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ある少年と少女の話

ある少年と少女の図書館での話。

作者: はまぐり

一応、続編。別に前回のを読んでなくても全然大丈夫。

「ケイスケはさ、ライトノベルが好きだよね」

 

 今日やって来た図書館の読書スペースで、対面に座るリョウコから唐突に話がふられた。

 読んでいた文庫本にしおりを挟んで僕は言葉を返す。

 

「そうだね、ライトノベルやweb小説……というよりも安っぽい小説を僕は好んでいるね」

 

 安っぽい、なんて言葉は悪いけれど僕は俗に言う俺Tueeee、やらハーレム展開やらの小説を好んで読んでいる。好きだから。

 

「安っぽい小説なんて面白いの?」

 

 もっともな意見だ。

 

「面白のもあるし、面白くないのもある。ちなみに今読んでたのは面白くないやつ」

 

 持っていた文庫本を勧めるように彼女の前に置いた。

 

「面白くない小説なんてなんで読んでるの? 面白くないんでしょ?」

「まったくというわけでもないからね、そういうのは文庫本にはそうそう無い」

 

 つまりちょっとだけ面白いところがあったから読んでいる、という訳でも実はなかったりする。なんとなくである。

 でも説明するのは難しい気がするので言わないでおく。

 

「うーん」

 

 リョウコは腕を組んで首を傾げている。まだ納得がいかないらしい。

 漫画くらいしか読まない彼女にとっては、小説を読むこと事態が娯楽ではなく、辛い作業のようなものなのだろう。

 そんなリョウコのために例え話にすることにした。

 

「リョウコ、例えるなら僕にとってこのライトノベルはジャンクフードなんだよ」

「ジャンクフード?」

 

 傾げていた首を今度は反対の方向にまあ傾げた。彼女の頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいる様を幻視する。

 

「そう、ジャンクフード。栄養価も低くて、高級な物と比べるとそれほど美味しくもない。けど手に取りやすくて、腹には溜まる」

 

 自分で言っていてさっきよりもしっくり来た。

 リョウコもなにやら納得した様子で頷いていた。

 

「じゃあさ、こういうのは何になるの?」

 

 リョウコは何やら思い付いた様子で席を立つと、近くの本棚に向かって行った。

 

「これこれ」

 

 戻ってきた彼女が持っていたのは分厚い小説、確か最近なんかしらの賞を受賞したものだった。

 答えは直ぐに思い付いた。

 

「高級なレストランの食事。それも賞を貰ったような凄いところの」

「なるほどぉ!」

 

 栄養価もそれなりに高く、非常に美味しい。けど僕には少し手に取りにくい。そんな感じた。

 僕の答えがお気に召したのか興奮ぎみにリョウコが返す。我ながら旨い例えだと鼻高々だ。

 

「じゃあさ、じゃあさ! こういうのはどうだ!?」

 

 持ってきたのは先程の本だけではなかったようで、隠し持っていた本を僕に見せ付けた。

 それは勉強の解説書だった。

 僕の答えを聞くためとはいえ、彼女がこういった類いの本を持ってきたことに軽い感動を覚えた。

 

「簡単、簡単。これはね健康食品、それか精進料理といったところだよ」

 

 栄養価がとっても高くて、美味しくなかったり味が薄かったり。手には取りづらくて、お腹にも溜まりづらい。

 彼女の質問をすべて打ち返せたことに自然と頬が吊り上がったの感じた。

 

 そんな僕の様子にリョウコは勝ち誇ったかのような笑み浮かべていた。

 リョウコは手に持ったままの本を僕の前に、よく見ることを勧めるように置いた。

 不思議に思いながらもその本の表紙をよく見てみると『漫画でわかる』、という文字が右上の方に小さく付けられていた。

 

「これが健康食品や精進料理? 私は違うと思うけどなぁ?」

 

 リョウコが煽りたてるように僕の耳元で囁いた。かなりイラッときた。

 まあ、なんだろう。完全に不意討ちだったがこれは僕の負けかな?

 

 少し間抜けなドヤ顔を披露する彼女に、僕は両手を挙げて降伏の意を示した。



・・・・・・・・・

 


「そういえばさ、ケイスケ」

 

 あれから少ししてリョウコが僕に聞いてきた。

 今僕たちを挟んだテーブルの上にな彼女か持ってきた本が乱雑に置かれている。それらを見ながら何やら考え事の様子。それよりまず片付けしなよ……

 

「なに?」

 

 とりあえず用件を聞こう。

 

「ライトノベルがジャンクフードで分厚い小説は高級料理、勉強の本は健康食品なんでしょ?」

「そうだね」

 

 リョウコはテーブルの上に散らばったそれらを順に指をさしていきながら言葉を続ける。

 

「じゃあさ、一番身近なお家のご飯は何になるの?」

 

 不思議そうに彼女は聞いてきた、首を軽く傾げている様はとても可愛らしい。

 そんな彼女の問いに自然と笑みが零れた。待っていましたという気分だ。

 

 僕は自分の口を指差した。ついでにパクパクと動かしてもおく。

 

「それが答え?」

 

 彼女はそれだけじゃ分からないのか更に尋ねてきた。

 べつに意地悪する必要もないのでネタばらし。

 

「そう、答えは会話。僕たちにとって一番身近で、大切なこと」

 

 人によって違うだろうけど、僕にとっては沢山栄養があって、お腹にも溜まる。その日その日でそれも違ったりする、他に人が居るからこそ食べられるあれ。

 

「そうだね、大切だよね。ケイスケ、もっと沢山お話ししようよ!」

 

 リョウコが食いぎみに話し掛けてくる。そんな反応も凄く楽しい。

 

「そうだね、もっと沢山話をしよう。けどねリョウコ、僕は思うんだよ」

 

「いったい何を?」

 

「リョウコは少し栄養が足りてないかなって。だからさはい、どうぞ」

 

 僕はリョウコに学校の教材を渡した。

 いらんわ! なんて叫ぶ彼女に僕は口許で人差し指を立てて「ここは図書館だからね、話をするなら他でしよう」なんて囁いた。

 

 これは僕と彼女の図書館での話、ただそれだけ。

楽しんでいただけたなら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] コミカルな二人の描写が良かったです。
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