21、初めての授業
私達は、朝食を食べ終わると急いで校舎へと向かいました。ヒルトンさんに手をひかれて早歩きで向かうと、道行く人達が私達を振り返って見ていきました。
私達が金髪なのが珍しいのかしら?
道行く人達や、同じ学校の生徒達は黒髪の人が多いようですから。
学校の建物の中は、沢山の「クラス」というものがありました。
私は、昨日貰った案内表に記された「特別クラス」へヒルトンさんと共に入りました。
この「特別クラス」は、ヒノキ国人ではない外国籍の人や、結婚や就職が決まっていてすぐに卒業する人達が集められていました。
勿論マキシム様も外国人なので、この特別クラスにいます。
マキシム様は、すでにクラスの後方の席に姿勢良く座っていました。
「‥マキシム様、おはようございます。」
「‥‥レミーさん、おはよう。‥そちらの女性は?」
「同室のヒルトンさんです。」
「おはよう、えっと‥マキシム様?だっけ。宜しくね。」
「よろしく。‥マキシムで良いですよ。」
「へぇ~。‥‥ねえねえ、マキシム君ってお坊ちゃんなの?二人ってお坊ちゃんと召使いの駆け落ちとか?」
ヒルトンさんは、マキシム様をお坊ちゃんと思ったようですね。‥‥何故か私の事はヒルトンさんには召使いに見えたようですが‥‥。
オホン、
「‥レミーさん、僕の事はこれからはマキシムと呼んでくれ。‥どうもここでは、「様」付けで名前を呼ぶのは、不自然な事のようだから。」
「‥‥分かりました。なら、マキシム‥も私の事をレミーと呼び捨てで呼んで下さいね。」
「分かったよ、レミー。」
私がこの一連のやり取りに照れてしまい、顔を赤くさせてモジモジしていると、ヒルトンさんが私の顔を覗きこんできました。
そして私の耳元で小声で囁きました。
「‥レミー、あんたマキシム君の事が好きなんでしょ。それでこの学校まで追いかけて来ちゃったんだね。‥私、応援しちゃう!」
「‥!」
私が驚いた顔をすると、ヒルトンさんはウインクをして違う席の方へ去って行きました。
私がマキシム様‥じゃなくてマキシム‥君を好きだという事は、そんなに態度でバレバレだったでしょうか。‥‥だとしたら、気を付けなきゃ。マキシム君にだけはこの事を悟られないようにしなきゃいけないわ。
「‥レミー?座らないのかい。授業が始まるよ。」
「‥あっ、ごめんなさい。‥マキシム‥君。」
そう言うと私は、マキシム君の隣の席にちゃっかりと座りこみました。
「‥やっぱりレミーは、僕の事を呼び捨てには出来ないか。‥まあ、いいや。‥マキシム君かぁ、悪くないね。良いね。」
マキシム君は、何かブツブツと独り言を言っています。
「‥マキシム君、私何か変だった?」
「全然変じゃないよ。レミー、これから楽しくなりそうだね。」
「ええ、本当に楽しみ。」
‥‥本当に楽しみにしていた初授業でしたが、‥この学校の授業の事を正直甘く見ていました。授業が全く分からないのです。私が後から編入してきたせいもありますが、授業の内容がちっとも頭に入りませんでした。
‥‥どうしよう。私、ここへ勉強をしにきたのに、勉強が頭に入らない‥。先生が何を言ってるのかさっぱり分からない‥。
「レミー、大丈夫かい?」
「‥‥きゃっ!」
私が呆然としていると、マキシム君が心配そうに肩を叩いてきました。私は驚いて、小さな悲鳴をあげてしまいました。
「勉強が難しいんだよね?‥分かるよ。僕も同室のタケルに、昨日勉強を教えてもらわなかったら分からなかったと思う‥。」
「マキシム君、昨日勉強してたんですか。」
「ああ、予習を中心にね。タケルも熱心に教えてくれるものだから、おかげで授業の内容はまあまあ理解できたよ。」
「‥そうですか。」
「あっ、なんなら今日放課後にタケルと図書室で勉強をするから、レミーも来ると良いよ。ほら、ヒルトンさんも誘って。」
私はヒルトンさんの席の方に目をやりました。ヒルトンさんと目が合いましたが‥この話が聞こえていてのでしょうか‥?何故か両手でバツのジェスチャーをして、必死に首を振っています。
私がヒルトンさんの席に向かおうとすると、逃げるように廊下へ出て行ってしまいました。
「‥マキシム君、ヒルトンさんは忙しいみたいですね。もうクラスを出て行ってしまいました。」
私がそう言うと、マキシム君は、クスクス笑っていました。
「ヒルトンさんは自分に正直な人のようだね。きっと、放課後まで勉強をしたくはないんだよ。」
「‥私だけでも、図書室に行っても良いですか。」
「ああ、勿論だよ。ちょうどタケルの事をレミーに紹介したかったし。」
「‥私に紹介ですか?」
「‥あっ、深い意味じゃないんだ。彼は本当に賢いし、レミーが明日から授業に困らないように勉強を分かりやすく教えてくれるだろうから。」
「‥そうなんですね。」
「‥それに、タケルがレミーの姿を昨日どこかで見てたらしいんだ。それで‥タケルもレミーに会ってみたいらしい。どうかな?」
「‥‥‥分かりました。宜しくお願いします。」
私はちょうど誰かに勉強を教わりたいと思っていたところなので、マキシム君の申し出は正直とてもありがたかったです。
‥‥ですがこの時、私はマキシム君に何となくタケル君を押し付けられてるような‥‥そんな気もしてしまっていたのです。




