28、変わっていくマキシム君‥
海難事故による旭商会の負債の件が、無事に解決できた日から、フジコさんは自宅から学校へ通うようになりました。
私達の学校は、家族と離れて寮生活を過ごす中で、礼儀や自立心を養成する全寮制の寄宿学校になっていたはずなのですが‥‥。
何故かフジコさんは、それを頑なに拒むようになりました。‥どうも他の寮生との人間関係があまりうまくいっていないようです。
それにフジコさんは自分がいる自宅に、マキシム君の事を頻繁に招いているようなのです。
「マキシム君、最近図書室に来ないけど‥勉強は大丈夫なの?」
「‥ああ、問題ないよ。それに最近は旭商会の会長のもとで商売の勉強もしているんだ。」
今朝も少し遅めにクラスにやって来たマキシム君は、私の質問にあくびをしながら答えました。
「‥その会長って、フジコさんのお父様でしょう?もう事故の負債の件も解決した事だし、もう付き合う必要はないのではないですか?」
「‥‥僕が会長の話を聞きたかったんだ。外国との貿易の話が結構面白かったものだから‥‥。」
「‥‥そうですか。」
「‥レミー、心配かけてごめんね。今日で最後にするから‥。」
「‥‥マキシム君、何か困ってる事があるなら、言って下さいよ。‥私の気のせいかもしれませんが‥マキシム君がとても辛そうに見えるんです‥。」
「‥ありがとう、レミー。」
そう言って私に微笑んでくれたマキシム君ですが、授業中に何度も溜め息をついていたのを、私は横目で見ていました。
授業後、フジコさんが私達の特別クラスへ現れました。
「マキシム君、一緒に帰りましょう。」
フジコさんはそう言って、当たり前のようにマキシム君と腕を組み、マキシム君に体を寄せてきました。
私は思わずイラッときて、フジコさんを睨んでしまいました。
フジコさんはそんな私を見て、不敵な笑みを浮かべました。
私とフジコさんが火花を散らす中、マキシム君は虚な目をしてぼーっと立っていました。
私はこの時ようやくマキシム君の異常さに気付きました。‥‥マキシム君が何となく生気がないように感じたのです。
‥そんなおかしい様子のマキシム君を、フジコさんは強引に引っ張って連れて行きました。
私はこの時、意地でもマキシム君がフジコさんに連れて行かれるのを止めるべきだったのかもしれません。
‥マキシム君がまさか、フジコさんのせいで大変な目にあっているとは、この時の私はまだ知る由もありませんでした。




