33、舞踏会の誘い
タケル君の身の上話を聞いてからと言うもの、タケル君はやたらと私に話しかけてくるようになりました。
それに、まわりの女子生徒達が私を睨んだり、足を引っかけて転倒させようとしても、それをタケル君が阻止してくれるのでした。
私はタケル君の豹変ぶりに少し戸惑っていました。
‥‥タケル君、私が女子生徒達に嫌がらせを受けている事に、責任を感じてくれてるのかしら?そうだとしても‥少し距離が近すぎる気がするんだけど‥‥。
タケル君が私と話す時、以前なら少し離れて距離を保っていてくれたのに、最近は手を伸ばせば当たりそうな程近づいて来るのです。
ですが、タケル君との距離感に違和感を感じていたのはどうやら私だけでした。マキシム君も何も言わないし、ヒルトンさんに聞いてみても、そんなに気にする事はないと言うのです。
「‥まあ、タケル君はマキシム君とも、よくくっついて話してるし、これがタケル君にとっての友達との適正な距離なのかもしれないわ。」
私は自分をそう納得させて、タケル君との距離感について悩む事をもうやめました。‥‥ですが、もう一つの悩みに関しては、そう簡単には解決する事ができませんでした。
それも、タケル君に関係した悩みだったのですが‥‥。
「はぁ。どうしよう‥。」
「‥レミー?」
「マキシム君‥この国でもうじき舞踏会が開かれる事を知ってますか?」
「知ってるよ。それがどうしたの?」
「‥タケル君が参加するそうなんです。それで、パートナーがいないから私を誘いたいって‥‥。」
「タケルに舞踏会のパートナーに誘われて困ってるの?どうして?」
「‥外国からも沢山の方々が招待されて来るんですよ。‥ハインリヒ様やダイアン王子が来たら‥嫌だなぁって‥。」
「‥ああ、そうだったな。‥あの色ボケ‥‥失礼。あの女誑しのハインリヒは末端の王子だから、舞踏会の招待は受けていないだろうけど、ダイアン王子かぁ‥。絶対に来るだろうな。」
「‥はぁ、憂鬱。」
「‥レミーはまさか‥ダイアン王子に未練があるの?ダイアン王子がアイシラ王女と仲良くしてる姿を見たくないから悩んでるとか‥‥まさか‥そんな事はないよね?」
「ないない!絶対ない!あんなフラフラした王子、万が一言い寄られてもこっちから願い下げよ。冗談じゃないわ。」
「‥なら、舞踏会に出てみても平気なんじゃないかい?」
「‥うーん、そうなんだけどね。」
「‥タケルと行きたくないのかい?」
「‥タケル君が嫌な訳じゃないの。‥ただ‥。」
「‥ただ‥何だい?」
ただ、どうせ舞踏会へ行くならマキシム君と行ってみたいのです。‥‥なんて、言いませんけどね。
‥‥私は、マキシム君の顔をじっと見つめました。タケル君と舞踏会に参加する私の事を、マキシム君がどう思っているのかを探る為でした。‥‥ですが、マキシム君の顔はいつも通りシレッとした顔をしていました。
「‥あーもう、いいや。よし、行きます。私がパートナーを断ったら、タケル君が困るだけだし、ダイアン王子なんかもう何とも思わないし。」
「‥‥。」
私は舞踏会へ行くと覚悟を決めて、何となくスッキリした気持ちになりました。
でも、そんな私とは対照的に、マキシム君は何となく不安そうな顔をしていました。
私は後で知る事になるのですが‥‥マキシム君は、実は私以上にダイアン王子の事を警戒していたようなのです。
フラン大国のアイシラ王女と結婚して、間もなくダイアン王子が戴冠式を迎えるというのに、フラン国内ではダイアン王子の王室入りを反対する声が民衆から上がっていたのです。
ダイアン王子はアイシラ王女という愛する女性がいるにも関わらず、アイシラ王女や自分の侍女にまで手を出していたようなのです。
それに怒ったアイシラ王女も、愛人を作って今ではそちらに入れ込んでいるとの噂でした。
この愛憎劇の裏には、またもハインリヒが関わっていました。
どうやら侍女に手を出したのも、ハインリヒがダイアン王子のもとに遊びに来た時に、王子を酔わせて唆したようなのです。
「‥‥はぁ、何もないといいが。‥舞踏会当日は、僕もなんとか会場にいてレミーを守ってやれるといいんだが‥‥。」
ヒノキ国の舞踏会に、何だか不穏な空気が迫っているのを、この時マキシムは感じていたのでした。




