19、ヒノキ国へ
ヒノキ国へと向かう馬車の中で、マキシム様はヒノキ国の事を色々と教えてくれました。
ヒノキ国はとても礼儀正しい国で、王様も国民に寄り添う素晴らしい国なのだそうです。
農業や林業、水産業、工芸品など様々な産業が発達しており、国の財政も大変潤っているようです。
また、貴族や平民といった身分がまだ残ってはいるものの、平民は無償で教育を受けられるし、医療費も子供が15歳になるまでは無償の為比較的豊かな生活をしているのだそうです。
その為、平民の貴族に対する憧れや反発といった関心は少ないようで、それよりも商人に対する憧れが強いとの事です。
そんなヒノキ国の国民性としては、表面上は穏やかで礼儀正しいが、内面に関しては義理と人情に厚い反面、お金や損得勘定に少しシビアな面もあるようです。
「僕はね、実は前々からこのヒノキ国に興味があったんだ。この国でしっかりと基礎の勉強を習得し、その後はこの国の中央政府で働きたいと思っているんだ。
レミーさんも働きたくなったら、学校を卒業した後は就業相談所へ行けば良いよ。この国では、女の人でも就業できるんだ。‥まだ少数だけどね。
近頃は働いている女性を職業婦人と言っていてね、女性達の憧れの的にもなっているんだよ。」
「へぇ~。マキシム様、詳しいですね。」
「そりゃあね。だって僕はこのヒノキ国で就業して、結婚して国籍をとり、生涯ここで暮らすつもりで来てるからね。しっかりと下調べもするよ。」
「ヒノキ国の国籍って、どうやってとるんですか?」
「ヒノキ国の人と結婚するか、養子に入るか、国へ申請して国籍を取得するか、だね。」
「‥‥マキシム様は、どうやって国籍を取るつもりなのですか?」
「‥できればこの国の女性と結婚して取得したいと思っている。」
「‥!」
「この国の女性の奥ゆかしさや内面の逞しさには、以前から憧れを抱いていたんだ。」
「‥‥‥そうなんですね。」
私は胸がチクリと痛みました。
マキシム様がこの国へ来たのは、もしかして私の事を追いかけて来てくれたのでは‥?なんて実は少しだけ自惚れていたのです。
マキシム様があまりにも私に親切にしてくれたので‥‥。
マキシム様が、この国の女性と結婚をしたいと思っているのなら‥私は以前のようにマキシム様に会いに、足繁く図書室に通うような事は控えた方が良いのでしょうね‥‥。
「レミーさん?何か心配な事でもありましたか?」
「‥あっ、ううん。何でもないです。‥私もヒノキ国で頑張らなきゃな‥‥なんて考えていました。」
「‥まあ、何かまた心配事ができたら、僕に会いにくると良いよ。どうせ僕は学校が始まっても、授業以外はほとんど図書室にいるから。」
「‥‥はい。ありがとうございます。」
私は胸が先程よりも強く痛むのを感じました。
ズキンズキンと痛むのです。
‥‥マキシム様、本当にまた以前のように頻繁に会いに行っても良いのですか?
あなたは私を避けたりしませんか?嫌な顔を見せませんか?
‥‥邪魔者扱いしませんか?
マキシム様がこんなに近くにいるのに、何故遠く感じてしまうのでしょう‥。
私は不安な気持ちを抱えたまま、とうとうヒノキ国へ入国してしまいました。




