表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/16

救いの手3

 クロフは赤金色の瞳には、荒野を焼き尽くすほどの激しい炎が渦巻いている。

「それは」

 フィエルナ姫はうつむいたまま、クロフの目から視線をそらす。

「何をしている」

 鋭い一言が部屋に響き、辺りは再び静まり返る。

 クロフがそちらに視線を向けると、部屋の扉の前にロキウスが杖を手に立っている。

 戸口に立つロキウスは、クロフとフィエルナ姫を順に見比べる。

 二人のいる方に早足で駆け寄り、ひたすら縮こまっているフィエルナ姫を見て取ると、射るような目付きでクロフをにらみつける。

「文句なら、俺が聞こう。姫に八つ当たりするな」

 フィエルナ姫は軽く会釈すると、戸口の方に小走りに駆けていった。

 フィエルナ姫が扉の向こうに消えたのを確認して、ロキウスは切り出した。

「お前が魔女のことで言い分があるのはわかる。だからあらかじめ、姫に話さないよう頼んでおいたのだ。本当ならば魔女の処刑が済むまで、お前をこの部屋から出さない約束だったのだが」

 ロキウスは冷ややかな目差しでクロフを見つめる。

「わかっているのか? 彼女は太陽の女神の神託にある人だぞ。彼女を処刑したら、どんな神罰が下るか」

 ロキウスはクロフの怒りをものともせず、氷のように冷たく言い放つ。

「だが、あの女は多くの人々を殺し、苦しめ、広大な土地を腐らせた魔女ではないか。そんな女に、太陽の女神の恩寵があるものか。それに処刑しろと命令したのは、おれ達神殿側の人間ではない。それを決めたのは、ここに暮らす国民達だ」

 クロフは愕然とした。

 頭の片隅ではわかっていたことだったが、いざ実際に目の前で言われると、強い気持ちが揺らいだ。

 クロフは唇をかみしめ、何も言わず部屋を走り出た。

 クロフは廊下を走り、国王の部屋へと向かう。

 ディリーアの処刑をやめさせたい一心で、兵士が止めるのも聞かず、部屋へ飛び込んだ。

 部屋には南の王と数名の家臣、周りを固める兵士達、そしてクロフの世話をしてくれた女神官がいた。

 彼らは話を中断し、息を切らせ部屋に飛び込んできたクロフを一斉に見つめた。

「騒々しい。部屋で静養していたはずのお前が、どうしてこんなところにいる?」

 一番奥の椅子に座っていた南の王があごに手を当てる。

 クロフは慌てて礼の姿勢を取る。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ