見窄らしい方ではなく光り輝くこっちに決まっているだろう」


 卵を見つけた冒険者にどちらが卵か聞かれたダイカンはそんなこともわからんのかと言いたげな様子で青く輝く宝石のような方を抱き抱える。

 息を荒くして撫で回し、頬を擦り合わせ挙げ句の果てに舐め回す始末。気持ち悪いことこの上ないがそれを指摘出来る者はこの場には居なかった。


「じゅるっ……よーし!帰還するぞ!」


 気が済んだのか船を街に戻すように指示するダイカンはこの後に続く億万長者になった後のことを考える。


(これを売れば私は大金持ち……!端金さえ賄賂で渡せばこんな田舎のギルドではなくもっと上の、もしかしたら王都のギルドの長の席だって夢ではない!ふふ、ふはは、はーはっはっ)


「ダイカンさん大変です!」

「はは、何かな?金なら気にするな。私は気分がいい、依頼金の増額くらいなら考えてやらんでもないぞ」


 冒険者の一人が慌てた様子で話しかけて来たのを見つけられなかったから依頼金の交渉に来たと思ったダイカンは太っ腹だろう、私はと思っていた。


 しかし、やって来た冒険者は焦燥感を滲ませ更には顔が蒼白になっており全身で恐怖を表していた。


「違いますッ奴が……リバイアサンがこちらに向かってやって来てます!」

「はぇ?」


◇◇◇

 海の王、リバイアサンは激怒していた。住処が壊されたことは勿論だがサハギンの無能さにも、無礼者に好きにやられた自分にも、そしてあまつさえ自分達を攻撃した者達が逃げていくなどいう、生まれ出てから味わったことのない屈辱に荒れ狂う。


(逃げるな、下衆で矮小な盗人ども!)


 激情に駆られ逃げる者達を追うリバイアサンだったが一つ、彼女を引き止める存在がいた。遺跡に残して来た我が子である。


 魔力による子から親への救難信号。子が脅かされピンチになっていることを知った親は即座に反転、子がいる場所に全速力で向かった。


 周りに他には何者も居なかった筈だが子が間違うわけもなく何の疑問もなく子へと辿り着く。

 そこには何もないように感じるが確かに何かいる。リバイアサンは頭にある珊瑚のような独特のツノに魔力を集め子がいるであろう場所に向けて放つ。

 母が来たことを伝える魔力の波は卵の中にある我が子に伝わるだけでなく気配を消していた魔封石すら叩き割った。


 その瞬間、リバイアサンの視界に船が見え怒る。

 すまない、我が子よ。怖い思いをさせた、今すぐにその盗人どもを海の藻屑にするからな、と。


◇◇◇


「あわ、あわわ……」


 水色の鱗、長く太くそして美しい海を凝縮したようなツノ、深海のように暗い瞳。

 海の王がその姿を見せたことで船の乗員はパニックに陥った。


「なんで奴がここに!?」

「知るか!どうせしくじったんだろ!?」


 乗員は置かれたまな板の上でビチビチと動くしかない魚のように慌てることしかできなかった。


 そんな者達に鉄槌を下そうとリバイアサンは口に魔力を溜める。ダイカンが用意した魔封石など比にならない規模の魔力が船に向かって放たれようとしている。


 その様子に誰もが諦めた。ここから逃げようにも海はリバイアサンの領域、逃げ場などない。


 そんな時、急に辺りが暗くなる。


「エッ」


 誰かが自分の目を疑うように声を漏らす。何故なら。


「止まれ止まれ止まれー!」

「死ぬー!」


 船が空からリバイアサンの頭めがけて突進している光景が見えたから。


 その光景に疑う前に船はリバイアサンの頭にぶつかりワンバウンド。その衝撃でリバイアサンの口が閉じて頭が揺れたのか砲撃が止む。その立役者である船はマストを突き破り反対側の海に着水し、乗っていた乗組員はマストから転がりながら甲板に落下した。


「本当に次はもうやるなよ!?絶対だからな!?」

「目が回るにゃあ〜」

『ごめんなさい』


 

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