雷獣の名と黒い噂
シルヴィアに連れられながら街を歩いていると、戦神協会西部支部という建物に連れて行かれた。
本部とは違い、支部は闘技場ではなく、白くて四角い病院のような建物で、中は役所のような雰囲気を感じる場所だった。
大きな掲示板や紙を刺している棚などが、そこら中に置かれている。
「実務はですね。支部で探すんですよ。ギルドランクで受けられる実務が変わるので、気を付けてください」
「なるほど。今俺は十五万未満の実務も受けられるようになった訳か。へー、オーク退治、十体毎に二十グレードに、五百オルね。あぁ、これがポイント制限か。グレードは二百ポイントまでって書いてあるな」
「うん。同行者のランクが高ければ、自己責任でついて行くことも出来ますよ。さっきの私みたいにトラブルが起きる可能性もありますけど……。ちなみに私がついていったのはそっちの死霊騎士。九万位から挑戦出来て、十体毎に四十グレード、千オルです」
「九割持ってかれたら、オークの方が遙かに良いな」
「そうなんですよねー。あはは……。でも、死霊騎士のいる奥じゃないと出来ないこともあるので」
情け無さそうにシルヴィアが笑っている。
何か事情があるのは俺でも察することが出来た。
ただ、魔物がいる場所へ行くはずなのに、彼女は武器を携えていない。
「そういえば、シルヴィアさんのグロウウィルはどこにいるんだ?」
「私のグロウウィルは照れ屋さんでして、人型になるのを嫌うんですよ。ちゃんと同一化はしてるので、声は私には聞こえますよ」
「へぇ。そういう奴もいるんだな」
それに比べて、紅葉はやけに人型に戻るのが好きなタイプだ。
人間色々、武器に意志があるのなら、個性も色々か。
「ん? なんじゃこっちを見て?」
「紅葉は人間状態の方が接しやすいから、助かるなーと」
「ふふん。我の美貌の虜になっておったか。我は寛大じゃ。満足するまで愛でても構わんぞ」
少しおだてたらこれだし、褒めなかったら怒るし、攻撃力も扱いにくさも超一級品だ。
とりあえず、調子に乗っている紅葉はこのまま放っておいても大丈夫そうだったので、俺は自分が受けられそうな実務を探した。
「そう言えば、シルヴィアさん。宿屋で一泊するのっていくらくらいなんだ?」
「千オルかかりますね。個室の宿屋は結構値が張るので、大概の協会戦士は与えられる寮があります」
「一泊オーク二十匹か……。ちなみに、その寮はどういう制度なんだ? 紅葉が雑魚寝とか言ってたけど」
「えっと、五万以下のランカーから個室だったかな? 十万以下からベッドが貰える四人部屋です。十万台からは大広間に毛布だけ渡されます」
「……何人ぐらいいるの?」
「二十人くらいでしょうか。結構せまいですよ」
俺は先ほど戦った見知らぬむさいおっさん達と、雑魚寝したり相部屋になって寝ることを一瞬想像した。
無理だ。絶対に無理だ。
俺は首を振って想像した光景を振り払った。今日の安眠のために、何としても敵を倒さなければならない。
「大丈夫ですよ。実務の報酬はギルドカードに記録された実績に応じて払われます。森の中で出会った敵を片っ端から倒して、採取系実務もこなせば宿代と食事代くらい出ますよ」
「そうか。えっと、実務を受けるにはどうすれば良いんだ?」
「ギルドカードに勝手に討伐記録は残るので、終わった後に支部に来ればいいんです。とりあえず、新しい場所に行けるようになったら、実務の確認。これが生活を維持する基本です」
「なるほど。申請とか細かいことはしないんだな」
「そうですね。戦神協会に入ったら、戦うのが仕事みたいですからかなり簡易化していますね」
シルヴィアは少し悲しそうな顔をして頷いた。
何か思うところがあるのだろうか。
「どうかしたか?」
「いえ、何でもありません。日が暮れる前に西の森に行きましょう」
シルヴィアは俺の質問に笑顔で首を振ると、足早にその場を立ち去った。
何か深入りされたくないことがあるのだろうか。
それならば、根掘り葉掘り聞くのは止めておこう。
ただ、彼女も協会に登録している戦士なら、あのことだけは聞いておこうと思った。
「ねぇ、シルヴィアさん。雷獣のレイって知ってる?」
その名を口に出した途端、支部内のざわつきがぱたっと止まった。
そして、皆の視線が一斉に俺に向かって注がれる。
まるで、何かに怯えているかのようなみんなの様子に、俺は意味が分からず困惑した。
「えっと……? 今日、千位のベテランを倒して、百位台になったとか言うあのレイなんだけど……? 武器はエクレールっていう名前の大槌だったかな?」
「リク君、……あなたはレイの仲間なの?」
「幼なじみ……だったけど?」
俺が疑問に答えた瞬間、シルヴィアは俺から飛び退き、支部内にいた人達が一斉にグロウウィルを武器化させた。
恐れや憎しみが入り交じった視線が、四方から向けられている。
先ほどまで親しくしていたシルヴィアまでも、警戒心を丸出しにしていた。
玲の奴、この世界で一体何をしやがった!?
「……おい、てめぇ、雷獣のレイの幼なじみなんだってな?」
斧を構えた男がジリジリと近づきながら尋ねてくる。
頬に目立つ十字傷、赤毛の短髪、鋭い眼光、筋肉質な身体、どこを見てもパワー系の戦士の様相を呈している。
「あぁ……。ここ数ヶ月はろくに喋ってないけど」
「悪く思うなよ兄ちゃん……てめぇをぶっ倒して、雷獣との交渉材料になってもらうぞ。宣誓!」
いきなり臨戦態勢に入った斧男に、俺はどうして良いか分からなかった。
俺はこの男に何もしていないし、戦う理由がない。
「いやはや、どうして、君の探し人は色々な恨みを買っているようじゃな」
「紅葉……一体なにがどうなってるんだ!?」
「さぁなぁ。でも、やるしかないのぉ。正当な理由無く戦いの誓約を断れば、グレードか相手の望みを叶えるか、どちらかを果たす必要がある。お主の目的のためにも逃れられぬ戦いのようじゃ」
呆れた声を出しているが、紅葉は目を細めて冷ややかな笑顔を浮かべている。
玲が戦いを愉しんでいると言っていたが、紅葉も同じくらいに戦いを望んでいる気配がした。
ただ、俺が戦うのはヒーローになるためだし、玲ともう一度会うためだ。
その玲の名前を出して、こんな反応が返ってくる理由ぐらいは知りたい。
「教えてくれ。玲が何をした!? あいつは一体どうしたんだ!?」
斧の男に俺は大声で問いかけると、彼は鼻で笑うように俺の質問をあしらった。
「俺を倒したら教えてやるよ!」
「くそっ、紅葉!」
こっちが誓約をする前に、男は斧を振り回してきた。
「任された。片っ端から切り伏せるぞ。リク!」
俺は紅葉が伸ばした手を掴み、炎から紅の刀を引き抜いた。
「くそっ! なんでこうなった!? 宣誓!」
「俺達を哀れむのなら、雷獣の知り合いとして、少しでも罪悪感が俺達に素直に負けろ!」
重たい金属音が支部内に鳴り響く。
かなりの衝撃で手が震えるが、何とか受け止められた。
「罪悪感だと!? お前一体何を言ってるんだ!?」
「魔刃、四の唄型。切り裂け! 千刃の嵐!」
斧の刃から緑色の光が俺に向かって吹きだしてきた。
光を帯びた風? っ痛!?
腕を切られたような痛みにたまらず飛び退くと、斧の男はしたり顔を浮かべていた。
腕に力が入らない。これが精神体にダメージを受けるという意味か。
「どうじゃった? 魔法を初めて喰らった感覚は? 相手は七万位の序列者。それぐらいとなれば、魔法ぐらいは使える階級という訳じゃ。にしても、七万位にしてはなかなかの威力じゃった」
「紅葉。注意しなかったのはわざとか……」
「何、我も君も一度は喰らわないと理解出来ないと思ったのでな。じゃが、これで我の準備も整った。構えろリク」
「まさか、俺も使えるのか?」
「あぁ、我を信じて、肩の力を抜き、我の唄に身を任せるが良い」
俺は紅葉の言う通りに肩の力を抜いて、刀を鞘に一度しまった。
「なんだ降参か? なら、大人しく斬られちまいな!」
斧を持った男は大きく斧を振りかぶって、こちらに走ってくる。
それでも慌てずに俺は紅葉の言葉を信じた。
「始まりの火、その煌めきは刹那、宵を切り裂く白き刃。言霊に宿る技の名は」
「「魔刀、一の唄型、初日!」」
鞘から剣を振り抜いた瞬間、赤い炎を帯びた衝撃波が斧の男を飲み込んだ。
衝撃波に飲み込まれた斧の男はそのまま壁に叩きつけられ、赤い炎に抱かれたまま倒れている。
業炎の抜刀術、初日。鞘に貯め込んだ魔法の炎を一気に相手に撃ち込む遠距離魔法だ。
「んなっ!? 魔法だと!? こいつは既に育ったグロウウィルを使ってるっていうのか!?」
「ひ、ひるむな! 連続でかかって消耗戦に持ち込めば、削りきれるはずだ! こっちは元千台のランカーなんだぞ! 誓約!」
火ぶたを斬ったように残りの戦士達が宣誓の言霊を叫ぶ。
剣、斧、ハンマー、槍、籠手で接近戦を仕掛けようとする者、弓や杖で遠距離戦か援護をしようとする者、色とりどりの武器と人間に囲まれている。
多勢に無勢。その中、シルヴィアだけは隅の方でこちらを見ていた。
そんな最悪な状況でも、頭の中の紅葉は愉快な笑い声を奏でている。
「くふふ。よりどりみどりじゃな」
「紅葉……この数相手にやれるのか?」
「もちろんじゃ。君が戦う意志さえ示せば、我は力を貸すぞ」
「でも……こいつらは何でこんなにも玲のことを恨んでるんだ?」
「おや? 君は正義のヒーローとやらになるのじゃろ? ならば、幼なじみを守るために、敵を蹴散らすのもまた役割ではないのか? 恨みの理由など今は知る必要なかろう?」
「……そうかも知れないけど。くそっ!」
脳内から響く紅葉の誘惑に負けた俺は、刀を構え直した。
「誰も死なないからって、簡単に決闘をふっかけすぎだ。くそったれ! 少しは人の話を聞きやがれ!」
俺の渾身の説得は誰の耳にも届かず、戦士達の雄叫びにかき消された。
「頼むから俺の声を聞いてくれっ! 俺を無視しないで話をしてくれよ!」
今の玲も昔の虐められていた玲も、ここにいる戦士達も俺の疑問には何も答えてくれない。
せっかく力を手に入れたのに、これでは生まれ変わる前の俺と何も変わらない。
そんな弱い頃の自分を振り払うように、俺は紅葉を振った。
「俺はっ! 俺は虐められていたあいつの力になりたかったんだ!」
「映る刃は真か偽か。偽の日はそこにあり、双子の太陽が踊る。言霊に宿る技の名は」
紅葉の唄が脳内で響き、新たな技が閃く。
「「剣技、二の唄型! 幻日映し舞!」」
右手には紅の刃を、左手には黒い鞘を持って、二刀流のように扱う攻防一体の技だ。
左手の鞘で敵の攻撃を防ぎ、出来た隙間に右手の刀を振り抜いていく。
敵の懐に飛び込んでは切り抜け、違う獲物を求めて飛びかかる。
鞘と刀の二連撃、舞いでも踊っているかのような軽やかさで、俺は一気に戦士達の間を切り抜けた。
「くふふ。いいぞいいぞ! 力が蘇ってくるのじゃ! 最後の一人も切り伏せよリク!」
妙にハイテンションになっている紅葉に、俺は妙な寒気を感じた。
身を任せると何かに飲み込まれそうになる。そんな感覚に俺は首を振った。
残るは離れた所から弓を構える男だけだ。
男は恐怖のせいか矢を乱射してきたが、俺は全てを切り払った。
紅葉で人を斬ったせいだろうか。体の動きがどんどん軽くなる。力がわき上がるような感覚だ。
「もう良いだろう? お前達じゃ俺には勝てない。負けを認めてレイのことを教えてくれ!」
「黙れ! レイの幼なじみなら、お前も雷光騎団の一員だろ!?」
「だから、なんだよその雷光騎団って!?」
「俺達の自由と生活のためだ! 頼む俺に負けろ!」
「くそっ! だから、お前じゃ勝てないって言ってるだろうが!」
三本の矢を放つと同時に、自棄になったのか男がこちらにつっこんでくる。
その矢を俺が弾くと、踏み込んできた男は至近距離で矢を放ってきた。
「速弓、六の唄型。ブリッツゼロ!」
距離的には避けられない。
自分が生き残るためには矢ごと相手を切り倒すしかなかった。
「一の唄型。陽炎!」
下から振り上げた刀で放たれたばかりの矢を弓ごと断ち切り、返す刀で相手の頭上に刃を振り下ろす。
その一撃で弓の男は白目を剥いて倒れた。
「はぁ……はぁ……」
支部内ではゴロゴロと人が気絶して倒れている。
勝利の達成感の一切わかない戦場を見て、俺は肩で息をしていた。
「お願いだ。話を聞かせてくれ!」
「マスターの回復を優先して逃げます。また拉致されて、全てを奪われてはかないませんから」
同化が解除されたグロウウィルに俺は声をかけたが、彼女達は逃げるように主人を抱えて外に出て行った。
この時、俺は武器が意志を持つ意味を理解した。
これならば魔物戦で倒れても、逃げられる可能性がある。
だが、俺の疑問は何一つ解決されていない。
「くふふ。良い運動になったな。これで少しは力も戻ったというもの」
「紅葉……」
そして、いつの間にか人型に戻っていた紅葉が舌なめずりをして、冷たい笑顔を見せた。
いわゆるゲス顔という笑みでギルドカードを確認している。
「なんじゃなんじゃ。暗い顔をしおって、おかげで剣技も魔剣技も一気に使えるようになったぞ。あの小娘に近づく大きな前進じゃ。ほれ、ギルドランクも一気に……はて? あれだけ倒しても五万三千位じゃと? おかしいのぉ。我の力の蘇り具合からすれば、かなりの手練れだったはず。それこそ、実力的には千位台の序列者もいたはずじゃが」
「本当に知らないんですか? 紅葉さんも雷獣レイのこと」
唯一戦いに参加しなかったシルヴィアが、警戒心に満ちた目で俺達を見て来た。
そんな視線に紅葉は気だるそうに肩をすくめる。
「あぁ、知らん。そやつの武器には興味はあるが、今はリクを強くすることが最優先でな。この先も、その名前を出して戦いを挑まれるのであれば、我にとっては好都合じゃ。あやつとは近い内に雌雄を決する日がくるのでな」
「それなら、レイの名前を出すのは無意味だと思いますよ」
「どういうことじゃ?」
「レイに倒された者は全てを喰らい尽くされます。雷獣が獲物を殺し、ねぐらで待っている手下に弱った獲物を放り込む。そして、グレードと持ち金が尽きるまで手下達になぶり殺されます。さらには、借金や人質を取ることで逆らえないようにするんです。いわば奴隷みたいなもんですね」
「なるほど。道理で実力の割に序列が低い訳じゃな。反抗しようにも雷獣レイに叩き潰され、返り討ちという訳か。合点がいった。ふむ、となると雷獣の名を出すのは得策ではないか」
シルヴィアの説明に紅葉はつまらなそうにため息をついた。
俺は未だに彼女の言葉を信じられないでいる。
あの玲がそんなことをするのか?
虐められていたことを隠し続けて、一人耐えていた人間が徒党を組んで、骨の髄まで人をしゃぶりつくすようなことをするのだろうか?
「シルヴィア、それ本当のことなのか?」
「はい。ここにいた人達はもと千代後半もしくは万台の前半のランカーでした。それが雷獣レイに会った途端、ランクを一気に落として、低ランク実務も受けている訳です」
「マジか……でも、一体なんのために」
「それは……私にも分かりません。そもそも私みたいな低ランカーは相手にされていませんし。雷光騎団も元々は低ランカーの集いだと聞きましたけど、素質があったんでしょうね」
若干の間はあったけど、シルヴィアが嘘をついている様子はない。それに玲も俺にグレードを上げろと言っていた。
そして、先ほどの男達がレイの名前を出した瞬間、逆上してきたことを考えると、状況証拠が積み上がりすぎて否定出来なくなっている。
「リクさん。……教えて下さい。あなたはレイの敵ですか? それとも味方ですか?」
シルヴィアが震える手で、背中から取りだした槍を構えている。
全くの新人が元千台のランカー達をなぎ払ったのだ。
その実力を目の前で見せつけられても尚、彼女は闘志を折っていない。
思った以上に強い少女だ。
「分からない……。でも、あいつが何をやっているのは知りたい」
「質問を変えます。あなたはさっきの人達を襲いたくて襲っていた訳ではないんですよね? またあの人達から地位やお金を奪おうとした訳じゃないんですよね?」
「うん。俺は誰か困っている人達を助けるために、この力を使いたい。だから、俺は君を助けようとしたんだ。それだけは信じて欲しい」
「分かりました……信じます」
シルヴィアが槍をしまってくれて、ようやく俺の言葉が通じた。
「ありがとう。信じてくれたお礼と言ってはなんだけど、今の一戦で行けるところが増えたみたいだ。稼げる場所を教えて貰えないか? 二人で一緒に稼ごうぜ」
「ほ、本気ですか? 私、足手まといですよ? 武器も向けたのに本当に良いんですか?」
「道案内がいないと困るし、さっきのレイのことみたいに禁句が分からないから、頼む」
「は、はい! よろしくお願いします!」
突然パーッと顔を明るくさせたシルヴィアに、俺もホッとしたら自然と顔が緩んだ。
良かった。あのまま戦いになって切り伏せていたら、俺はずっと後悔に苛まれていたかも知れない。
俺が彼女を救ったのは間違っていなかった。
そう思いたかったんだ。
「くふふ。寝首をかこうとしても我がおることを忘れるなよ小娘」
俺とは違い、紅葉が厳しい言葉をシルヴィアにぶつける。
「そんなことしませんよ」
「なら一つだけ教えてやる。どんなに危険な魔境へ我が主を連れて行こうと、我は全ての脅威を断ち切る。そうそう簡単に殺せるとは思わぬことじゃな?」
「あはは……信頼されてませんね」
シルヴィアは紅葉の言葉で困ったように笑っている。
それが何だかいたたまれなくなって、俺は紅葉を止めようとした。
「紅葉。さすがにそれは言い過ぎじゃ」
「リクは甘いのじゃ。一度でも我らに刃を向けた相手じゃぞ。そうそう簡単に信頼せぬ方が良い」
「紅葉が心配してくれるのは嬉しいんだけど、情報は必要だよ」
「べ、別に我は君を心配などしておらぬ! ただ、これ以上雑魚を呼ばれても全くうま味が無いと言うだけじゃ!」
「そうだな。ありがとう」
「ふん! 我は寛大じゃ。主の望みの一つや二つ受け入れてやろう。小娘、リクの寛容さに感謝するが良いぞ」
少しだけ紅葉の扱いが分かってきた気がする。
この刀ロリ娘は口も態度もあまり良くないけど、俺の心配はすごくしてくれているらしい。
決して嫌がらせをしようという訳ではないようだ。
「紅葉のお許しも出たし、よろしくシルヴィア」
「はい。では、案内しますね」
一悶着あったがこうして俺はようやく実務を始めることが出来た。
目的地は西の森の奥深く、死霊がうろつく森だった。