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表紙
キラメアという娘がいた。
灰色の髪をツインテールにしていて、肌は青白く、目はピンク。
年齢は、30歳、家族は、早くに亡くして、1人。
毎日を、寂しく感じている。
「あたしは、孤独はいや」
静かなレンガ作りの家で、1人、両親を思いだしては、泣いていた。
友人はおらず、人と話すのは得意ではない。
そんなキラメアは、桜が舞う春、外に出た。周りを見渡すと、自分の家と同じく赤いレンガの家々が並ぶ町と木のベンチの横に桜が咲いているのが見える。
「たくさん、人が歩いてる」
ボソリとつぶやく。
たくさんの人が、桜を見て、お昼を楽しんでいて、少しうらやましかった。
笑い合う、集団、美味しそうに広げた弁当。
なんて幸せそうなのだろう……
キラメアは、桜や人から目を背けて、ピンク色の木の棒を取り出し、強く念じる。
透明化。
キラメアは、魔法で、姿を消した。寂しがりでありながら、人と接するのが苦手な彼女は、極力、人に接しなくていいように、得意な姿を消す魔法を使う。
キラメアは、静かに町を散歩して回った。
どこもかしこも、人だらけ、芝生と砂場のある公園では、火の魔法で、バーベキューをしていたり、氷の魔法で冷えたお酒を飲んでいるご年配の方を見たりした。
キラメアの住む国、剣土国には、魔法使いがたくさんいて、桜が舞う季節は、いつもこんな感じだ。
キラメアは、うらやましそうに、人をみながら、国の外れの森に向け歩いた。
国境とも言える巨大な壁に、近づき、足に魔力を込めてジャンプする、灰色の服が風になびく。
大人二人分くらいの高さの壁は、強い魔法がひとよらずの怪物の被害が本格化してから、数年の時間使い、強い魔法の力を持たせることに成功しており、森から来るとある怪物の侵入を、壁が防いでいる。
ひとよらずの怪物という、赤い2本の尻尾の生えた怪物達だ。
奴らが壁に近づくと、強い風が壁から放たれ。吹き飛ばされる。それから、警報がなり、剣団という、剣士がかけつけ、風で足止めされている怪物と戦う。
そんな仕組みになっている。
キラメアは、そんな壁を飛び越え、国の外の、ひとよらずの森へ、入る。
暗く不気味な森の中に。