王都にお引っ越し!!
モグモグモグモグ ごっくん
「この店のケタルは美味しいだろ? 俺のオススメだ」
そう言いながらシダも私と同じケタルと言う――まあ、ぶっちゃけケバブみたいなものを食べている。ていうかこのケタルと言うやつ旨いな……これ、パンに挟んでも旨いかも?
「しっかし、うちの店が王都に引っ越しとかびっくりなんですけど」
そう、シダからの話とはアモレータが王都にお引っ越しするとのことで移動するのに山賊や盗賊に被害を受けないよう騎士であるシダ達が付き添ってくれるらしく、その相談というか話し合いを店主こと親父さんにしにきたとのこと。
どうせ親父さんは決まっていても当日話せばいっか! っていう人なので諦めている。
実行前に話せって言っても無駄だからね。
というか、シダが何で私とこんな所で(広い近所の公園)でケタル食べてんだろ?
さっさと親父さんと話して帰ればいいのに…………。
だって、私に話とか言われても何話せば良いか分からないし、「護衛の話残念だったな」とか言われたらマジで泣くわ。
今は聖誕祭の準備で忙しいし、というかこれから王都まで引っ越すのに何日かかるんだろ? 元の世界じゃ車とかあったし、引っ越し業者がいたから簡単だったけど今の世界じゃ馬車と徒歩…………それで王都までは近いって言っても徒歩で2日間と15時間程歩く距離。
え? 何で時間が分かるかって? 実はここに落ちて来た時にしてたソーラー電波時計が超役にたってます!
大学入学の祝いで買ってもらって良かったよ、本当……帰ったらお父さんに感謝するよ! ていうかいつ帰れるか分かんないけどね!!
この世界時計とかないから隠して使ってるけどね。
スマホは充電器をどこでも使えるようにとソーラーにしたらこれまた便利で今だに使えてます。ただし、電波ないから曲と写真撮るだけ…………。
それよりも、引っ越し作業だよ! いつここを立つんだろうか?
そう思って聞いたら……
「引っ越しは明日の早朝だ」
「…………めっちゃ急ですね」
絶対に親父さん確信犯だわ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
…………そんな訳で当日。私達アモレータの皆は王都に向けて馬車で移動してま~す!!
(特別にシオンさんが貸してくれました☆)
用意してくれた馬車は結構良いやつで馬車の中はちゃんと座る椅子があって荷物は後方に荷物を置ける場所があるので結構広い造りだ。そしてその馬車を運転する席に座っているのが手綱を握っている親父さんと――――何故か私。
普通馬車の中じゃないの? 男のアルトが中で、何で私が外?
ちょっと気になったので隣にいる親父さんに聞いたら
「お前は護衛役で周囲を見てろ」
……だそう。
どうしてだろう? この頃親父さんの私の扱いが雑になってきてます……。
「王都にまあまあ近くて良かったよね。これなら今日中につくだろうし」
「お前ら、気を抜くんじゃねえぞ! 盗賊やら山賊が近頃出てくるらしいからな……」
親父さんがアルトの言葉に釘を刺す。
だけど、親父さんの方が山賊とか強盗っぽいのは私の胸の中に秘めておこう…………。
「父さん大丈夫よ。王都からの騎士様もいらっしゃるし、何よりアオイがいるもの♪」
「いや……私なんて役に立たないから騎士様達に頑張ってもらいましょう~……」
アハハと乾いた笑いで誤魔化す。
実はここのところ変な奴らがアモレータの周りを張っていたので一網打尽にしたところ何故か他の店からも用心棒として勧誘される始末になってしまい、店が引っ越しになって助かったところなのです。
「そんなにアオイは頼りにされているんだな」
「……シダさん」
騎士の格好をしたシダが私の隣に馬を並走させて話しかけてきた。
…………というかさ、何でシダがいるの?
最初に会った時も思ったけど王直属の騎士なのに主君から離れちゃ駄目じゃん! この間に王様が暗殺者とかに狙われたらどうすんの…………って、私 職業 暗殺者だけどそんなことしませんよ!
「そういえば、シダさんは王様の直属の騎士様なのに私達についてて良いんですか? 王様を守らないといけない立場ですのに…………」
私の心の声を代弁してくれたラナに拍手を贈りたい!
「ああ、それならば問題ない。陛下自ら命令されたので心配しなくていい」
「「「………………」」」
心配するわボケェッ!! 何で国王自ら命令するの!?
……あれか、まさか私が変な動きをしないように監視する為に来たのか…………それなら納得がいくんだけど。
心の中で色々と考えていた私はあることに気付く。
(山賊か――――それともただの盗賊か)
どちらも似たようなものかと冷静に考え、次に人数――――合わせて13人くらいか……ちなみにシダの方も気付いたらしく、周囲に目をやり部下になにやら指示を出している。
「…………ここは騎士の皆さんに任せとくかな」
私は楽しますよ~~♪
「ちっ! 逃したか……皆さん、今我々は山賊に囲まれてます! 貴方達の事は我々騎士団が必ずお護り致しますので安心して下さいっ!!」
シダが私達を安心させるように言ってくれたが私は眉を顰めた。
(よりによって山賊……ここら辺の山賊って確か結構手強いって聞いてるけど、大丈夫かな?)
シダは頼りになると分かっているが、他の者は見たことない人達ばかりなので不安になる。
そんな気配を感じたのかシダが私の隣に来て頭にポンッと手を乗せてガシガシと撫でてきた!?
「な、何っ!?」
「大丈夫だ。ここにいる者達は俺の精鋭と言ってもいい部下達だ。絶対にお前達を危険なめにはさせない」
「…………お兄ちゃん」
言ってから自分の失態に気付いた時には遅かった。
「お兄ちゃん?」
わ――――!? うっかり言っちゃったよ!? でも仕方ないじゃん! 今の仕草が本当の兄の仕草とめっちゃ似てるんだもん!!
よく落ち込んでいると乙女な兄が心配して安心させる為によくやってくれた頭撫でだ。
「いや、すみません!? 変な事言っちゃって! もう言わないので――」
「いや、弟にも言われてるし気にならないから大丈夫だ」
……弟か。ま、まあ良いや。
そんな微笑ましい(?)光景が次の怒声で現実に引き戻された。
「隊長!! 賊がこちらに来ますっ!!」
「迎え撃つぞっ!! ――――デオ殿はそのまま突き進んで下さい!!」
「分かった!! お前ら! 飛ばすからしっかり掴まっていろよっ! はあっ!!」
パシンパシンッと馬達の手綱を振るうと馬達はさっきよりも速くスピードを上げ始めた!
「シダさん!!」
「大丈夫だ! 先に行って待ってろ!!」
力強く言う彼に私は分かったと返すのだった。どうか無事に会えますようにとこの時だけは神に願った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「そろそろ街に着くな……」
「山賊は撒けたかな?」
親父さんが後ろをチラッと見て私に聞いてきたので
気配を探ってみるが、山賊はいない。どうやら撒けたようだ。
「このまま行けば王都だね。そういえば、何で国王様は私達に護衛をつけてくれたんだろう?」
「…………何だ、お前シダの事心配じゃないのか?」
「約束してくれたから大丈夫」
「そうか」
どうやら私の返事に納得したようでそれ以上親父さんは聞いて来なかった。しかし、さっきの質問を流された気がするんだけど…………もしかして親父さんは何か知っているのかな?
そして、王都に入る為の門を通る時だった。
「やっぱりここで待ってて正解だったな」
「!?」
キキィ――――!! ガタンッ!
親父さんが勢いよく手綱を引いた為物凄く揺れたが皆怪我もなく馬車も無事に止まった。
…………いや、馬車の中の者達は気を失っている。
目の前に広がっていたのは、急に現れた男と地に伏している門番達らしき者達がそこらに転がっていた。
即座にスキルで状態をサーチしたがただ寝てるようだ。外傷もないし、眠りの魔法かなんかで眠らせたのかもしれない。
そうと分かるのも相手をサーチにかけると魔力の気配が濃厚だったからだ。私の暗殺者という職業って結構多方面で使えるのでとってもお得だな~と思ったりします…………なんてね。
さて、目の前の敵なのか分かんない男はこちらを見て――――びっくりしました…………って何でだ?
「また会うとは思っていたが、こんなに早いとはな」
「? あんたと会ったことなんて無いと思うけど?」
そう言うと、相手の男はフッと笑うと魔力が沸き上がる!
「!? な…………っ! あ、あの時のイケメン青年!?」
アホな発言をしてしまう程びっくりしてしまった。
だって、魔力が沸き上がったと思ったら相手の男は自身の髪の毛を本来の毛の色に戻したんだと思うけど、その色はこの間新開発したリコのパンを買って行ったあの薄い青色の髪をした好青年だったんだよ!?(動揺!!)
彼はその青色の髪をサラリと手でかきあげると髪で隠れていた左目が現れ――――紅く光っていた…………中2のアレなの!?
「やっと思い出したみたいだな。だが、俺が本当に用があるのは隣の親父だ。なぁ――――王宮騎士のデオ・グランベルト?」
「!?」
急に出た名前とその他にびっくりして隣の親父さんを見ると…………親父さんは静観していました。
「その名は棄てた。今の俺はただのデオでパン屋の店長だ」
え――――!? 親父さんて王宮騎士だったの!? あ、でも今はパン屋の店長だから『元』か?
「俺も聞きたい事があるんだが? 何故隣国の代4王子様がこんなところにいらっしゃるんで…………?」
「…………」
………………隣国の王子まで出てきてますけど。
一体何でこんなことになってんの!? 誰か説明して頂戴~~!?
そんな私を置いてけけぼりで話は進んで行きま~~す⭐