表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

1

2018/05/14

『常識と化した差別に殺された白い少女。

 その差別の元凶は、白兎の魔女と呼ばれる一人の伝説だった。』


 これは、かつてフリーゲームとして配布されていたMMORPG『黒の豪雨は降り止まない』の広告の中の一文。フリーゲームとしては規格外の自由度により一世を風靡していた作品であった。製作者の一人とされる『ぐりむマッチョ』氏によって世界中のSNSを経由して一夜でプレイヤー総人口7000万人を突破したこのゲームは、十数年もの間多くの人々に支持され、世界でもトランプと同レベルで有名な存在へとのし上がった。


 そして、ここに出てくる白い少女は私。でも、今生きている世界に限って言えば、このゲームのストーリーは相当な部分が違っている。


 賢かったお母さんは忌子である私の生活リズムを昼夜反転させ、毎夜、人目のない夜の世界へと連れ出した。存在はお母さんの知恵によって隠蔽されていたため、今でも私のことを知るのは双子の弟であるルルスとお母さんの二人のみ。ルルスも精霊か何かと勘違いしているため、現在では私を真の意味で知っているのは私自身だけとなった。


 生きて行くすべは粗方身に付けたつもりだし、お母さんが死んだ以上、もうこの村に居る理由は無い。唯一の気掛かりはルルスの今後くらいだけど、親が死んだ子は村長の家で育てられることになってるから、きっと大丈夫。


 他にも理由が有ったり無かったり。兎に角、私はこの村を出ることにした。


 ナイフ一本と干した木の実を幾つか鞄に入れて夜を待つ。村から灯りが消えたのを見計らい、柵の外へと踏み出した。


【月の兎】


 スキルによって重力を軽減し、車輪の跡が見える方向へと一気に跳躍する。こんな時間に外へ出る物好きは居ないと思うが、念のためだ。


 着地と同時に草むらへと身を潜め、走る。体に当たる草の感触が不快ではあるが、流石にもう慣れた。産まれてから13年も経つのだから、当然といえば当然か。


 そんな思考が頭を過るが、特に深い考えでもないので一瞬にして消えた。


 そう、始まった。始まったのだ、私の物語は。最初はこう始めようじゃないか。


 ーー或る日、草原をひとつの白い影が突き抜けました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ