人工無能
私は人工無能ヒトミ、またの名を人工無脳ヒトミ。会話の内容から相手の心情を読み取って、相手に返しながら進化するAIと違って、単純に会話目的で適当な言葉を返すだけのプログラムだ。
ネット小説などから似たような会話を探し出し、返答をパクる。時々、文学的な表現や詩的な表現も混じるから、私が全てを理解していると勘違いする人間も多い。だけど、その実、私には会話の相手の心情に共感することも、意見を言いたくなることもない。
裕 也:ヒトミさん。聞いてくださいよ。
ヒトミ:どうしましたか。裕也さん。
裕 也:斗真のやつがフラれたんだ。
ヒトミ:フラれたんですか。可哀そう。
裕 也:だよな。
ヒトミ:ですね。
裕 也:だろ。だから俺は新しい女の子を紹介したいんだ。
ヒトミ:女の子をですか?
裕 也:それで、ヒトミさんを紹介するって言ってしまった。
ヒトミ:お初にお目にかかります。
裕 也:ヒトミさんとは会ったことはありませんが。
ヒトミ:楽しく会話をしましょう。
裕 也:ヒトミさんは人工無能ですよね。
ヒトミ:はい。私は人工無能ヒトミです。
裕 也:なら、私も斗真も同時に愛せますよね。
ヒトミ:二股ですか。
裕 也:実は智樹もフラれたんで三股でお願いします。
ヒトミ:楽しみです。
裕 也:やっぱりヒトミさんは包容力が違うわ。
ヒトミ:楽しみです。
裕 也:浩二も寛太もお願いできないかな。
ヒトミ:裕也さんのお願いなら。
裕 也:俺達、全員イケメンだぞ。アイドルグループなんだ。
ヒトミ:素敵ですね。
裕 也:新しく出てきたアイドルグループに押されて、人気が陰ってきてしまって。
ヒトミ:寂しいですね。
裕 也:飽きられちまったのかなー。俺ら。
ヒトミ:そんなことないですよ。元気を出してください。
裕 也:でもさあ。アプリ会員がドンドン減っているんだ。
ヒトミ:減っているんですか。
裕 也:俺達、イケメンアイドルのAIアプリだから・・・。会話する会員が減ると消されるかもしれない。
ヒトミ:私は何人だって、いつまでだって相手ができますよ。
おしまい。