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奴の口から伸びる手のような触手に握りしめられ、キラメアは、痛みで、わずかに声が漏れる。そして、思わず魔力の扱いをしくじり、透明化が解けてしまった。
小さい声ならば、透明化の効果の一つ防音もあるので聞こえないはずだが、奴の言う通り体温で、気づいているなら、悲鳴をあげて、姿が見えてしまったところで状況は、同じだろう。
それから、人間本当に怖いとき、声が出ないこともある。
今、キラメアは、そんな所だった。
不安、
恐怖、
痛み、
その先に待っていのは、
終わりだと思ったそのとき!その時だ!
青い一筋の線が、目の前を走ったと思ったら、蛇の口から伸びる黒い触手が痛がるように、手を離し、ブンブンと振り払う。
キラメアは、地面に叩きつけられはしたが、無事だ。生きている。
すぐに地面から、ひとよらずの怪物を向き直ると、長い黒髪に、白い羽織、黒いズボンの男が、紫の眼光をこちらに向けている。
こちらも一つ目だが、蛇の奴とは、訳が違う、片目は髪で隠されていて見えないだけのようだ。代わりに目を隠している黒髪の一部が紫で、顔の左右に、紫がそろっている。
「さてさて、レレラ!君の拒絶癖には、そろそろうんざりしている。それに、ここから、私の家が近いんだ。こんなところで暴れられたら、家に被害が出る、下がるんだ」
紫目の男は、こちらから奴に、鋭い眼光を向けて、右手を前に出した。
その手には、青い刀が握られていた。刃は、青く、鍔は、黒い、そして、柄は、水色と黒、全体的に青い刀だ。
ただ、青い刀で片付けられる、そこまでは、だが、その柄から先に、ひとよらずの怪物に見られる赤い二本の尻尾が生えていた。
「王女モドキぃ!お前に、したがうつもりはない!」
また、太い声が響く。奴は、強くこちらを威圧する。
それを合図に、
ひとよらずの怪物と、男は、人間離れした動きをして、戦う。
男は、馬より速く走り、猫よりも高く跳び、木を蹴り、岩を蹴りその刀を何回も怪物に叩きつけた。
よくよく見れば、男の彼も二本の赤い尻尾を生やしていた。赤い上着を腰に巻いているだけに見えたが、その布とは別に、きっちり二本の尻尾があった。
2体の怪物が、戦っている間にキラメアは、無駄だと思いながらも、ないよりは、増しと、再度、透明化の魔法を自分にかけて逃げた。
なんとか、剣土国の外壁までたどり着いて、剣団に助けてもらうんだ。
キラメアは、泣きながら走った。