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兄と階段

 僕と妹の沙也加さやかは上履きに履き替え、生徒会室に向かう途中の階段を上がっているとどこからか僕を呼ぶ声がした。

 辺りを見回してみるが誰もおらず、空耳だったと思うことにして階段を上り続ける。

 とうとう幻聴が聞こえるようになってしまった……。疲れてるのかもしれない。夏休み中なにもしてないけど。


 「ちょ、ちょっと!なんで無視するんですか!」

 「うおっ……ちょ、重い!つーか危ねぇな!」


 階段の中腹辺りで何者かに飛び乗られ(僕がおんぶしている状態だ)、危うく階段から落ちそうになる。とっさに手すりを掴んでいなかったら確実に落ちていただろう。

 薄々気づいてはいたが飛び乗って来たのはやはり花森さんだった。

 というかこの子の跳躍力おかしくない?おかしいよね?身体能力がどうのこうのってレベルじゃないだろ……。ま、いいや。


 「お、重いって……女の子に向かって失礼じゃないですか!だから彼女出来ないんですよ」

 「うっせ……」


 花森さんは僕に乗ったままなので、吐息が耳に当たるし柔らかいものが背中に当たるしで僕は平静を保つので手一杯だったためろくに言い返せなかった。

 花森さん意外とあるんだな……じゃなくて、えっと――


 「そ、そうだ。なんか用でもあるのか?」

 「うーん。用……用と言えば用なんですけど……」


 なにやら歯切れが悪い。そういう風にされると気になってなかったのに気になるなぁ。


 「用、というか確認というか……」

 「確認?なんの?」

 「いやぁ……大したことではないんで」


 それについてはどうやら教えてくれなさそうだ。

 ま、いいか。

 そこまで興味なかったし。


 「ふぅん。じゃあ、僕たちそろそろ行くから――降りてくれない?」

 「あ、すいませんすっかり忘れてました。七瀬君の背中ってなんだか落ち着きますね」


 これは素直に喜んでいいのか?……でも、花森さんのことだからなぁ……。それに沙也加からの視線が痛い!お兄ちゃんにおんぶしてほしいのかしら?

 うーん。複雑!女の子って難しいのね!


 「そりゃどうも」


 結局僕は素っ気なく返事をすることにして、花森さんに別れを告げ階段を上りはじめる。


 「あ、そうそう」


 後ろから――というか下から声がしたので振り返ると――


 「お二人ともいい眼をお持ちのようで」


 と、花森さんは言って――笑った。なんとなく恐怖すら感じる――不気味な笑顔のまま花森さんはその場でくるっと回転し階段を下りていった。

 

その場に取り残された兄妹の心中は見事に一致していた。


 「「なに言ってんだ、あいつ」」


****


 「と、いうことがあったんですけどどういう意味だと思います?」


 生徒会室に着いた僕と沙也加は、さっきあったことを既に来ていたはるさんと副会長に話した。

 二人に話したのは気まぐれというか――まあ、なんとなくだ。別に隠しておくようなことでもないし。

 二人は考えるような振りをしてから顔を見合わせると、交互に、


 「まあ」

 「気にすること」

 「ないんじゃない?」


 と言った。

 交互に言った意味はまったくわからないが、二人がそう言うのならそう思うことにしよう。考えるのも面倒だし。

 僕は思考を放棄して生徒会の仕事に取り掛かることにした。

誤字脱字などあれば教えてください。


ゴールデンウィーク中にもう一話投稿しようと思っています。

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