転生の儀式~貫かれた乙女と貫く願いの槍~
森の奥は木がうっそうと茂っていて、日が出ている時間なのに明るい夜と同じぐらい暗かった。
常夜の森と言われ、入れるランカーが九万位から制限されている地域だ。
ほとんどの光が木で遮られているせいだろう。
近くにいるシルヴィアや紅葉のことは分かる程度で、敵が隠れていたら簡単に奇襲されそうな地形となっている。
「それにしては、何というか家の後みたいなのあるんだよなぁ。それも意外と原型を保っているから、古くは無さそうだし」
普通なら人が住みそうに無い場所に、根に飲み込まれた家の残骸が並んでいる。
家具は原型を残しているし、あたかも最近まで人がいた村だったかのように思える。
「住んでいたんですよ。つい数年前まで」
「え?」
「リクさんはどちらからマルスに来たんですか?」
「えっと、南の方……。大渓谷みたいな所から来たんだ」
日本から来たとは言えない。俺は自分が現れた場所のことをぼかして伝えた。
「あぁ、それならご存じないのも当然かもしれませんね。私はちょうどこの奥の村に住んでいたんです」
「え……? だって、ここ完全に廃墟だろ? この奥は無事なのか?」
「いえ、とっくにこの常夜の森に飲み込まれています。都市マルスを中心に西は常夜の森に浸食され、南は荒野に、北は氷の世界に、東は水に飲み込まれています。マルスの外の村はいつ自分の村が飲み込まれるかに怯えながら過ごしているのです」
異世界ならではの異常だろうか。
状況を聞いてみると、割ととんでもない世界に放り出されたものだと思う。
「どうやってその異常を止めるんだ?」
「それぞれの異常には核になるダンジョンと魔物がいるそうです。この森の奥には踏みつぶす巨大樹、南には飲み込む蟻地獄、東は吐き出す巨水蛇、北は包む雪巨人。姿を見た報告もほとんど無いけど、超巨大な魔物みたいです」
「シルヴィアさんは巨大樹を倒すために、協会戦士になったのか?」
「ううん。私にはそんな大きいの無理ですよ。倒したいとは願っていますけど」
シルヴィアは首を横に振って、ため息をついた。
俺は人類が集まって、世界の異常に対処するために戦神協会が作られたと思ったので、彼女の反応は意外だった。
「それじゃぁ、なんでシルヴィアさんは協会戦士を?」
「私の望みは、みんなの恨みを晴らすことです」
「あ……ごめ――」
「あはは。ごめんなさい。私なんかが最後の生き残りなんですよ。一番力のない私がたまたま病気でマルスに行っていたから、生きているんです」
俺が失言に気付いた時には、シルヴィアは自嘲気味に笑っていた。
決してへらへらしている訳では無さそうだ。
だって、シルヴィアの手は槍を握って震えている。
本当に何とも無いのなら、そんな悔しそうなことをしないはずだ。
「さて、お喋りはお終いじゃ。その噂の死霊が来るぞ」
紅葉が敵を察知したのか、俺達の話に割って入ってきた。
彼女が指さした方を見ると、半透明の人間が木の枝を持って宙に浮いていた。
生前と同じ姿をしているらしく、老若男女いろいろなタイプに死霊がいた。
数は十体。感情は消えているのか無表情なのが、妙な恐怖心を煽ってくる。
肉体が無いからか、近づいて来ていても一切の音がない。
本当に十体だけしかいないのか、まだまだ隠れているのかも分からない。
「紅葉、やるぞ!」
「あぁ、存分に斬り喰らえ。リク」
まずは一体を確実に仕留めるため、俺は抜刀術の構えをとった。
「紅葉、あいつら木の枝しか持ってないけど、ランク制限するほど強いのか?」
「その木の枝が、我らと同じ力を持っていたとしたら、どうじゃ?」
「まさか……。って、そのまさかか……」
死霊の持つ枝が生長し、彼らをまとう鎧へと変化する。
木の鎧が出来ただけかと思いきや、木の螺旋槍、大剣、弓とバリエーションに富んだ武器を構えていた。
「魔物は精神体じゃ。そして、この森の木も半精神体と化しておるせいで、このような異常事態を引き起こしておる。油断するなよリク」
「分かった。数は十体。シルヴィアさん行くよ!」
俺が前衛となるつもりで先に飛び出した。
そして、敵の目の前で、炎をたたえた刀を引き抜いた。
「魔刀、一の唄型。初日!」
炎の三日月が死霊を飲み込み、木の武具が黒炭と化す。
「これで一体!」
「リクッ! 下じゃっ!」
「なっ!? くっ!?」
急に地面が盛り上がってきたと思ったら、木の根が鞭のようにしなり、襲いかかってきた。
「な、なんだ今の!? どこからの攻撃だ!?」
「敵の後衛からじゃな」
紅葉の声に従って奥を見ると、槍を地面に刺している死霊がいた。
距離は十メートルほど離れているだろうか?
予想外の遠距離攻撃に俺は舌打ちを打ちながら飛び退いた。
「シルヴィアさん。援護を頼めるか?」
シルヴィアに声をかけてみるが、彼女からの返事は返ってこない。
「シルヴィアさん!」
「……見つけた。ランド、ベール、クリス」
「シルヴィア?」
俺の呼びかけに反応せず、人の名前を呟きだした彼女に振り返ると、槍を持って震えていた。
「ガットおじいちゃん、私がみんなを解放してみせます!」
「シルヴィア待て!」
そして、今度は俺の制止も聞かずにシルヴィアは飛び出した。
彼女は死霊の中に飛び込むと、槍を大きく振り回してなぎ払おうとしている。
だが、彼女の渾身の一撃もあっさり防がれてしまう。
「きゃっ!?」
突如シルヴィアが悲鳴をあげたかと思いきや、尻餅をついて倒れてしまう。
よく見ると彼女の足下には植物のツルが巻き付いていた。
そのツルが彼女の胸元を這い上り、首に巻き付いている。
死霊騎士の武器は手に持っている物だけでは無い。
常夜の森自体が彼らの武器なのだ。
「紅葉っ! 俺にあいつを救う力を貸してくれ!」
「任せよ。先ほどの一撃で新たな魔法を使えるようになっておる。行くぞ。剣を逆手に持って腕を天に掲げるがよい!」
俺は紅葉に言われる通り、刀を逆手に持って腕を真上に掲げた。
「天より零れる日、白雲を切り裂き、神の梯子を作り出す。言霊に宿る技の名は」
「魔刀、二の唄型、零れ火!」
魔法の名前とともに刀を地面に突き刺した。
すると、地面の表面に亀裂が走り、赤い炎が亀裂に沿って這っていく。
地を這う炎は死霊の足下に到達した途端、火柱を噴き上げ、シルヴィアに絡むツタと敵を飲み込んだ。
「シルヴィア大丈夫か!?」
「はぁ……はぁ……リクさん?」
意識が朦朧としているシルヴィアをしゃがんで抱きかかえると、彼女は俺の顔に手を伸ばしてきた。
そして、俺の頭を抱き寄せてくると、シルヴィアは俺の耳元で苦しそうに囁いてきた。
「ここの死霊は……私の村の住人だった人達です」
「あ……俺が……倒したのは……まさか……」
シルヴィアがおじいちゃんと言っていた死霊も混じっていた。
俺が彼女の身内に手を掛けたというのか?
「大丈夫です。私が彼らを眠らせないといけないんです。彼らがもっと沢山の人を傷つける前に……。でも、私はランクが低くて、まだ一人じゃここに来られない」
「……シルヴィア」
「ありがとうございます。リクさんのおかげで、私の夢がほんの少しだけ叶いました」
「君が戦う理由は……村の人達を成仏させるためだったのか……」
「すみません。ありがとうございましたリクさん。もう立てます」
俺の頭から手を離して立ち上がった彼女を目で追うと、彼女の頬に涙の後があった。
泣いていたのだろうか。俺が斬った死霊達は彼女にとってどういう人達だったのだろう。
「すみません。リクさん。次はちゃんとやりますから」
笑顔を浮かべて明るく振る舞うシルヴィアに、俺は何と言って良いか分からず俯いてしまった。
でも、彼女の望みが死者達の安らかな眠りであるのなら、やはり手伝うのが正義だろうか。
「シルヴィアさん……。俺があなたの代わりに倒して良かったんですか?」
「……はい。本当ならば私が眠らせてあげたいのですけれど……。すみません。私に力があれば……」
「分かった……。君の夢を叶えるために、俺は力を貸す」
「ありがとうございます。リクさん。さぁ、次の死霊を探しに行きましょう」
目元を拭ったシルヴィアが身を翻して、一歩を踏み出した。
その瞬間、彼女の胸が木の枝に貫かれた。
「え……?」
「シルヴィア!?」
「……リクさん」
バタリと倒れたシルヴィアに駆け寄ろうとすると、木の陰に隠れた死霊騎士が飛び出して、木の槍をシルヴィアに突き刺そうとしていた。
「シルヴィアァァァァ!」
俺が渾身の力で地面を蹴り、一直線に死霊のもとへと跳躍する。
間に合え! 間に合ってくれ!
ゆっくり流れる景色の中で、俺は祈るように叫んだ。
「魔刀一の唄型。初日!」
衝撃波を飛ばしてギリギリで死霊騎士の槍を斬り飛ばす。
そして、目の前で着地すると同時に剣を振り下ろした。
バッサリと切られた死霊騎士の体は霧散し、紅葉の刀に吸われていく。
「シルヴィア! 大丈夫か!?」
「へましちゃいました……」
「人同士でも斬り合っても死なないだろ!? なら、シルヴィアは死なないよな!?」
俺の問いかけにシルヴィアは首を横に弱々しく振った。
「魔法の世界なんだろ!? 生き返らせることくらい出来るんだろ!?」
「怪我を治すくらいは……出来るみたいですけど……心臓……近くみたいで……はは……だめみたいです」
「そんな……」
死を悟りながらも、シルヴィアは笑っていた。
その手を握り締め必死に声をかけるが、彼女の顔は青くなるばかりで、血も止まる様子が無い。
儚い笑いは彼女なりの強がりだったのだろう。そのせいで、俺は彼女が生きては戻れないことを理解してしまった。
「私の夢、本当はですね。世界の異常をなんとかすることだったんです……。叶わないと分かってても願わずにはいられませんでした……」
「俺が叶える! だから、生きてくれ! シルヴィア! じゃないと俺は……俺が転生した意味が……俺は誰かを守る力を手にしたのにっ!」
「一緒に……戦いたかった……」
彼女の手が俺の手からすり落ちる。
笑顔のまま息を引き取った彼女に、俺は声にならない声で絶叫した。
泣いているのか、怒っているのか、自分でも分からなくなるぐらいに、気持ちがぐちゃぐちゃになっている。
「夢を叶える力が無ければこうなる。不相応な願いを抱いた小娘の結末じゃ。そして、リク。君が君自身を責めるのであれば、弱い自分を呪うと良い。我の力はまだ一割も解放されておらん。もしも、全開であるとすれば、この程度の敵に遅れは取らなかったはずじゃ。悔いて糧にするんじゃな」
紅葉の言葉が頭の中に深く突き刺さる。
否定出来ない結果が目の前に転がっていて、後悔の念が俺を押しつぶしそうになっていた。
その時、目の前で何かが光、ジャリッと土を踏む音が聞こえた。
「ようやく死んだか。俺様の主。素質はあると思ったが、死の間際の言葉、何とまぁ俺様の心を奮わせることか」
男勝りな女性の声に顔をあげると、茶色の髪をポニーテールにしてしばった巨乳で背の高い女性が、槍を片手に立っていた。
「シルヴィアの武器?」
「ん? って、あぁっ!? お前紅葉の主のリクじゃねぇーか! 紅葉とはうまくやってるか? あいつ小難しくて大変だろ?」
「え?」
まるで昔から知っている知り合いのように、背の高い女性が声をかけてきた。
彼女はシルヴィアの武器で俺と直接の面識は無いはずだ。
「あぁ、何だ紅葉から聞いてないのか。七原典の槍姫、トレートスだ。よろしくな」
「ったく、じゃから、そう簡単に我らが七原典であることを喋るな」
トレートスの言葉に応えるように、紅葉が実体化すると、トレートスに冷めた目を向けていた。
「相変わらず小さいな紅葉」
「お主がでかいんじゃトレートス。で、お主が現れたと言うことは、この小娘が依り代か」
「あぁ、そういうこと。俺様が最後だからな。始めるぜ。転生の儀」
トレートスはシルヴィアの胸から木の槍枝を引き抜くと、代わりに彼女の持っていた槍を迷い無く、シルヴィアの胸に突き刺した。
「なっ!?」
「落ち着けリク。お主も記憶にあるはずじゃ。一度死んだというな」
「あ……」
俺もトラックにはねられた後、紅葉を抜いて転生したんだ。
それならば、シルヴィアも生き返る?
「俺様が問う。お前の望みはなんだシルヴィア?」
トレートスの問いかけにシルヴィアは答えない。
血が未だに流れ出るシルヴィアの死体を見れば、生き返る訳がないと分かる。それでも、俺は必死にシルヴィアが言葉を発することを祈っていた。
「お前は弱い。それでも、尚、己の手には余る夢を抱くか? 無謀と知るも曲げられない理想があるのか? 貫きたい願いがあるのなら俺様を掴んで見せろ! シルヴィア!」
「次の人生があるのなら、私は変わらずこの世界に生まれたい。私は死んじゃったみんなのために、この世界を救いたいのっ!」
聞けるはずのないシルヴィアの叫びが響き、動くはずの無い彼女の腕がトレートスの槍を掴む。
「良く言ったシルヴィア! 俺様の名前はトレートス! 無謀な願いを貫き通す槍だ!」
豪快な笑顔を浮かべるトレートスと叫んだシルヴィアの体が光に包まれ、一つの球となって混ざり合った。
「シルヴィア!?」
「これが君の経験した転生の儀じゃ。光の中で体が作り替えられておる。生まれ変わるんじゃよ。我ら七原典を使えるようにな」
ほどなくして光の球に亀裂が入ると、二つの人型に分離した。
大きな方からはトレートスが現れ、小さい方からシルヴィアが現れる。
シルヴィアの体は先ほどまでの傷が嘘のように、血の一滴も出ていない。
本当に生き返った彼女に、俺はこらえきれずに抱きついた。
「シルヴィア!」
「あれ? リクさん? リクさんも死んじゃったんですか?」
「違う。生きてる。シルヴィアが生き返ったんだ……。良かった。……本当に良かった」
「く、苦しいですリクさん」
俺は背中を叩かれてシルヴィアを離した。
その途端、俺はトレートスに首根っこを掴まれて、紅葉に向かって投げられた。
「なにすんだっ!?」
「悪いな。まだやることがあるんだ。シルヴィア、最後に契約の儀だ」
トレートスは悪びれること無く、俺を無視してシルヴィアに顔を近づけていく。
そして、シルヴィアとトレートスが口づけを交わすと、トレートスの手の甲に契約の紋章が現れた。
「紅葉……説明はしてもらえるんだろうな?」
「まぁ、ここまで見せたらするしか無いな。トレートス、お主もその小娘に話すのじゃろ?」
紅葉仕方なさそうに俺の言葉に頷くと、トレートスにジト目を向けた。
冷たい視線を送られているトレートスは豪快に笑っていて、紅葉とは対照的だ。
「当たり前じゃないか。俺様の主様は俺達の役割を聞いても、軸は曲がらないだろうからな」
「ふむ。さすがは無謀な願いを貫き通す槍に選ばれただけはあるか」
「後悔を断ち切る刃の主は、育て方に難儀しそうだな。見ててひやひやするぜ」
「ふん。じゃが、先ほどので確実に強くなっておる。お主のせいで想定より足りないがな」
「全く俺様以外は陰湿な意志を糧にする奴ばかりだな!」
「よく言う。型にはまれば一番危険なのがお主だろうに。曲げられぬ意志など呪いのような物じゃろうが」
トレートスと紅葉は旧知の仲のように喋っているが、いがみあっている人達のように間に火花が散っているように見えた。
この二人、意外と仲が悪いのか?
紅葉とトレートスの話しについていけない俺は、シルヴィアに助けを求めるつもりで彼女に振り向いた。
だが、シルヴィアも分からないみたいで首を横に振っている。
「紅葉。頼むから説明してくれ」
俺は仕方無く武器同士の口喧嘩を止めようと、制止することにした。
だが、二人は止めること無く煽り合いを続けている。
「ん? あぁ、そうじゃったな。じゃが、その前にやらねばならぬことがある。トレートス、お主は目覚めたばかりじゃ。物陰に隠れておってもいいんじゃよ?」
「抜かせ。不完全な炎しかまだ灯せないお前に言われたく無い」
「言ったな?」
「あぁ、何度でも言えるぜ?」
「勝負じゃ!」
「受けて立つ!」
紅葉とトレートスは額がぶつかり合う直前まで顔を近づけると、俺達の方に手を伸ばして走ってきた。
「リク! 後ろに死霊騎士が十体!」
「シルヴィア! 村の連中を楽にしてやれ! 俺様で魂を吸い取ってお前とともに生きてもらうんだ!」
敵の第二波が来た。
それに気付いた武器の二人が俺達の方に飛び込んで、それぞれ同一化する。
「今度はやれるかシルヴィア?」
「すごい力を感じます。私が私じゃないみたい。え? これは唄? あ、体が勝手に! リクさん離れて下さい!」
シルヴィアが槍を持つ右手を後ろに引き、左足を一歩前に踏み出した。
「槍技、一の唄型、ソニックジャベリン」
シルヴィアの声とともに、黄色く輝く槍が死霊の群れに向かって投げられた。
まるで、弓矢のように飛翔する槍は、空中でカクカクと曲がりながら死霊達を貫いていく。
「え、えぇぇぇ!?」
何故か投げたシルヴィア本人が一番驚いていた。
そして、投げた槍が一人で戻ってくると、トレートスの人型へと変化した。
死霊の気配もなくなったのか、紅葉も人型へと戻っていた。
今回の戦闘に関しては俺も紅葉も何も出来ていない。
「ま、これが俺様の実力という訳だ」
「これだからお主は好かぬのじゃ。主から離れて暴れ回っている内に、主がやられたらどうする。まぁ、良い。とりあえず、日もそろそろ暮れる。一度街に戻って、話をしてやろうじゃないか」
「そうだな。俺様の武勇伝もたっぷり聞かせてあげてやりたいし!」
「お主は無謀につっこんで、皆に迷惑をかけていたじゃろうが。まぁ、良い。行くぞリク」
不機嫌そうな声を出す紅葉は先に一人でスタスタと元きた道を歩いて行った。
その紅葉に俺達も駆け寄ると、彼女は悔しそうな顔をシルヴィアの方に向けて小さな声を出した。
「やれば出来るでは無いか。シルヴィア」
紛れもない紅葉からの称賛に、俺とシルヴィアは驚いた顔で目を見合わせた。