23、勉強会の後
タケルはレミーとの勉強会が終わり、寮の部屋に戻ってきました。
「マキシム、レミーさんに勉強を教えてきたよ。ついでに明日から何日分かの予習もしておいたから。」
「タケル、ありがとう。‥‥レミーさん、どうだった?」
「‥どうだったとは?」
タケルは、その端正な顔でニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべました。
「‥いや、勉強‥難しいから苦労してたかな‥なんて思って。」
「レミーさんなら、大丈夫だ。理解力もあるし、それに好奇心旺盛だしヤル気もある。彼女は僕の教える内容を貪欲に学んでいったよ。‥マキシムの時と同じで、僕としては大変教えがいがあったよ。」
「‥そうか。なら心配はいらないな。」
マキシムはそう言うと、中指で伊達眼鏡を少し上に上げて、タケルから目をそらしてしまいました。
「‥‥マキシム、他に何か聞きたい事があるんだろう?」
「‥‥いや、別に。」
‥その後もマキシムはタケルと目を合わせる事なく、読んでいた本に集中しました。
「‥マキシム、さっきからその本のページめくってないけど?」
「‥じっくり味わって読んでいるんだよ。」
「‥‥マキシムは頑固だなぁ、レミーさんと僕がどれだけ仲良くなったのか気になってるんだろう?」
タケルにそう言われて、マキシムは少し怪訝そうな顔をしたものの、またすぐに本に集中してしまいました。
タケルは、そんなマキシムの様子を見るに見かねて自分から話しだしました。
「‥‥レミーさんは本当に可愛いよね。二人っきりでずっと一緒にいたからドキドキしすぎて、心臓の音がレミーさんに聞こえてしまうんじゃないかと思って焦ったよ。
あのふわふわの金髪に水色の目、柔らかそうな白い肌‥‥まるで教会の壁画の中の天使様のようだったよ。
‥僕はやっぱりレミーさんが好きだよ。見た目だけじゃない。今日一緒にいて、彼女の好奇心旺盛なところや、勉強熱心なところ、あと意外と抜けてるところも大好きになったよ。」
「‥‥そうか。」
「‥おかしいかい?知り合ってまだ間もないのに、こんなに好きになるなんて‥。」
「‥いや、タケルとレミーさんならお似合いだと思うよ。
‥‥タケルがレミーさんを見て、「綺麗だ」と言ったのを聞いた時から‥‥いつか二人が特別な関係になるだろう事は、すでに予測していたよ。」
「‥振られたよ。」
「‥‥。」
「彼女、他に好きな人がいるみたいだ。」
「‥レミーさん、他に好きな人がいたのか!?」
「‥ああ。でも彼女には口止めされてるからね、誰かは言わないよ。」
「この学校の男子生徒かい?」
「ああ、いい男だよ。」
「‥‥そうか。」
マキシムは、明らかに不機嫌そうな表情を見せました。
「なぁ、マキシム。レミーさんの好きな男が君だとは‥思わないのかい?」
「‥ないよ。だって僕は背も低いし、人嫌いだし、陰気だし‥。レミーさんが僕を好きになる事は絶対にないよ。‥‥それにレミーさんには、タケルみたいに良い男と結ばれて幸せになって欲しいと思っているんだ。」
「レミーさんは、そんな事を本当に望んでいるのかな?
それに‥‥僕の勘違いでなければ、君もレミーさんの事を好きなんだと思っているんだが‥‥実際どうなんだい?」
「僕はレミーさんを好きだよ。だから、最高に良い人を見つけて幸せになって欲しいと思っている。」
マキシムはそう言って、タケルに真っ直ぐに向き合いました。‥その目に迷いはありませんでした。‥どうやら本当にこの言葉は、マキシムの本心のようです。
「‥‥なんて事だ。君たちは‥‥なんでこうもすれ違うんだい。お互いにこんなにも思いあっているというのに‥‥。
僕は君たちを見てると、何だかとてももどかしい気持ちになるよ‥‥。」
タケルのそんな独り言は、マキシムの耳には届いていませんでした。
マキシムは、タケルに本心を打ち明けてスッキリしたのか、今は本当に勉強に集中していました。
「‥マキシム、お前は良い男だよ。もっと自分に自信を持てばいいのに‥。」
タケルは、マキシムの背後でそう呟きました。
その時、微かにマキシムの顔が微笑んだようにも見えました。




