文学少女、恋の始まり
いつも通りの朝。私は学校では、『文学少女』と呼ばれている。
ただ、本ばかり読んでいて、国語の成績が良いだけなのに。
「ねぇ、緋菜野さんだよね」
突然、君に声をかけられて、私は顔を本から上げた。
「何」
「国語の成績が良いんだよね。いきなりで悪いんだけどさ」
勉強、教えてくれない?
初めてだった。誰かに頼られるのは。私は『文学少女』と呼ばれていただけで、こうして話しかけられるのは、1人としていなかったからだ。
「私でよければ、教えてあげるよ」
そう言うと、君はよっしゃーとガッツポーズをする。
その姿がかっこよくて、思わず見惚れてしまうほどだった。
彼の名前は昴くん。スポーツマンで、運動神経がとてもじゃないけど良い。みんなから人気なのだ。
私と大違い。
「あ、緋菜野‼︎」
あれから、昴くんは、私の事を呼び捨てするようになった。ただ、それだけで、胸が熱くなるのは、また秘密。
「昴くん。どうしたの?」
「頼む‼︎今日の漢文よく分かんなくて、教えてくれない?」
手を合わせてお願いする。昴くん。流石に私はそこまで非道な子ではない。
「いいよ。じゃあ、今日の放課後、図書室集合ね」
「ああ!」
満面な笑みで言う彼。ほんと。なんか、犬みたい。
放課後。図書室に向かうと、君がいた。
「緋菜野!待ってたぜ!」
もう、昴くんは準備が整っていたらしい。
「早いね。昴くんは」
「だってさ。緋菜野の教え方上手いし、それに、緋菜野と一緒にいるのは、楽しいし、安心するんだ」
その言葉は私の胸にストンと収まった。
へへっと君は照れ臭そうに笑う。
顔の火照りが治らない。
神様
この気持ちは一体なんですか?