第四話 お隣さんが仕事の邪魔をするので困る
久々の投稿になってしまいました。
すみません。
「ねぇねぇ魔王! 魔王! これ何!?」
聖女は俺の服の袖をぐいぐいと引っ張って聞いてくる。彼女の指差す先には俺が元いた世界から取り寄せたゲーム機、ペーエス4があった。
「それはペーエス4だな」
「ペーエス4!? もしかしてペーエスの最新機種なの!?」
聖女の言葉に頷いてやると、彼女は「うぉぉおお、こ、これが!?」とちょっと心配になる感じのレベルで興奮していた。
「わ、私の家にはペーエスしかないのよ!」
ああ、そう言えばこちらに引っ越してきた際にマリリン教のブランケット法王に挨拶代わりにテレビとか家電をプレゼントしたときにペーエスを一緒にプレゼントしたんだった。
「やっていい!?」
もう電源を入れながらコントローラーしっかり握り締めた状態で聖女が俺に聞いてくる。やる気まんまんじゃねぇか。流石の魔王である俺も、こんだけ楽しみにしている子供にお預けくらわすほど悪党ではない。
「仲良くな?」
そう言って聖女の隣でちゃっかりコントローラーを握っている勇者をチラリとみた。いつの間に入ってきやがったんだこいつ。
勇者はたまにインターフォン鳴らさずに入ってくることがある。もしかしたら合鍵とか勝手に作ってんじゃないだろうな?
嫌な想像に俺は頭を振ってその想像を振り払った。
俺はリビングで遊ぶ二人を放置して、執務室へと移動した。ここのところ、勇者に加え聖女まで来るようになったから仕事が進まなくて困る。
何やら勇者からは仕事してない仲間だと思われているようだが、勿論俺は働いている。勇者のようなダメな大人ではないのだ。
PCに電源を入れ、IDとパスワードを入力するとホーム画面が立ちあがる。俺はまずメールのチェックから始めることにした。
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「……何やってるのかしら」
「さぁ? エロゲでもやってんじゃないか?」
「えろげ? それってなんですか?」
「俺の口からは言えねぇよ、男として」
「はぁ?」
俺とエリカはゲームでひとしきり盛り上がった後、魔王がいないことに気がつき執務室を覗きに来ていた。奴はたまに一人で執務室に籠り、何か楽しいことをしている。PCの画面をみて悶え苦しんでいたり、電話とやらを耳に当ててぺこぺこしたりしている様は何やら楽しそうなのだ。
「えろげってなんですか? ねぇねぇ! えろげってなんですか?」
「やめなさいエリカ! 若い女子がそんな言葉連呼するものじゃあありませんっ!」
柄にもなくエリカを窘める。エリカは「えぇ~」っと不満そうな声を出して抗議しているが、これは紳士協定でこの世界の女性には教えてはならない取り決めになっているのだ。法王のオッサンの名誉のためにもエロゲとかAVなどといった異世界の文化についてエリカに教えるわけにはいかない。法王のオッサンは制服物が好きだとかは特に教えてはいけない……キリっ!
「じゃああの魔王が弄っているテレビのようなものはなんですか?」
「ああ、アレはパソコンって奴だな」
「ぱそこん?」
そう言えば、エリカの家、法王のオッサンのところにはパソコンが一台しかなかったんだったな。魔王がこの世界にきたときに、神聖ランス王国の重役クラスの人物にはテレビやビデオ、冷蔵庫などの異世界の技術製品が贈呈されている。法王のオッサンのとこにもテレビなんかが贈呈されていたからエリカは多少異世界の機械についても知っているが、流石にパソコンは知らないらしい。というか法王のオッサンがハードディスクを画像とか動画でいっぱいにしているためエリカや奥さんには触らせられないのだろう。
「アレはな、インターネットとかいうのに繋がる箱だ」
「いんたーねっと?」
「世界のいろんな(女性の)画像を見れたり、(エッチな)ゲームが出来たりするするやつだ」
「え!? じゃあアレもゲーム機なんですか!?」
「ああ……どう、だろうな?」
エリカがPCに興味を持っている。ここまで話してちょっと拙いことに気がついた。PCは勿論ゲーム機の代わりにもなる。しかし、アレはインターネットに繋がっているということは……無限のエロの世界とリンクしているということだ! むろん魔王のHDも秘宝でいっぱいおっぱい僕元気状態だろう。
※勇者はPCを色々と誤解しています。主にエロいものを集める箱だと思ってます。
「いや、あの……アレはな? 違うんだ」
「何が違うんです? 私あのパソコンというのでも遊んでみたいです!」
そう言って魔王の執務室に入って行こうとするエリカを俺は羽交い絞めにして止める。このままPCが僕らのトレジャーボックス(女人禁制)だとばれたら法王の立場も俺の立場も危うくなるのは必至! 何としても止めなければ!
「な、何するですか勇者様!? そ、それは流石にセクハラですよ!?」
顔を真っ赤にしてジタバタするエリカ。
「落ち着けエリカ! いいか、アレは危険な代物なんだ」
「危険!?」
「そうだ。爆発したりする危険なやつだ」
「爆発!?」
うん。嘘は言っていない。あの箱の中では日々誰かの書き込みが炎上したり嫉妬の炎で俺みたいなリア中が爆発しているのだから。
「そ、そんな危ないもので魔王は何をやって……!?」
エリカは何かに気がついたようにハッとした表情を浮かべている。非常に嫌な予感がしたが、まあ、その矛先はきっと俺には向かないから良しとしよう。
「わかったら部屋に戻るぞ? ここで見たことは誰にも言ってはいけない……わかったな?」
「はい勇者様。流石です。やはり勇者様はそのためにここに留まっておいででしたのですね」
きらきらした目で俺をているエリカ。俺が魔王の悪だくみを阻止するための秘密ミッション中だと思っているのだろう。
「任せて下さい!」
そう言いながらエリカはペーエス4のある部屋へと戻って行った。
後日、エリカがPCを破壊したせいで何故か俺がめちゃめちゃ怒られた。
誠に、遺憾である。