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あの、激しい怪物との戦いから帰って数日間悩んだ。収入源がなくなってしまったから。
拒絶のレレラがいる以上、森にはうかつに入れない。
ぐ~~~
お腹が鳴る、仕方なく、貯蔵してある、のこり少ない食料を使って、味噌汁を作る。
「うん、うまい。すごくうまい。いいねぇ」
限界まで追い詰められて、仕方なく外に出て、図書館の本を必死に読みあさり、見た目が、悪くなってしまう。
紋様魔法、温消しのページを開く。読み方はもんようまほう、おんけしだ。本には、何度も開いた後がありこのページは、ずいぶんと見つけやすい。
そう、キラメアが何度か悩み、透明化と併用しようとしていた魔法だ。
目の下にピンクの紋様を刻む、一度つけたら、もう二度と消えない。
彼女だって女性だ、綺麗な顔でいたい。けれど、そうは、言ってられない。
背に腹は変えられない。このままじゃ生活ができない。
彼女は、ピンクのひし形のような模様を刻んだ。
すると、体は、生きていないかのように、周りの温度に溶け込み。
透明化魔法を使えば、お化けのようになった。
もう、誰も私に、気づくことはない。
人と接するのが苦手だけど、寂しがりな彼女は、ゴーストレディになってしまった。
もう、だれも、アタシを見つけ、歩みよってくれはしないだろうと。泣いた。
たとえ、透明化を解いて姿を見せても、この魔法に手を出したものは、剣土国では、もれなくみんな不気味がられる。
お化け娘と呼ばれることだろう。
いくら涙が通ろうとピンクの顔の紋様は、消えない。流れない。
キラメアは、それから、しばらくして、覚悟を決め、また、ひとよらずの森に入って宝石を取りに来た。
そうしたら、あの川の中に、またレレラがいた。
また、キラメアが来ると踏んで、待ち伏せていたらしい。
目の下に紋様のある、キラメアは、その隣を堂々と、透明化を使ったまま、通りすぎた。
奴は気づかなかった。
キラメアは、舌をだして、あっかんべーをして、さらに奥に進んだ。そして、楓の木々を越えて洞窟に入り、オモ宝石を取り、外に出た。
涙が止まらない。アタシはこんな宝石のために、誰かに歩みよってもらう選択肢を捨てたのねと、声をださず、その場に座り込み、泣いた。
しばらく泣き続けた。
そうしたら。声が聞こえた。
「やあ、来たのかい? キラメアちゃん」
本を読んで木に寄りかかる第三王女に瓜二つの白髪の女性がそこにいた。
王女モドキは、こちらの方を見て、こう言った。
「私の手下にならないかい?君の味噌汁が食べたいんだ。味噌汁を作ってくれるなら、森の中の屋敷に招待するし、オモ宝石を安全に売りさばく手伝いをしよう。最近は、壁に魔法がきっちりかかっていて、ひとよらずの私は近づけない。だから、君に食材を国で調達してもらって味噌汁を作って欲しいんだ。頼むよ」
王女モドキは、頭を下げた。
「はい!王女モドキ様、お願いします。寂しい私をどうか、側に置いてください」
「礼を言う。ありがとうキラメアちゃん」
二人はこうして、出会ったそして、35歳になった今日まで、幸せだ。王女モドキは、彼女を大事にし、温消しのピンクの紋様を見ても、かわいいと言ってくれた。
キラメアは、寂しさで泣くことがなくなった。
主従関係だけど、キラメアにとって王女モドキは、家族だった。
【王女モドキ物語、キラメア編 end】