兄と千春3
分けたかったので連投になってしまいました。すいません。短いですご了承ください。
どうしてこうなってしまったのだろう。
どこで間違えたんだろう。
そんな疑問はすぐに打ち消されてしまって答えは見つからない。
「あの……話は終わりましたか」
この空気をぶち壊すような声がした。
僕が入って来た方のドアを見ると花森さんが少し気まずそうに立っていた。
「は、花森さん……」
「そろそろ時間なので」
「い、いや……ちょっと待ってくれ!話はまだ――」
「無理です。本来二年前に亡くなっているはずの人間がここにいること自体が問題なんですから」
かしこまった言葉遣いで僕の反論を寄せ付けないように花森さんは話した。
「そ、それでも……僕は――諦めきれないよ」
「めんっどくさい人ですねー。男ならスパッとです」
「そういう問題じゃない」
「あなたは……受け入れたくないだけです。黒咲さんが死んでいたという事実を。大切な人が死ぬのはつらいことです。それでも……それを乗り越えていかなければならない。それが人間というもの。人生で立ちはだかる壁のうちの一つなのです」
少し納得してしまった。そう思って後悔する。一度そう思ってしまうと受け入れなくてはならない。前に進まなければならない。
「またきっと会えるさ。俺とお前の仲だぜ?会えないわけがないだろ」
千春の言葉で僕は顔を上げる。
「そうだな。また会える。いや、絶対に会おう」
「ああ。約束だ」
花森さんは一件落着といったように、にっこりと笑ってから呪文のようなものを唱え始める。
すると千春の身体はだんだんと薄くなっていき――
「七瀬――ありがとう」
そう言って消えた。
僕は涙が溢れそうになるのを我慢して、
「いままでありがとうございました!」
僕は天に向かって頭を下げた。
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あれから僕の心には大きな穴が空いたままだった。なにをしても身が入らない。楽しい楽しい沙也加との会話にも生返事をしてばかりで沙也加には怒られてしまった。
たぶんノーマル沙也加なのだが、僕のことを心配してか度々話しかけてくれたりしていろいろと気を遣ってくれたみたいだ。
あの日から二週間経った今日、僕のもとに一通の手紙が届いた。
差出人は――『君の親愛なる友人』
それに僕は少し笑ってしまってから、急いで封を切る。
内容は照れくさいので言わないが、ぽっかりと空いた穴が少し塞がったと言っておこう。
誤字脱字等あれば教えていただけると嬉しいです。