Ep6 百花(前編)
8.2追記
すみません、一話飛ばしてました…upする順番を間違えました。
いきなりネタばらししちゃったじゃないか………
昨日一昨日に読んだ方はきっと「?」と思ったに違いありません。
一話挿入して、後半につなげました。
楽しみにしてくださってる方に申し訳ないことをしてしまったと思ってます。
以後気をつけますm(__)m
これからもよろしくお願いします。
転寝猫
「………愁……か」
確か、そう呼ばれていた。
韓紅の血と紺青の血…二つの能力を持つ男。
紺青の血を引く、強い意志を秘めたような赤い瞳。
「でも………どうして?」
ずきん、と傷が痛んでうずくまる。
「どうして………」
わからない。
冷たい風に周囲の木々が音を立てた。
膝を抱えてうずくまる。
「母様………」
「…ふむ」
お茶をすすりながら、柳雲斎先生がつぶやく。
「炎の『神器』とな」
藍さんが大きく頷く。
「『氷花』じゃ全然歯が立たないんです!だから先生…何か心当たりありませんか?」
柳雲斎先生は昔、士官学校で『神器』の講義を担当していたことがあるらしい。
『宝物殿』にある『神器』のことはきっと先生が一番詳しい…ということで、こうして先生の元を訪れたのだった。
ふむ、と顎に手をやって柳雲斎先生が言う。
「無いことは…無い」
「本当ですか!?」
「『水鏡』と『蛍丸』のように、『氷花』を作った刀工が作ったとされている刀があるにはあるんじゃが…」
目を輝かせる藍さんに、難しい顔で言う。
「あれは『氷花』と違って…かなり癖が強い刀でな」
「遣いこなしてみせます!教えてください先生、その刀の名前」
黙り込む先生に、藍さんは更に強い調子で続ける。
「先生、私…今完全にみんなのお荷物なんです!騰蛇隊伍長として紺青を守らなきゃならない立場の私が…だから、お願いします!!!」
藍さんの言葉に根負けした先生がぽつり、と言う。
「その刀…名を『百花』という」
「浅倉隊長、どうしてますか?」
遠慮がちな藍さんの問いかけに、橋下伍長が難しい顔で首を振る。
「拘留されてからずっと何もおっしゃらないもので…我々も手を焼いているんですよ」
「会えませんか?…私、話したいことがあって」
無駄だよ、と背後から来斗さんが近づいてくる。
「愁のやつ…誰にも会いたくないとさ。俺も職務柄会って話さなければと思ったんだが…断られてしまってな」
「そうですか…」
愁さん…一体。
「まったく…バカなんだから、あの子」
ぽつりとつぶやく藍さん。
「まったくだ…一人で何を抱え込んでいるんだか」
来斗さんが天を仰ぐ。
「それで『神器』の件だが…どうするんだ?」
「『百花』って刀、知ってる?」
いや、と来斗さんが首をひねる。
「聞いたことはないが…『氷花』の刀工の作が他にもあったということ自体、初耳だ」
「でも、先生の話ぶりだと『宝物殿』にあるみたいですね、その刀」
探してみます、と明るい声で藍さんが言う。
「『百花』…きっと見つけて、遣いこなしてみせます!私約束したんです、十六夜隊長と」
「十六夜隊長…ですか」
「お母さんと小春さんの一族…韓紅の暴走を止めること。それは一族の血を引いている私の役目ですもの」
昨日までの暗さは一切感じられない、いつもの藍さんの笑顔だ。
よかった…思わず笑顔になる。
「お手伝いします!僕も」
「剣護いる!?」
見ると、一夜が勾陣隊舎の入り口で手を振っていた。
「おー、どうした?珍しいなぁ」
「お前も。珍しく一人なんだな」
懐かしそうに隊舎を見渡す一夜。
「今日は藍のとこじゃないのか?」
「ああ」
おそるおそる…聞いてみる。
「…仲直り……したのか?」
「仲直りって…」
くるっと俺の方を見て満面の笑みで答える。
「そんな、俺と藍が喧嘩なんかするわけないじゃん!?」
つまり…仲直りしたわけだな。
「よかったなぁ一夜…朱々丸も東に帰ってってくれてさ」
「なぁに言ってんだよ!?あんな奴最初っから俺の敵じゃないって」
道場に掛かっている竹刀を何気なく手に取りながら一夜が言う。
「藍なら今士官学校だよ」
「…士官学校?」
「そ。『宝物殿』で炎の属性の『神器』を探すんだとか言ってさ。右京も『水鏡』だけじゃ心もとないからって、二人で行ってるみたいだけど」
…何?
一夜は意味ありげに笑ってこちらを見る。
お前…
それを俺に教えに来てくれたのか。
「さんきゅ一夜!俺も行って来る!!!」
隊舎を出ようとする俺の背中に、おーい、と一夜の声が飛ぶ。
「隊舎空にしちゃっていいの?」
「悪い!店番頼むぞ!!!」
「…店番ねぇ」
剣護を見送って、隊舎の板張りの床に腰を下ろす。
後悔や未練なんて欠片もないつもりだけど…それでも。
「…懐かしいな」
悲鳴に似た数人の男の声に気づき、笑顔で戸口を見る。
「あ、お帰り!お疲れさーん」
「こ…古泉…隊長……???」
青ざめている隊士達。
「そんな顔すんなよー!俺もう隊長じゃないし、ただ剣護に留守番頼まれただけだから」
「そ……そうだったんですか……」
手にした竹刀を向けると、彼らはぎゃっ!と小さな悲鳴を上げる。
「暇だし稽古でもつけてやろうか?いつもは金取って教えてるんだけど、今日は特別にタダにしといてやるからさ」
「ええっ!!??いや…その……」
「……遠慮…させてください…」
薄暗い『宝物殿』の中を進む。
沢山の『神器』と、それを今まで遣ってきた人々の意思の欠片のようなものが充満しているような気がして、何だか異様な雰囲気の場所だ。
「そういう気配を感じられるのってきっと…韓紅の血なんでしょうね」
難しい顔で藍さんが言う。
「おーい右京!藍!!」
背後から剣護さんが走ってきた。
「どうしたんですか!?」
「一夜がここだって…教えてくれてさ…」
走ってきたらしく荒い息で言った剣護さんは、僕達の手を強く握る。
「『神器』探すの手伝わせてくれよ!『蛍丸』じゃ不安だなって思ってたんだ、俺も」
「勿論です!」
にっこり笑って答える。
それにしても、と藍さんがつぶやく。
「見つからないですねぇ…『百花』って刀。さっきから相当探してるのに…」
確かに。
まるで何かが僕達からその刀を隠しているような…そんな感じがする。
『橋下伍長!!!大変です!!!』
書斎に篭っていると、無線から大裳隊士の焦った声が飛び込んできた。
「どうしました?」
『浅倉隊長が…』
………何だと?
『『螢惑』は没収していたんですが…突然独房の扉が炎の塊で破られまして』
生まれながらの『神力』…そうか。
『今のところ負傷者は出ていませんが…浅倉隊長の行方が…』
「柳雲斎先生は?」
『三日月伍長の様子を見に士官学校の『宝物殿』へ…どうしましょう!?橋下伍長…』
ちっ、と思わず小さく舌打ちをしてしまう。
「とにかく…浅倉隊長を探しましょう。まだそんなに遠くへは行っていないはずです」
『あの…騰蛇隊への要請は…』
「そう…ですね」
全く三日月藍といい古泉一夜といい…
『五玉』という連中はなんでこう手がかかるんだろう。
『宝物殿』に後発の剣護が飛び込んで行って、もう一時間近く経っただろうか。
「見つからぬのかも知れんな」
振り返ると、そこには柳雲斎先生と花蓮様の姿。
「『百花』か…」
俺がつぶやくと、龍介が言いづらそうに口を開く。
「あの、俺…槌谷にその刀のこと聞いたんすけど……あいつ変なこと言ってて…」
「何だ?」
『天一隊ではあの刀は『呪われた刀』って言って、極力士官生の目に触れないようにしまってあるの。昔『百花』に魅入られた女子生徒が非業の死を遂げた…とかって噂があって』
「非業の死…『呪われた刀』…?」
「…もう、一体どこなのよ…」
つぶやいて、もう何回も見た棚を覗きこむ。
「『神器』がここにいまーす!って返事してくれたらいいのに…」
その時。
ぞくっと寒気がする。
背後に人の気配…
でも、右京でも剣護でもない。
『探し物は…これかしら?』
振り返ると、そこには士官学校の制服の少女が立っていた。
その手には鋼のように鈍く光る鞘に収められた、一振りの日本刀が握られている。
髪の長い美しい少女は静かに微笑む。
『『百花』を探してるんでしょ?』
「え…ええ」
どうやら手にした刀が『百花』らしい。
動揺を抑えて私も笑って答える。
「ありがとうございます…探す手間が省けました」
『手間…って、大分探したんじゃない?』
「ええ…まあ」
でしょうね、と楽しそうに笑う。
『だって、ずっと私が持ってたんだもの。あなた達が来た時から、ずうっとね』
「一体……どうして…」
『この刀が必要なの?』
完全に彼女のペースだ、と思いながら答える。
「私の遣っている『氷花』が…氷の属性の敵に全く歯が立たないんです。だから炎の属性の…『氷花』と同じ刀工の作であれば、と思って」
『『氷花』も美しい刀よね』
「……ええ」
ごくん、と唾を飲み込んで、静かに言う。
「『百花』を…遣わせてもらえますか?」
いいわよ、とあっさり彼女は答える。
「本当ですか!?」
『いいけど…』
今まで微笑んでいた彼女の表情がぴりっ、と引き締まる。
『まずは…あなたがそれに見合う実力の持ち主かどうか、試させてもらうわ』
「呪い…」
花蓮様が突然噴き出す。
「何ですか花蓮様!?いくら花蓮様でも槌谷のことバカにしたら怒りますよ俺!?」
怒鳴る龍介にごめんごめん、と笑いながら謝る花蓮様。
偶然所用で士官学校を訪れていた朔月公が、少し離れた所で不思議そうな顔で見ている。
「だぁから何が可笑しいんすか!?花蓮様!?」
「だって……呪い殺されるなんて……」
「そら可笑しいかもしんないっすけど!槌谷だって笑われんの覚悟で教えてくれたんですよ!?」
「でも…やっぱりそうだったんですね、先生!?」
ふむ、と複雑な顔をする先生。
柳雲斎先生は花蓮様が士官生だった頃から、教官として士官学校にいたそうだ。
「そうって?」
「あの子は…呪い殺されるようなタマじゃないわよ。秋風、『百花』って覚えてない?」
「何だ?」
聞き返す朔月公に意味ありげに笑う。
「『扱うのには少し、コツがいるの』」
はっとした表情の朔月公に花蓮様はウィンクしてみせる。
「『でも、あんなに美しい刀初めて見たわ』」
「…そうか」
因果だな、とつぶやく朔月公。
花蓮様が龍介に言う。
「ねえ龍介くん!良かったら一夜くんもここに連れてきてあげてくれないかしら?ひょっとしたら面白いものが見られるかもしれないから」
「面白いもの?」
その時、不意に柳雲斎先生の無線が鳴る。
『左右輔です。先生…申し訳ありません、浅倉隊長が姿を消しました』
「何じゃと?」
『騰蛇隊に応援を要請したいのですが…』
厳しい表情に切り替わった龍介が無線を手にする。
「龍介です、了解しました。至急手配します」
ったくあいつは、とつぶやく龍介。
「どうしてこう世話が焼けんだよ!」
『神力』の気配を頼りに森の中を進む。
大きな木の下に、傷だらけの少女は静かに立っていた。
「あんた…まだこんな所にいたんか?」
何も言わず、くれははじっと僕を睨んでいる。
思わずため息をついて、彼女が何か言うのをじっと待つ。
長い沈黙。
頑固でプライドが高くて…
まるで、小さい頃の舞のようだ。
「…何故助けた?」
ぼそり、とつぶやくくれは。
「私はお前の敵だぞ?それなのに………何故」
「別に…助けたわけやあらへんけど」
「バカにするな!!!私は…」
思わず表情がゆるんだ僕に激情して怒鳴る彼女に、穏やかに話しかける。
「あんた見てると…母さんのこと思い出してしまってな」
「………小春のこと?」
「一年の大半は雪と氷に覆われた暗くて冷たい土地だったけど、大好きだった…懐かしいて、雪が降るたんびに言うてたからな、母さん」
母さんの優しい瞳の奥にある孤独。
花蓮様が傍で支えてくれていたし、師匠も力になってくれてはいたけど、母さんはいつも一人ぼっちみたいに見えた。それは、悲しいけど僕がいても同じだった。
もしも父親が傍にいたとしても、多分同じだったんじゃないだろうか。
幼いながらに大好きな故郷を追われ、大事な人々に拒絶された経験のせいだろうか。
僕が大きくなったら、母さんを守ってあげられるくらい強くなったら…
いつか、あの孤独を晴らしてあげることが出来るんだろうか。
あの頃はいつも、そう思っていた。
「だから…何だというのだ?」
くれはの冷たい声に回想を断ち切られ、我に返って彼女の青い瞳を見つめる。
「私にお前の母親と同じ運命を辿れと?…一族を離れて一人で、孤独に暮らせばいいと言うことか?」
拳を握り締めた彼女の瞳が涙で潤む。
「私はお前の母親とは違う。私には一族の命運を託されているのだぞ?なのに…」
出来るだけ刺激しないように、いいか、と静かに声をかける。
「あんたにはまだ利用価値がある…だから冬鬼もあんたを傍に置いてるいうだけや。利用価値がなくなれば追放も免れないやろし…そんなことになったらあんた、傷つくやろ?」
「そんなこと…あるわけがない」
「何でそう、言い切れるんや?」
それは、と口ごもる。
「あんたが紺青に来てること…あいつらは知ってるんか?」
「………」
「もう丸一日経つのに…あいつらは何も動いてないやないか」
「それは………」
うつむいた彼女の黒髪が、冷たい風に揺れる。
「全て私の独断だから……自分で責任を取るようにと…多分、そういうことだ」
「…酷やなあ」
あんたいくつやと聞くと、14、と短く答える。
本当に…あの頃の舞と同じ年なのか。
「そんな小さいのに一人で責任取らせるやなんて…出来るわけないやないか」
「そんなことない!私には出来るって…」
舞の能力は非常に高かったが、それでも精神面が能力に追いつかない印象を受けた。
それは多分、孝志郎達から見れば僕も同じだったんだろうけど。
「あんた…自分で思ってる程大人やないんやで?」
「そんな………」
「僕は…君のこと、助けたいんや」
「……何を……」
青い瞳が戸惑いの色を見せる。
そして…大きく見開かれる。
『やっと見つけたぜ、くれはちゃん』
鋭い刃に貫かれた彼女の小さな体から血が滴り落ちる。
驚きと痛みをこらえる様にして、くれはは後ろに立つ人物を睨む。
「………玉屑」
「お前一体!?」
玉屑はひきつった笑いを浮かべて、突き刺さった剣を抜く。
『たく浅はかだよなぁお嬢さんは…一人で一体何が出来るつもりだったんだよ』
「な……に………」
『冬鬼様に言われてな、仕方ねえから様子見に来てやったぜ。こいつらの手に落ちるようなら…その前に始末して来いってさ』
「そん…な」
大きな瞳から涙が一筋、流れる。
そしてどさっと地面に崩れ落ちた。
「お前………」
真っ赤な血が地面に広がる。
いつの間にか降り始めた粉雪が視界に入る。
鈍い頭痛に襲われ、思わず顔をゆがめる。
あの時と…同じだ。
何も出来なかった。
ただ母さんが殺されるのを見ていることしか出来なかった…あの時と…
「許さへん…」
『螢惑』が赤い光を放つ。
「お前だけは…絶対に!!!」
感情の高ぶりに合わせて燃え上がった炎に玉屑は一瞬ひるんだようだったが、ゆっくりとその表情は愉快そうな笑顔に変わる。
『そうかい…やるってのか。おもしれえじゃねえか!?』
青白い光が鋭い刃となって襲い掛かる。
目を閉じ意識を集中させて…唱えた。
『火群』!!!
赤い炎と青白い光がぶつかり合う。
玉屑は衝撃に顔をゆがめる僕を見てまた愉快そうに笑う。
『ほーらどうした?さっきの勢いは…』
その力に押されてずるずると後方に押しやられる。
『混血無勢に何が出来るってんだよ!?』
目の前が青白い光に包まれ、僕の体は吹き飛ばされて地面に叩きつけられた。
「ぐっ……!!!」
玉屑は氷のサーベルのようなものを手に、ゆっくりと近づいてくる。
『痛そうだなぁ、兄ちゃん』
「…う………」
『小春ってのはもっとこう…出来る女だったように聞いたけどまぁ、汚ねえ紺青の血で薄まっちまったんじゃ…こんなもんだろうな』
冷たい風が周囲を包む。
『螢惑』に呼びかけるが…反応がない。
凍てつく空気に体の感覚も半分失われていた。
『ちょーっとばかしかわいそうな気もするけどな、あのチビ介もお役御免だ…未熟なあいつの力なんぞ使わずとも十分紺青は落とせるって、冬鬼様のご判断だからよ』
血の海に倒れる、くれはの小さな体が目に入る。
その体には大きすぎるように見える白いローブは、真っ赤に染まってしまっている。
『ファビョってお前らのところに転がり込む前に息の根止めねえと…こんだけの力だ、敵方にやるわけにはいかねえからな』
「な…に……?」
『まぁでも…先にお前から始末してやるぜ。惨めなもんだなぁ、お袋と同じ力を持つ人間に殺されちまうなんてのは…』
氷の刃が目の前に突きつけられる。
『くれはのこと助けるとかなんとか言ってたみてえだけどな…所詮てめえなんざその程度のもんだ』
何も…出来ないのか?
『お前には…誰も救えやしねえんだよ…』
そんなの………
『風』
母さんの声が脳裏に響く。
次の瞬間体に熱が戻ってくる。
「馬鹿に…するな!!!」
『螢惑』が真っ赤に光り、炎の剣が現れて氷の刃と交わる。
『何!?』
赤と青、二つの光が交わり、周囲はまぶしい光に包まれる。
「お前は…僕が倒す!!!」
『螢惑』が更に輝きを増し、爆発するように燃え上がった炎は玉屑の体を吹き飛ばした。
『ぐぁっ………!!!』
その体は木々をなぎ倒し、地面に叩きつけられる。
体の力が抜け、がくっと地面に膝をつく。
「…やった…か」
小さなうめき声を上げ、ふらふらと起き上がった彼は恨めしそうに僕を見る。
『十六夜風…って…言ったか』
炎に焼け焦げた体を吹雪が包み込む。
『覚えておくぞ…』
「待て!!!」
駆け寄ろうと体を起こした瞬間…
奴の体は風の中に消えていた。