初転生編 2話 何もしてません。(俺は)
久しぶり
このニーベルング首都マナ区管制塔において、例えば何か危険物が落ちてきたり、飛行機が墜落してきたり、そういった事象はこの都市に管制塔が作られて以来一度もなかった。今日までは。
「なんで人が落ちてくるんだ!」
「それ新任の私に聞きますか!?」
「班長!何かレーダーに反応が!」
カイは焦っていた。正直に言えば今の会話も耳を通りぬけていった。アンがなんか言っていたような気がしなくもないのだが、新任の彼女の言葉はともかく報告に来たラスの言葉まで聞こえなかったのはいつもの自分の冷静さはどこへやら、隣国の攻撃ならまだわかる、いやけして来てほしくはないのだが。
「落下予測地点、管制塔頂上!落下速度測定不能!被害予測は管制塔から半径500mです!」
「早く避難司令放送だ!管制塔付近で住宅は少ないが、死人は出したくない!」
「了解しました!」
「落下までは!?」
「あと1分を切りました!」
本当にこの都市が機械工業の発達した都市でよかったと、カイは安堵した。
「管制塔職員にも緊急退避命令だ!早く逃げろ!」
「カイ班長はどうされるのですか!」
「もう残りの人生も長くないしな、15年過ごしたここを俺は全力で守るとするよ。」
「カイさん!」
「命令といっただろう!早く逃げろ!」
「...っ!」
10年来の友であるライが逃げて、これで管制塔には俺一人だ。
残された時間はあまり長くない。
(緊急用バリアー、作動します。統制者以外は総員避難して...
管制塔の主要コンピュータから流れる機械音声も無視してバリアーの出力を調整する。
できることなら落下してくる人間も助けたい。
しかし緊急用バリアーはもともとミサイルなどを防ぐためのものであり、生身の人間に当たればバリアーとの落下の衝撃で墜落死するのはほぼ確定だ。
(しかし、もう無理か)
落下まで残りは15秒を切った。
すまない、名も知らぬ、姿も知らぬ人よ。
私は助けられなかった。
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死ぬじゃん。どうにもできないよこれ。
いやもうわからないよ、きゅっぷい。そうだ!武器は!?
腰に着いたポーチを開けようとして留まる。中身全部落ちるじゃん。これ。
下から何か音が聞こえる。何の音だ?目線を急いで下に向ける。
機械的な、元居た世界では聞こえないような音で、薄い青の光が円状に下にある塔から広がった。
自動防護機能か何かだろうか。結局死ぬじゃねえか。そう思い俺は静かに目を閉じた。
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<楽しそうなことになってるのね、うらやましい。>
そういうとサリアと名乗った神は指を一つ振りました。
そのひと振りには奇跡が宿されていました。
映画のような大きいスクリーン状の何かに映る、未だ落ちていく彼に向けて、
サリアは指を振ったのです。




