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・・・。


・・・。


んっ。


気がつくと、俺は、小さな小屋のような部屋のベットの上に横たわっていた。


「つぅー、いてて。」


「あっ、よかった。お目覚めになりましたか?」


・・・。


天使だ。そう思った。透き通るような白い肌。サファイヤのような蒼い瞳。整った鼻筋。桜色の唇。


そして赤いリボンでまとめられた金色の髪は、光に反射してキラキラと煌いている。


目の前にいる少女の美貌に、目がチカチカした。


むにゅ。


左手に当たる柔らかい感触。


少女は俺の左手を両手で握りしめ、胸の上に置いていた。


よく見ると頬には、うっすらと涙の跡がある。


「あっ。不埒な!こやつ、お嬢様の身体をさわっておりますぞ!だから言ったのです。このようなどこの馬の骨ともわからぬ輩を助けるべきではない、と。いつ朱妁の刺客が襲って来るやもわからぬこんな時に!」


「ヤトリ。見てごらんなさい。この方の姿を。彼もきっと朱妁に襲われた被害者に違いありません。つまり、私どもが巻き込んでしまったのです。本来守らなければならない民を。つまらぬ王家の身内争いのために。」


確かに、俺の姿は、ぼろぼろのカッターシャツにスラックス。それと麻縄で作ったバック。それだけだった。


黒石煙のナイフは、カード化しているため、凶器になりそうなものも持っていない。


姫とよばれる少女が、難民かなにかと俺のことを勘違いするのも、当然といえば当然であった。


「それは・・・。確かにそうかもしれませぬが。」


「うっ。」


「あっ。ご無理はなさらないでください。」


俺は上半身を起し、少女らに尋ねた。


「・・・。大丈夫です。助けて頂いてありがとうございます。あなた方は?」


「私は、シルファ。アトゥルーゼ・フォン・エイミー・シルファと申します。そして、彼は、執事長のヤトリ。」


「お嬢様、本名を伝えるなど!」


「よいのです、王族たる我々には、彼に謝罪する義務があります。ヤトリあなたも彼にご挨拶を。」


「・・・私はお嬢様の執事、ヤトリ・クルーゼ・アスナガンでございます。」


黒いタキシードを着た、如何にも紳士というような老人が軽く会釈する。


「それで、あなたは?」


「俺は、・・・。三上、三上優です。」


「あの・・・、三上さんは、エルドレイン村の方ですか?」


「・・・。実は、倒れる前の記憶が思い出せないのです。」


嘘をついた。


この状況で真実を言っても、信じてもらえないだろうと思ったからだ。


「・・・。よほど辛い思いをされたのでしょう。私どものせいで・・・。申し訳ありません。」


シルファが涙ぐむ。


そんなことはない、そう言おうとしたその時、


「敵襲!敵襲!ぐわっ。」


外で兵士の声がした。


「お嬢様!裏口からすぐにお逃げを。こちらです。」


「はっ!はい!三上さん!」


シルファは俺の手を取り、裏口から出るヤトリの後に続く。


ギィィィ。ドアを開けた瞬間。


「きゃっ!」


目の前には、殺された兵士たちの亡骸が散乱していた。


そして前方、俺たちを取り囲むように、白い仮面に赤いローブを纏った5人の男たちが立っている。

それぞれの手には日本刀のような刃が煌いていた。


「おのれ、朱妁ら!お嬢様には指一本触れさせぬぞ!」


ヤトリは杖のカバーを外し、中から取り出したレイピアを身構える。そして、


「お嬢様、長くは持ちません。隙を見てお逃げを。」


シルファに小声で伝えた。


「ヤトリ・・・。そんな、できません!」


叫ぶシルファ。



ドクン。



「お嬢様!」


「私にはできません!」


「お嬢様!国家に身を捧げた皆の想いを今ここで無駄にするおつもりですか!!」


「・・・っぅ。」


苦悶に歪むシルファ。


身構える朱妁たち。



ドクン。



一触即発。まさにその時だった。


「双方、やめなさい!」


えっ・・・。


シルファは俺のほうにそっと微笑み、ヤトリの前に出た。



ドクン。



「お嬢様・・?なりませぬ!」


「ヤトリ、よいのです。誰かを見捨てるなど、私にはもうできません。」


シルファがヤトリの肩に手を置き、やさしく声をかける。



ドクン。



「朱妁の者らよ!目的は私の命なのでしょう。ならばこの命、持っていきなさい。ただし、この者らに手を出すことは許しません!」



ドクン。


目の前には少女。


俺の命を助け、微笑みかけてくれた少女。


そして、その少女が、また、俺の命を救おうと、今度は自らの命を捧げようとしている。



「・・・。」


朱妁の奴らは無言でシルファの方へ剣を突き出した。



ドクン。


少女の頬を涙がつたうのが見える。


壊れそうな、笑顔。



ドクン。



「お嬢様!」


シルファを庇おうと前に出るヤトリ、


そしてヤトリを庇うシルファ。



ドクン。


・・・。ない!


「こんなこと、あっていいわけがないだろうがぁぁぁ!」



《加速》!《黒煙石のナイフ》!


俺は《加速》を発動。超速でシルファの前に立つと、手にした《黒煙石のナイフ》で朱妁の刀を弾いた。


「ギぃ?」


何が起こったかわからない、といった朱妁の声。


「はじめてしゃべったなぁ、お前。」


《火焔》!


驚いた朱妁の腹に《火焔》を打ち込む。


出現した6つの火の玉、そのすべてを受けた朱妁は、数10メートル先へ吹っ飛び、動かなくなった。



「三上・・・さん?」


「お主!?」


信じられない。という顔で、俺をみるシルファとヤトリ。


「大丈夫、ですから。」


俺は、安心してもらえるよう、笑顔をつくり、2人へ声をかけた。



「ギィぁ!」「ギぃ!」「ギぃ!」「ギィィ!!!」


危険な相手と判断したのだろう。


残り4人の朱妁はこちらへ向かって同時に切りかかってきた。素早く、そして無駄の無い、連携のとれた動き。


《火焔》!


俺はすかさず《火焔》を発動。6つの火の玉が朱妁の方へ突撃する。


ガキン!


しかし、その技は見切ったとばかりにすべて弾かれてしまった。


《火焔》《火焔》!


連続の《火焔》。しかし、


ガキン!


「ちっ!」


これらも、刀で弾かれ、あさっての方向へ飛んでいく。


「ギィィ!!!」


一気に距離を詰められ、朱妁はあと数歩というところまで迫っていた。



くっ!


どうする?


この程度の刃。俺一人ならば、《加速》を使い避けるのは簡単だ。


しかし、後ろにはシルファとヤトリがいる。


どうする?どうすれば?



《黒煙石のナイフ》《火焔》《剣技》!


「あぁぁぁっ!火焔剣!」


炎を纏ったナイフを横一閃に振った。


直後、周囲に炎が爆散。


こちらに向かって来ていた朱妁たちはすべて炎に包まれ、


「♯~&’Y)O-U#!!!!」


踊り狂いながら倒れた。



ピコン。


「朱妁5体を討伐しました。ホルダーの効果が起動します。」


ピコン。


「《経験値A》のカードを取得しました。《経験値A》は消費カードのため、自動消費されます。」


ピコン。


「《経験値A》の効果により使用者のステイタスがアップしました。HP+5、MP+1、物理攻撃力+3、物理防御力+3、魔法攻撃力+0、魔法防御力+0、すばやさ+2。《経験値A》は消滅しました。」



「はっ、はっ、はっ。」


目の前には、4人の焼け焦げた死体。



「おっ俺、ひっ、人を・・・。うあぁぁぁぁっ!」


「三上さん!」


崩れそうな俺の身体をシルファが抱き止める。


「三上殿。こやつ等は、かつて英雄だった者の屍に仮初めの魂を与えられた人形に過ぎませぬ。気休めに過ぎぬかもしれませぬが、どうかご安心を。」


「はーつぅ。はーっー。はー。・・・。」


・・・。


「気を失われたようです。ヤトリ、今はそっとしてあげましょう。」


「はい、お嬢様。しかし、一体で大国の一軍に匹敵するほどの戦力を持つ朱妁を5体も・・・。それもたった一人で。一体何者なのでしょうな、この者は・・・。」



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毎朝8時に1話投稿します( *´艸`)!

高評価、ブックマークいただけますと筆者のモチベーションが上がります<(_ _)>

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