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Demonic Days  作者: 白川脩
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第1話


第1話

"終わりの始まり"


都会からは離れた場所にある町、和宮町。


その町にある高校、和宮高校の校門の前で、5人の女子生徒達が輪になって話をしていた時、下校時間を知らせるチャイムが鳴り響いた。


「私、今日は早く帰るね」


そう言って、友人達と別れて帰路を歩き始める少女。


彼女は和宮高校2年の赤城晴香。


普段は学校が終わると、友人と何処かへ遊びに行く事が多いが、体調を崩した母親に替わって家事をする為に、今日は早く帰ることにした。


「晴香ぁ~!」


自分を呼ぶ声に気づき後ろを振り返ると、晴香の友人、篠原美咲が走って来た。


「美咲、どうしたの?」


「珍しいじゃん。こんな時間に帰るなんて。何か用事でもあんの?」


美咲が晴香の横に並び、同じペースで歩きながら訊く。


「母さんが体調崩しちゃって。私が家の事やらなきゃいけないの。ほら、家って母子家庭だからさ…」


晴香の両親は5年前に離婚してしまい、現在は祖父母の遺産で暮らしている。


晴香の表情が少し暗くなった事に気付いた美咲は、話を明るくしようと思った。


「い、いや~、晴香はやっぱりお利口さんだねぇ~。お母さんも幸せでしょ~?」


「もう…からかわないでよ。妹に任せられる訳ないし…」


「あ、風香ちゃんって今年で中2だっけ?」


美咲は、晴香の妹である赤城風香と仲が良く、2人揃ってはいつも晴香に下らない悪戯をして遊んでいた。


「えぇ。最近あの子ったら、『中学辞めて働きたい』とか言うから困ってるのよ」


晴香が溜め息混じりにそう言うと、美咲は笑い出した。


「あはは!風香ちゃんらしいかも!」


そんな事を話しながら歩いている内に、2人は別れる場所まで着いた。


美咲が手を振る。


「んじゃ、私こっちだから。また明日ね!」


「うん。また明日」


晴香も軽く手を振り、美咲と別れた。


そこから家への距離は近いので、3分もしない内に到着した。


「ただいま」


晴香が玄関のドアを開けると、リビングから風香が出てきた。


「おかえり。早くご飯作ってよ」


「はいはい…。母さんの調子はどう?」


晴香が靴を脱ぎながら風香に訊く。


「あぁ…それなんだけど、母さん入院だってさ」


風香が自分の髪を指に巻きつけて遊びながら言うと、晴香が風香を見つめた。


「入院って…何のこと?」


「知らないよ…『母さんの事は心配しないで、2人でしばらく頑張ってね』って言ってた」


「そう…重い病気じゃなきゃいいけど…」




その夜…


「(あれ…?何で出ないんだろう。寝ちゃったのかな?)」


晴香が母親に電話をかけるが、寝ているのか電話には出なかった。しかし、時計は8時50分を指している。


「(いつもは11時ぐらいに寝るのになぁ…。明日、かけ直そう)」



晴香がリビングに行くと、風香がつまらなさそうにテレビを見ていた。


晴香に気づくと、テレビを指差して言う。


「"謎のウィルス感染者相次ぐ"だってさ。…この症状、母さんのと似てない?」


風香に言われてテレビを見ると、謎のウィルスの感染症状と、そのウィルスが正体不明という事を放送していた。


晴香は感染症状を見て、風香に共感する。


「確かに似てるわね…。母さん、大丈夫かな…」


晴香は、風香に母親が電話に出なかった事を言わなかった。


当然、心配してしまうからである。


「母さん、何て言ってた?」


「えっと…。『大丈夫』って言ってたよ」


風香は安心したように自分の部屋に戻っていった。


晴香はソファーに座り、テレビを眺める。


「(母さん、大丈夫だよね…)」


翌朝…


部屋に鳴り響く目覚まし時計を止め、体を起こしてカーテンを開ける。


空は曇りだった。


「(うわ…。今日、雨かな…)」


制服に着替え、風香を起こしに彼女の部屋へ行く。


風香は寝相が大変悪く、掛け布団を蹴飛ばし、頭がベッドから飛び出て今にも落ちそうだった。


「はぁ…。風香、朝よ」


晴香がカーテンを開けながら言うと、風香はだるそうに目を開けた。


「んぁ…。おはよう…お姉ちゃん」


「はい、おはよう。ご飯作って待ってるからね。」


晴香は階段を降りてリビングに行き、いつも通り見る気は無いがテレビをつけてニュースを映す。


しかし、今日のニュースは晴香の目を惹きつけた。


ニュースの内容は、謎のウィルスに感染した人々が、次々と他人に危害を与えているという物であった。


そして現場の映像では、母親が入院している病院、和宮病院が封鎖されている場面が映し出されていた。


「ここは確か…母さんの!?」


更にその後、テレビに映った言葉を見て、頭が真っ白になる。


「死者…多数…」


その時、制服に着替えた風香がリビングに入ってきて、晴香の様子に気づく。


「…どうしたの?」


「ふ…風香…。これ…」


風香がテレビを見ると、一瞬で彼女の様子が変わった。


「何よこれ…。どういうこと!?」


普段静かな風香が、大きな声で晴香に訊く。


「私にもわからないわよ!」


晴香も軽いパニック状態に陥っていて、つい大きな声を立ててしまう。


その時、テレビ画面に緊急速報が表示された。


『緊急速報です。封鎖された病院内から、感染者が数人脱走しました。尚、ウィルスは経口感染、及び血液感染する事が判明しました。感染者と遭遇した場合、すぐに離れてください。そして、和宮町の住民の方々は、迅速に避難してください。繰り返します…』


その時、晴香の携帯が鳴る。美咲からの着信だった。


『もしもし晴香!?テレビ見てる!?』


「み…見てるけど…。何が起きてるの?」


美咲の息は荒く、どうやら走りながら電話しているようだった。


『何がどうなってんのかはわかんないけど、とりあえずアンタの家行くから、ちょっと待ってて!』


「あ、ちょっと…!」


晴香が何かを言う前に美咲は電話を切ってしまった。


「今の美咲?何て言ってたの?」


風香が訊いてくる。


「とりあえず家に来るって…」


晴香がそう言った瞬間、玄関のチャイムが鳴る。2人は顔を見合わせ、玄関へ駆けつける。


すぐに鍵を開けると、美咲が勢いよくドアを開けて入ってきた。


「晴香!風香ちゃん!すぐに避難するわよ!」


「避難って…どこに?」


晴香が訊くと、美咲は答えるよりも先に2人を引っ張って外に出た。


「ウチらの学校!あそこに人が集まってるらしいから!」


「わ…わかった!」


晴香と美咲が学校に向かおうとするが、風香だけ、進行方向と逆の方向を見つめていた。


「風香どうしたの!早く行くわよ!」


「お…お姉ちゃん…。あれ…」


風香が指差した方向には、人の形はしているが、皮膚は爛れ、とても生きた人間とは思えない物がフラついた足取りでこちらに向かってきていた。


「ひっ…。何よあれ…」


「逃げるわよ!晴香、早く!」


3人は走り出すが、街の様子がおかしい事にすぐ気づいた。


風香が言葉にする。


「ねぇお姉ちゃん…さっきから誰もいない…」


「きっと、みんな学校にいるのよ…」


晴香は自分に言い聞かせるように呟き、足を速めた。


第1話 終




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