第十六話 〜???の考え〜
『ねぇ!ソフトテニス部に入んない?』
今日の昼休みにたずねられた言葉だった。その時は断わった。
『人数が少ないから廃部寸前だろ?それはちょっと……。』
正直な気持ちはどうだったんだろうか。
中学の時は部活に入らずに過ごしてきた。
小遣いを使ってまでスポーツを極めようとは思わなかった。
友達と遊ぶ時に使ったり、ゲームのために使った方がいいと思った。
友達と一緒にいるときが楽しかった。だけど、その友達とは受験により離れてしまった。会おうと思えば会えるのだが、機会が減ったのは確かだ。新しい友達をつくらなければならない。まずは、話しかけるのが一番なのだが、話題が無いので途切れるのがオチだ。どうすればいいんだ、と思っていると話し声が聞こえてきた。
『なぁ、・・君だっけ?お前はなに部に入るんだ?』
『ん〜、美術部かな。中学の時もだったし、商店街で似顔絵屋やってるから。』
俺が思うに、こいつらは初対面だ。なんとなく話し方がぎこちない気がする。だけど、こいつらは早くも友達になったみたいだった。やっぱり、初対面のヤツと話すには部活のことがいいのか?まぁ、勉強のこととかよりはいいだろう。でも、高校でも部活に入る気はなかった。理由はさっき言った通り。
だけど、部活に入ると友達が出来るのなら入部しても悪くはない。あるていど友達が出来て、遊びグループが出来れば退部すればいい。
よし、決まりだ。
中学の時と違って、なんか友達作りにくい。
なんで?
どの部活に入ったら話題になるか。文化系はパスだな。辞めにくいし。
かといって、野球とかサッカーは、練習がきついだろう。それに、話題性もないし。
マイナーな部活に入るか。今年から硬式テニス部が出来たからそこにするか?
たくさん入部しそうだから、友達いっぱい出来そうだな。テニスでもするか?かっこよさそうだし・・・・・・
『ねぇ!ソフトテニス部に入んない?』
急に、昼休み聞いたセリフを思いだした。
たしか、廃部寸前とかなんとかいって断わったっけな。
『ねぇ!ソフトテニス部に入んない?』
廃部寸前か・・・それもいいんじゃないのか?かなりの話題性だし。人数が少なくて、ダラダラ出来るかもしれない。
『ねぇ!ソフトテニス部に入んない?』
それに、勧誘してきたヤツはなんかすぐ友達になれそうだ。
テニスじゃなく、ソフトテニスにするか。中学の時、ギャーギャー騒ぎながらやったことがあるていどだけど、けっこう楽しかった。やるなら、やっぱ楽しいほうがいいはずだ。めんどくさいけど、ソフトテニス部に入部しよう。そして、話しの中心になってやる!
それじゃ、近々いってみるか。
もしかしたら、オレ、超天才で誰よりも上手くなったらどうしよう。辞めにくくなる・・・・・・な〜んてね。そんなことはないよな。
早く友達を作って、話したり、遊んだりしたいぜ。
「ねぇ、・・君は美術部に入るんだよね。楽しい?」
「楽しいぜ。なんか。それより君はなに部?」
「あっ、オレ?オレはソフトテニス部だよ。あの潰れそうな!」