第八話 〜抱きしめたい&パンドラの箱〜
さぁ真相はいかに!?
身長155センチぐらい。
顔は美少年、美少女どちらともとれる、整った顔付き。髪はサラサラしていて、ただ伸ばしている感じ。前髪は目にかかっている。頭には白い帽子、服装はこれまた白いウインドブレイカーの上下。荷物は白いエナメルバッグとラケットケース。全体的に白を基調とした格好。男でも女でも可愛いと呼ばれる雰囲気だ。
で男なのか?女なのか?わからん!
刹那は悩んでいた。
どうする!オレ!男女の判別が出来ないくらい目の視力が落ちたのか!?普段からもっとブルーベリー食べておくべきだった〜!
何か案はないのか?う〜ん……………。そうだ!名前だ名前。『太郎』とか『一郎』みたいな名前だったらすぐに判断出来るぜ!
「まぁ落ち着いて。まず自己紹介をしよう。オレは一年二組の渚刹那。よろしく。」
「同じ一年だったんだ!良かった!ボクは一年五組の早野美琴。美しい琴って書いて『ミコト』っていうんだ!」
一人称は『ボク』。名前は『ミコト』。わからん!もっと区別出来る様な名前をつけろよ!ともかく、もっとややこしくなってしまった………。
「どうしたの?渚君。なになやんでるの?」
「い、いや、何でもない。ひとまずオレ、着替えてくるから。」
「荷物は?」
「部室に置けばイイじゃない…………あ!そうか!」何も悩む必要なんてないじゃないか!こうすればイイじゃないか!
まず『オレについてこい』と言って男子部室の前に連れていく。
↓
オレは何気無く部室に入る。
↓
美琴が入ってからオレは着替え始める。(入らなかったら女の子)
↓
はずかしがったりしたら女の子。反応無しは男。
もし女の子だったら『女子は隣』と言えばOK!
完璧だ!自分の才能が恐いぜ!
「なにか思いついたの?」
「あぁ。我ながらイイ作戦をね!」
「え!どんな?それって後衛?前衛?」
「いや、まぁ。秘密だ。ライバルになるやつにそう易々と教えられない。(テニスの作戦じゃないんだけどなぁ)」
「え〜。ボク、女子にも球のスピード負ける様なヤツなんだよ!」
「女子にも負けるのか!?情けないなぁ…………ってオイ!」
コイツ、男だったのか!オレの作戦が………。オレが瞬時に思いついた作戦が…………。こう無惨に崩れるとは。ショックだ………。泣きそうだ。
「???」
美琴がオレの方を見てキョトンとしている。オレがこんな状況になる理由は迷宮入りだろう。
「あの、どうかした?」
美琴がオレを見上げて話し掛けた。
〜身長が20センチ違うので自然とこうなる〜
その姿はとても可愛くて、とても男とは思えなかった。
だが、男だと知ったオレは、キュンとはこなかった。(当たり前だが)
「いや、どうもない。作戦はいつか話してやるからひとまず部室に行くぞ。」
「うん!」
いつかオレが『男の言葉使い』を教えなきゃな。
そう考えたオレと美琴の初めての出会いだった。
〜部室にて〜
「まだ先輩達は来ていないみたいだな。」
オレは着替えながら呟いた。
「そうみたいだね。」
美琴は特にオレの着替えを気にせずに答えた。(ま、男だからな。多分)
しばらく経つと、美琴は部室の探索を始めた。
「あ!見て見て!マンガがたくさんあるよ!『ドラゴ○ボール』や『デス○ート』、『カ○タ』スゴーイ!『Over-○rive』もある!」
『あ、ホラ!ラケットやシューズもたくさんある!もらっちゃおうかなぁ。でも、どちらとも今使ってるヤツ気に入ってるからイイや!』
うるさい。美琴はさっきから機関銃の様に喋りまくっている。最初は返事はしていたが後から面倒になったのでやめた。それなのにまだ喋っている。社交的だな、コイツは。
結局、オレが着替え終えるまでの三分間ずっと言葉をはっしていた。
ようやく着替え終えたぜ。(今日も体操服)ラケットも持ったし、良し!
「じゃ美琴行くか!」
「うん!………あ」
「ん?どうした?」
「コレ。」
美琴が指さしたのは、この高校のソフトテニス部の成績だった。
「スゴイね。平成になってずっと県大会出場してるみたいだね。」
「あぁ、そうだな。」
オレも成績の記録を見て驚いた。日付だけではなく、選手の名前、主にしていた練習方法も書いてあった。
「あ、見て。平成三年全国大会出場だって!でもここが、全盛期みたい。」
確かにここが全盛期みたいだ。そのあとも県大会には出場しているのだが、それ以上の成績はない。
「一昨年で県大会出場も止まってる。残念だなぁ。最後の出場ペアは『渚 隆治』と『城崎 守』か。スゴイ!この人達、一年生の時から県大会出場してる!一年からレギュラーだったなんてとても上手かったんだろうなぁ。」
オレは心から祈っていた。『渚 隆治』がオレの兄貴だと気付かないことを。
「ん?『渚』って…………」
気付かれたか…………。
「ねぇ渚くん。もしかしてこの人、渚くんのお兄ちゃん?」
オレは黙ってうなずいた。
「へぇーそうなんだ!驚きだなぁ。きっと弟の君も上手いんだろうね!」
「比べないでくれないか?オレ中一の時もそう言われて傷ついたんだ。」
そう。中一の時もこう言われた。そして勝手に期待され、勝手に失望された。『しょせん弟だな。兄貴は上手いけど、弟は普通だな。』などと言われた。オレは悔しかった。ただ兄貴よりも下手というだけで馬鹿にされて悔しかった。だからオレはがむしゃらに練習をして、部の一番手になった。でも兄貴の様に県大会にはいけなかった。それどころか、地区大会さえ勝ち抜けなかった…………このことはオレの中のパンドラの箱だな。
「ごめん。お兄ちゃんはお兄ちゃん、渚くんは渚くんだよね。ボクが馬鹿でごめんなさい。」
美琴はシュンとなって謝った。前髪と帽子のせいでさだかではないが、涙目になっているみたいだ。
オレは慌てた。
「ちょっ、これから気をつけてくれればいいから!そう落ち込むなよ!」
何だかオレがいじめたみたいじゃねぇか。
「ホント?許してくれるの渚くん。」
「あぁ、許すよ。今日会ったばっかりなんだからその位目を瞑らないと。あと、オレのこと刹那って呼んでくれ。その方が嬉しいから。」
「わかったよ!刹那!じゃあ、ボクのことは美琴って呼んでね!」
この時、美琴に笑顔が戻った。
ヤッパ、こういうキャラには笑顔が似合うな。
「よし!じゃ先輩達がくるまで乱打するか!美琴!」
「オッケー!刹那!」
二人ともラケットを手に持ってコートに向かった。
オレ達の間に友情が生まれたみたいだった。
なんてね!
ホントは逆にしたかったんですけど、男の方が頻繁にですのでこっちにしました。