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転生の儀式~後悔と望み~

 小さい頃から俺は弱かった。

 喧嘩には一度も勝ったことがない。

 そんな俺を幼なじみの戸山玲はずっと助けてくれていた。


「りっ君大丈夫?」

「なんで玲ちゃんはいっつも僕のこと助けてくれるの?」

「りっ君のことが好きだからね。それに、あたし正義のヒーローになりたいの」


 男の俺より男っぽい彼女が俺は小さい頃から大好きで、憧れていた。

 そんな幼なじみの戸山玲と同じ高校に入るまで、俺達は一緒に過ごしてきたけど、突然彼女は俺を避けるようになり、学校からも姿を消した。

 事情を彼女のクラスにいる人に聞いたところ、玲は虐められていたそうだ。

 そして、十日前にトラックにはねられたところを見た人がいるという噂を聞いた。死体は見つかっていない。

 だからだろうか、虐められていた彼女がいなくなったところで、隣のクラスは何も変わっていない。

 次に虐められるのが怖くて、表に出せないだけかもしれないけど。

 でも、力になれなかった俺も同罪なのだろうから、彼らを恨むことは出来ない。


「玲……。君はどこにいったんだ?」


 俺は学校の帰り道に、彼女がトラックにはねられたという交差点に行ってみた。

 すると、交差点の端っこに一輪の鮮血のような赤い花が活けてあった。

 その花に吸い寄せられるように、俺はその赤い花の隣にしゃがみ込んだ。

 何となく玲に呼ばれたような気がしたんだ。


「……俺が臆病者じゃなかったら。もし、力があれば君を助けられたのかな?」


 隣のクラスで君が虐められていたのは知っていた。

 でも、助けたくても助けられなかった。

 正義のヒーローに憧れても、現実が怖くていつも足がすくんだ。

 そんな力のない自分が俺は大嫌いだった。


「……俺は見殺しになんかしたくなかったのに」


 俺は悔しさを口にして立ち上がろうとするが、身体に力が入らず倒れてしまった。

 手の指も足の指一本すらも動かない。

 それでも、目と耳は麻痺していないせいで周りの状況がよく見えた。

 俺の前に赤いトラックが走ってきている。


(あぁ……次の人生こそは……強い人になりたいなぁ……。そうしたら、君も助けられただろうな。ごめん。玲)


 トラックにはねられる直前、俺は大事な友人を救えなかった自分の人生と力の無さを深く後悔した。



 痛みも感じず死んだと思ったら、真っ暗な世界に輝く六本の武器が現れた。

 刀、槍、手甲、弓、斧、杖が浮かんでいる。

 驚いたけど声が出ない。喉が完全に潰れたか?

 声が出ずに動けない俺をよそに、なんと武器が喋り始めた。

 なんだこれ? こんな死後の世界は聞いた事がないぞ?


「こやつ、どう思う?」

「俺様か、あんたか、アルプトラか、ペルソナか。この小僧次第じゃないか? 少なくとも一抜けしたエクレールとは合いそうにないから、問題無いだろ」

「そうだねぇ。ねぇ、君」


 武器から聞こえた声の意味は分からなかった。

 一体何と合うと言うのだろう?

 最初の一言は落ち着いた女性の声、二人目は威勢の良い女性の声、三人目は色っぽい女性の声がした。


「君は神様がいたら、次の人生に何を望む?」

(俺は……)


 望みを問われた瞬間、戸山玲の名前が頭をよぎる。

 彼女を助けられなかった後悔が押し寄せ、俺は次の人生でなりたい自分を強く念じた。

 すると、喉の痛みが消え、俺は自分の望みを心のままに叫んだ。


「俺は正義のヒーローになりたい! 傷ついている誰かを助けられるように。弱い自分とさようならするために!」

「ふむ。その願いなら我だな」


 少女の声とともに、俺の前に黒い鞘にしまわれた刀がスーッと近づいて来た。


「リク=キリヤマ。君が望んだのは後悔を断ち切る力」


 少女の呟きで他の武器達が消える。

 そして、代わりに現れたのは赤い刀を掲げる少女だった。

 黒い艶やかな長髪に、眠たそうな表情をしているくせに、目が離せなくなるほど可愛い顔をしている。

 服装は赤い袴をコートのように肩にかけ、ノースリーブの浴衣のような服を着ている変わった子だ。


「我の名前は紅の剣姫、紅葉くれは。さぁ、抜くがよい。君の望みを叶えるために」

「今度こそ、俺は正義のヒーローになるんだ!」


 俺は差し出された刀の柄を掴み思いっきり掴むと、赤い刀が輝き出して、目の前がまばゆい光に包まれた。

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