11、図書室でマキシム様と
私は今日も王宮で王妃教育を受けていました。
もし私がダイアン王子の婚約者から外されたら、王妃教育もこれからは受けられなくなるのかなぁ、なんて考えていたら、今日はいつもの倍も頑張れて、先生に褒められてしまいました。
一緒に王妃教育を受けていたルビーさんは、正式にミカエル王子と婚約し、私とは別メニューの教育も受けているようです。
私はあのお祝いの会があった日から、ダイアン王子と特に会う事もなく、こうして毎日勉強の日々を過ごしていました。
勉強が終わると、私はいつものように、図書室へと向かいました。図書室へは勉強の本も勿論借りに来ますが、実は恋愛小説が一番の目的でした。
ただこの恋愛小説は、装丁が他の本のような地味な色ではなく、ピンクや赤の派手な色だった為、借りるのには少し勇気がいるのです。
そこで私が考えた手が、勉強用の本や趣味の本の間に恋愛小説を挟んで持ち歩くという方法です。
これなら、図書室内で恋愛小説を堂々と持ち歩く事ができるのです。
だから、私は今も「世界のお城名鑑」と「刺繍デザイン画集」の間に、密かに『俺様騎士と腹黒王女の薔薇色の恋』を挟ませて図書室内を堂々と歩いていました。なのに‥‥。
ドンッ。バサバサ、バサ。
「あっ、すみません。ぶつかってしまって‥‥。本が落ちてしまいましたね。今拾いま‥‥プッ、フフフ。」
「‥‥。」
時々マキシム様がこうして私にわざとぶつかってきて、私の本が落ちるように仕向けてくるのでした。
「‥レミーさん、どうぞ。」
「‥どうも。」
それに、マキシム様は私が図書室の窓際のベンチに腰掛けると、わざと私について来て、私が恋愛小説を読めないように邪魔をしてくるのです。
「レミーさん、読まないのですか。ずっと本の表紙だけ見てるのですか?」
「‥大切な本なので、借りていって部屋で読む事にします。」
「‥僕が邪魔なんですね。」
「‥‥。」
まさか正直に『はい、邪魔です。』なんて言える訳もなく、とりあえず黙っていました。
「‥へぇ~、そういう態度をとる事も出来るんだ。」
「?」
「レミーさんは本当に面白いね。感情豊かだし、明るいし、変わってるし、たまにおかしな行動もとるし、見てて全く飽きないよ。」
「‥褒められてる気がしないです。」
「いやいや、僕なりの褒め方だよ。レミーさんは本当に僕の理想の女性だからね。君がいれば毎日退屈しないで済むだろうし、君の婚約者が羨ましいよ。」
「婚約者‥。」
「うん、婚約者のダイアン王子。」
「私、婚約者候補から外されてるかも知れませんよ。」
「は?何言ってるの。ミカエル王子とルビーさんが正式に婚約した今、必然的に君とダイアン王子が婚約者になってるはずだよ。‥お城の皆んながそう認識してるけど。‥‥そもそも最初からそういう話だったんでしょ?」
「‥そうなんですか?」
「‥全く、もう。恋愛小説ばかり読んでるから、現実を直視出来なくなってしまってるんじゃないか?」
「‥おっしゃる通りだと思います。」
「‥ダイアン王子は何か言ってないのか?」
「ダイアン王子とは、一回だけ少しおしゃべりしましたが、それっきりです。特に何も言われてないです。」
「‥あのヘタレ王子‥。」
「えっ?」
「‥いや、独り言だ。」
「‥私、一回ダイアン王子ときちんと話をしてこようと思います。」
「良いじゃないか。是非そうすべきだ。」
「‥マキシム様、ありがとうございます。」
「‥‥。」
レミーが図書室を退室すると、マキシム様はぽつりと呟きました。
「レミーさん、ダイアン王子とお幸せに。‥‥結局初恋というのは、かなわないものなんだよな。」




