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期待と不安

朝だ。


制服に着替え、いつも通りの食卓に座った。

すると目玉焼きを焼いている母親の後ろ姿を見た瞬間、昨日の夢に出てきたON/OFFスイッチが稲妻が走るように連想された。とてもリアルに。


今、スイッチはONになっている。


何でこんなものイメージしてるんだろうと思いながら食事を終えて家を出た。




道を歩きながら、俺は奇妙なことに気付いた。


通りすがる人、駅にいる人、見かける人すべてを見るとあのスイッチが連想されたのだ。


そしてそのスイッチは俺の近くにいる人はONで、俺から遠い人、だいたい10mより離れている人のスイッチはOFFになっている。


俺と近づいたり離れたりするにつれてONになったりOFFになったりしている。


このスイッチは何だ?ONとOFFで何か違うのか?寝ぼけているのだろうか?




学校に到着しても、依然としてスイッチは全ての人間についているようだ。


しかし異変には一刻も早く気付いた。

夢野さんのスイッチがOFFになっている。

そして夢野さんは後ろからこちらを睨んでいる。


そうだった。スイッチで夢中になってたけど、俺は人間関係の亀裂を味わいたいんだった。


待て待て。でもスイッチはOFFだ。なぜだ?

俺から3mしか離れていないはずなのに。夢野さんより遠くの人でもONなのに。


このスイッチが人間関係の鍵なのか?

夢野さんのをOFFにしたのは俺か?

このスイッチ、俺が手動で切り替えられたりしないか?




俺はイメージの中で、隣の生徒のスイッチをOFFにした。


その途端、隣の人の表情から笑みがなくなった。スイッチをOFFにしたら、笑顔が消えた!


これは何だ?偶然か?


もう一度その人のスイッチをONにしたら、笑顔に戻った。


「やっぱりだ!!」


俺はその場で叫んでしまった。

無理もない。俺の周りの全人間にスイッチが付いていて、俺がそれを切り替えるというイメージをすることで、その人は笑顔かそれ以外かに隔てられる。


俺は今まで笑顔の人ばっかり見てきた。それはこーゆー事だったんだ。


いつも楽しい担任の先生のスイッチをイメージでOFFにした瞬間、中間テストのクラス平均の低さを嘆き始めたことで確信が持てた。


『俺は周りの人間の幸不幸を決定することができる』


とりあえず夢野さんの目線が怖かったからONにしておいた。




放課後、部活が終わると夢野さんが待っていた。


「天国くん。あなた、超能力者なんじゃないの?」


一瞬ぎょっとしたが、別にこんな事信じる人なんて少ないだろうと思って答えた。


「そうだよ。俺は超能力者だ。俺の周りの人間を笑顔にする超能力者。文字通りハッピーヒューマンだ。」


「そうだろうなとは思ってた…昨日の事…。」


ドロドロした感じだ。俺は期待した。


「私は天国くんのことなんてクソほどどうでもいい男だった思ってるのに、昨日スカートをめくられても怒りの感情は湧いてこなかった。その上、今日突然叫んでたでしょ…?

あれは私を初めとした研究結果として、自分は意識的に周りの人間を笑顔にすることができるって結論を出したんじゃない?」


この女、勘が鋭すぎる。


「その通りだ。少し離れたところで話そう。」


周りに人がいない公園のベンチに移動してゆっくりこの研究結果を共有した。


この時、ドロドロした人間関係味わいたいなんて事はどうでもよくなっていた。


他人なんてどうでもいい。自分に超能力があるのだから。




「そういうわけで、俺はどうやら周りの人間を幸せにできる超能力があるらしい。夢野さんのスイッチは今OFFにした。」


「やっぱりね…天国くん見てたらイライラしてきたわ…。今すぐにでも警察呼びたいけれど、正直に話してくれた事に免じて許してあげる。」


夢野さんの表情めっちゃ怖い。これが作り笑いってやつか…


「一つだけ忠告させてね。あなたの人間性をとやかく指摘したいわけじゃないけど…その超能力、あまり使わない方がいい気がするわ。」


何故だ?俺はこの力を使えばこの世界の幅広い不可能が可能になる気がしてたまらない。


「どうしてそう思うんだ?この力を使えば、多くが思い通りだ。スイッチがOFFでも笑ってる人も見かけたし、この能力は人を不幸にする呪いじゃない。人を幸せにする魔法なんだ!」


「その魔法を使えばその人は…笑顔になるけど…本当に幸せなのかしら?」


「当たり前だ!」


当たり前だ。俺には彼女が何を言っているかサッパリ分からない。

この力を研究していけば、いつか地球全土を幸せな星にできるかもしれないのに。





つづく

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