父さんの行方
デイジーは、突然矢を放たれ、死にそうになった事に腹が立ち、怒鳴った。
「危ないじゃないか!もう少しで死んでいたんだぞ」
メタセコイアの影から出てきた、謎の女は鼻で笑いながら近づいてきた。
「当たってないから大丈夫よ。それに私の弓技をなめてもらっては困るわ」
そう言うからには、相当弓使いには自信があるのだろう。
確かに、矢を見ると綺麗に木の真ん中に当たっている。あのメタセコイアからは、おおよそ10フィート(約3m)くらいだ。
デイジーは半信半疑の目で謎の女を見た。名前も知らない、あったことも無いこの女に殺されかけたと思うと、怒りがおさまらない。
「あ、思い出した。あなたが話を逸らすから言わなきゃいけないことを忘れてたじゃない!」
何のことだか知らないが、僕に八つ当たりをされても困る。
「何を忘れてたんだ、僕に言わなきゃいけない事か?」
デイジーはため息をつきながら聞いた。
「そうよ。まず私は、あなたを探して旅をしていたの。ある予言に沿ってね。そして……」
「えっ、待って。どうして君は僕を探してたの?僕の事、知ってるのか?」
デイジーは不思議でしかたなかった。僕はどうしてこの女の旅人に探されていたのか。それに予言……。
他にも山ほどききたいことがあったが、我慢することにした。
「そうね……。自己紹介をしてなかったわ。ごめんなさいね。私はウィン、ウィン・ルチーム。よろしくね」
急な自己紹介に驚いたが、名前が分かってよかった。知らなかったら「旅人さん」か「君」と呼ぶことになっていただろうから。
「えっと、僕はデイジー、デイジー・ステーラだよ。よろしく。さっきも聞いたけど、君は僕を知っていたの?」
ウィンと名乗る旅人は、じっと僕を見た。
「知っていたわ。知らなかったら、あなたを探せないじゃないの」
デイジーは、ウィンが少し笑ったことに気が付いた。
(なんだ、笑うと可愛いじゃないか)
「もしかして、これも予言で知ったの?」
デイジーは予言の事も気になった。
予言なんて、僕が小さい頃に、母さんが話してくれた昔話の中のものだと思っていた。なのに急に「予言」
なんて言われたら、それは気になる。
「ええ。凄いでしょ。魔道師様はなんでも出来るの」
魔道師、か……。ウィンの話を聞いていると現実から遠のいていくようで嫌だな。
「魔道師ね。じゃあどんな事を魔道師から教えてもらったんだ?」
「……。」
ん、返事がない?どうしたんだ。
よく見ると顔がまっ青だ。まるで、巨大な怪物でも見たかのように顔が強ばっている
「おーい、大丈夫?」
ウィンは突然座りだし、手を合わせた。
「だ、大丈夫じゃないわよ!魔道師様を呼び捨てなんて……。ああ、笑う森の守り人様。どうか魔道師様の怒りをお鎮めください。」
お祈りだ。お祈りをしている。そんなに悪いことだったのか?
「大袈裟何じゃないのか。そんなに魔道師……様は偉いのか?」
とりあえず呼び捨てにしなければいいのかな。
「……大袈裟?ばっかじゃないのあなた!魔道師様を知らないからそんなことが言えるのよ。魔道師様の事を知ったらあなただってこうなるわ。」
デイジーは絶対こうはならないと思いつつ、ウィンの言う魔道師様が気になった。
デイジーの知っている魔道師というのは、怖いしわしわのおばあさんで、いつも鍋をかき回している人だという事だ。これが本当か嘘なのかは分からないが、少なくとも、怖いしわしわのおばあさんと言うのは合っていると思っていた。
「そ、そうかなあ。その魔道師様は偉いというより、怖いのか?」
さりげなく聞いてみた。
「そうね。でも、どっちも正解なの。怖いんだけど凄く偉いの。多分、性格の問題ね」
ウィンは最後の方を小声で言った。
「あ!また、話が逸れたじゃない。あなたって話を逸らすのが上手ね!……とにかく、魔導師様は予言が出来るってこと。その予言であなたが出てきたから私の一族のもとに来て欲しいの!分かった?」
少し咳払いをして言った。
ウィンはすぐに怒ってしまう癖があるらしい。突然怒り出してしまう。いわゆる短気と言うものかも知れない。
「分かったよ。でも、僕は行けないよ。お母さんが野営地で待ってるし……」
第一、お父さん探しもしなければならないのに。やっとお母さんが、僕を離してくれるようになったのに……。今ここで邪魔される訳にはいかない!
「ダメよ。残念だけどあなたには断る権利が無いわ。理由を知れば、否が応でも連れて言ってくれって頼み込むわ」
断る権利が無い?馬鹿を言うな!僕が行かなかったらウィンやウィンの一族が困るだけだ。僕には何の損害は無い。
「権利が無いって……。悪いけどウィンの方が無いんじゃないのかな。だって、ここで僕が行かなかったら……」
「あなたのお父さん!……どこ……なの。」
ウィンが半ば怒ったような声で、僕が一番嫌な質問をしてきた。
「ど、どこかって?……。死んだよ。僕が10歳の時にね」
嘘を言った。自分でも一番辛い嘘だ。
「……。はぁ、呆れた。もっとマシな嘘はつけないの?バレバレよ!」
ウィンは得意げに微笑んだ。デイジーはウィンの笑顔が憎らしくなった。
全然嬉しくない。嘘を見抜いたからってウィンへの態度が変わるわけじゃない。ばかなんじゃ……。
「『ばかなんじゃないのか』そう思ってるんでしょ」
読まれた?なんてうっとおしい!
「思ってない!勝手な想像で僕をからかわないでくれ」
ウィンは怯んだ様子もなく、違う話をし出した。
「はぁ。あなたがくれば、あなたのお父さんの行方がわかるかもしれないのになぁー。ざーんねん」
何?と、父さんの行方が分かる?まさか……。
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更新が遅くなり、誠にすみませんでした。
今、大学入試のために必死で勉強中です。
言い訳をしてすみません。
また、
いつ更新できるかわかりませんが、
よろしくお願いいたします。