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悪者達の悪巧み

 宿に居るはずのバルの姿が見当たらないグレイ達は宿の中を探す。

 食堂の椅子は破壊されテーブルも倒れている。明らかに何者かが破壊した形跡がある光景は言いようもない怒りを浮かばせる。


「バルのおっちゃんー!無事にゃー!?」


 ネロが声を出してバルを探す。すると厨房のほうから呻き声がした。

  急いで向かうとボロボロになっているバルが倒れていた。明らかに誰かから暴行を受けたと分かる。


「嬢ちゃん達帰ってたんだな……無事で良かったぜ」

「いや、おっちゃんが無事じゃないにゃ!何があったにゃ!?」

「何でもない……ただの喧嘩だ。それよりカシムは?」


 脇腹を押さえながら壁に手をついて立ち上がるバルは自分の事よりカシムが無事なのかを確認する。

 

「船が壊れたから今頃修理の真っ最中にゃ」

「…………そうか。無事なんだな。すまねぇ、ちょっと俺は休ませてもらう」


 痛そうにふらふらとバルは宿屋にある自分の部屋に入って行った。置いてかれた二人は明らかに大丈夫ではないバルを心配しつつ荒れた宿屋を見渡す。


「許せない。この宿屋は魚をくれたいい宿屋にゃ。バルも陽気でいい奴にゃ。それをこんなにした奴に目にもの見せてやる!」

『私も賛成だけどどうするの?』

「こうするにゃ」


 四つん這いになったネロは尻尾を立て床ギリギリまで鼻を近づける。鼻をピクピクさせすんすんと匂いを嗅ぐ。そうして宿の中をテクテクと歩くネロとそれを後ろからついていくグレイ。


 しばらくするとバッとネロが立ち上がりまるで獲物を見つけた獣のような顔をしては的に笑う。


「見つけた。絶対この匂いにゃ」

『追える?』

「任せてほしいにゃ」


 宿に残った匂いの中で最近、しかもバルからも感じた匂いを嗅ぎ分け犯人を見つけたネロは宿を飛び出し匂いを頼りに道を歩く。


 すんすんと匂いを嗅ぎながらある建物に辿り着いた。


「ここにゃ!」

『でもここって』


 二人がたどり着いたのは冒険者ギルドの建物であった。


 中に入り周囲を観察する二人は中にいた者からは二人組の初心者に見えたのだろう。明らかにガラの悪そうな男が絡んでくる。


「うっへっへ、弱そうだなぁ俺が《《色々》》と指導してやろうか?」


 そんな下衆にゴミを見る目を向ける二人は小さい声で確認する。


「コイツじゃないにゃ」

『分かった』


 無視して探すグレイ達だったがネロが「広場には居なそうにゃ」と言う。匂いを辿ろうとネロが匂いに集中すると先ほどの男が無視されたことに顔を赤くして怒り殴りかかってきた。


『邪魔』


 グレイは走り殴りかかってくる男を一瞥しバレないように男に回転のルーン、足元に滑りやすくするルーンを設置した。

 結果、周りから見れば女の子二人に殴りかかっておきながら足を滑らせてものすごい回転をしながら勝手に転がる無様な様子に映ったことだろう。


 ギルドには男を笑う声が鳴り響き完全にグレイ達への注目は薄れた。その段階でネロが匂いの続く方向を見つけた。

 男がグレイ達を睨んでいたが興味も関心もない男の視線に気が付かなかったグレイ達はスタスタとその場を後にする。


 匂いを頼りに進むと明らかに豪華で他とは違う部屋にたどり着く。


「ここにゃ、後はこっちが殴り込んでやる」

『ちょっと待って』


 完全に頭に血が昇って臨戦態勢のネロを宥めグレイはルーンを描く。ルーンは二人の体に行き渡り気配を消す。


『これで私たちには気が付かない。何でバルをあんなにしたのか気になるでしょ?』

「……分かったにゃ」


 そこに足跡が近づいて来た為二人は身構える。格好から察するにギルドの受付嬢だ。受付嬢は先ほどの部屋の扉を開ける。


「今にゃ」


 二人はそれに便乗して中に侵入した。


「なんだ?今忙しいのだが」


 中には男が二人居た。そのうち一人はネロとぶつかったあの男だった。


「広間で冒険者が騒いでいますが」

「放っておけ!何がなくても騒ぐのが奴らだ、それだけか?なら帰れ、今から重要な話をするのだからな!」


 失礼しました、と受付嬢が部屋を出ていくと香水のきつい豚男と体つきは悪くないが顔から滲み出る悪そうな雰囲気の男が会話を始めた。


「それで例のものは?」

「それがバルの奴口を割りませんでした。収穫はないですな。しかし何故、漁業権を探し求めに?」

「我々が漁業権を握れば奴らは俺たちの許可なしでは漁にも出られないからな。金をふんだくれると思ったんだが甘かったか。ふん、まぁいいそれはついでだからな」


 豚男が見るからに高級そうな椅子の背もたれから背を離して机に肘を置く。

 悪いことを企む顔をして笑みを浮かべる男は更に話し始める。


「リバイアサン、アレは今、産卵期なのだよ」

「はぁ」


 豚男の企みにピンとこない男は何となく相槌を打つ。


「知らないかもしれんが魔獣リバイアサンの卵はな、闇オークションで相当高額に売れるのだよ。珍味、鑑賞などなど利用法は様々だが一番は貴重な魔力源としてだ。年に一度、複数個卵を産むが一つ以外は無精卵だ。それには高密度の魔力が蓄積されているのだ」

「つまり、魔石と似たような物だと?」


 ようやく理解が追いついて来た男にニヤリと笑う豚男は興奮した様子を見せる。


 それにグレイ達も男達が何をしようとしているのかを理解した。


「アイツら卵を奪う気にゃ。なら勝手に玉砕して自滅すればいいにゃ」

『でも見てみたい、卵』


「それ以上だよ!大きさもさることながら密度も質も最高級の魔石と変わらんと聞く。欲しいだろう」

「しかし、奴は遺跡から出てこないですぜ?旦那の依頼で冒険者が近づいて以来船も落とす念入りぶり。正直、近づかない方がいいと思うんですけどねぇ」


 男はかなり弱腰になっている様子で計画には賛同しかねるようだ。そんな男に豚男は「秘策ならあるのだ」と懐から何かを取り出した。

 それは緑色の巨大な宝石だった。


「これはまさか……魔封石!?それもかなり大きい」

「これを遺跡で爆発させる。ダミーで数隻船を移動させればリバイアサンは襲撃者を追うだろう」

「なるほど、ではその船はその辺の冒険者にやらせるとしましょう」


 男達が出て行ったところでグレイ達も続いて外に出る。だが、ネロはかなり焦っていた。


「やばいやばいヤバすぎるにゃ!アイツら大馬鹿にゃ!そんな事したら船どころか街も標的になるに決まってる!」

『止めないと』


 急ぎ二人は船を修理しているカシムの元へ向かった。


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