救いの手4
「突然の訪問、失礼いたします。しかし王様に急ぎお願いしたいことがありまして、こうして参った次第でございます」
周りにいた家臣達が口々に叫ぶ。
「何と無礼な」
「こんな者の言うことなど、聞く必要はございません」
「さっさと部屋へ戻れ。我々は忙しいのだ」
家臣達を片手で制し、南の王は大きくうなずく。
「いいだろう。お前の言い分を聞こう。その願いとやらを申してみよ」
「ありがとうございます」
クロフは頭を低く垂れた。
「実は、明日の魔女の処刑の件でお願いがあって参ったのです。明日の魔女の処刑は、取りやめていただけないでしょうか?」
周囲にいた家臣や兵士達がざわめいた。
女神官は冷淡な瞳でことの成り行きを見守っている。
「なぜだ? お前も知っての通り、あの魔女が処刑されるのは当然の処罰だと思うが」
クロフは顔を上げ、赤金色の瞳で王をひたと見据える。
「はい、わたしもそれに異論はございません。しかしあの魔女は太陽の女神の神託に示された方。人の手で処刑をすれば、この地にどんな災いを招くかも知れません。そこであの魔女の処罰は、わたし達神殿に任せてもらえないでしょうか?」
南の王は傍らにいた女神官に目配せをする。
女神官はクロフの前に進み出た。
「今回の件は、神殿の大導師様にもご相談したのですが、大導師様はこちらで処罰するのが妥当であると判断されました。たった今、早馬で報告が来たところです」
女神官は静かに言い放つ。
「しかし」
クロフはなおも食い下がる。
「しかし、それにしては処刑が早急すぎるのではないですか? もっと詳しく罪状を調べる必要が」
「その必要はない」
家臣の一人が口を挟む。
「死んでいった者のためにも、農地を追われた農民のためにも、また国民すべてのためにも。魔女の処刑は早急に執り行うべきだ」
別の家臣が後を続ける。
「民達の悲しみ、苦しみ、苦しみを取り除くためにも、魔女の処刑は必要なのだ」