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1ページ  作者: ぴーせる
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期末勉強のページ

 

 体育祭のときに「俺はインテリ~」だとか書いてたけど、あれやっぱり訂正するわ。


 俺はインテリでも何でもない、ただの一生徒です。


 生言ってすみませんでした。


 っていうか、何で勉強ってあんなにめんどくさいの?


 正直、出来るやつの気がしれないね。


 きっと脳みその根本からいろいろ違うんだよ。


 構造とか、素材とか。


 出来るやつの頭はパソコンみたいにごちゃごちゃしてるに違いない。


 で、俺のは丸くて可愛いの。


 丸くて可愛いのが、こんな小難しい微分積分なんて出来るわけないよな。


 しょうがないしょうがない。




 でも、そうは言ってられないやつがいるのよ。


 あいつ。


 あいつさ、思いっきり良い大学目指してるんだよね。


 だって学級委員やって点稼ぎするようなやつだよ?


 勉強を怠るわけがない。


 しかもさ、勉強会と称して俺までそれに誘ってきやがんの。


 参加人数総勢二名。


 素晴らしいね。


 コメントも思いつかないぐらい素晴らしいね。


 っていうか、最近あいつと二人きりのことが多いのは気のせいかな?


 気のせいだと良いな。




 で、今日はその勉強会の第三回目をしてきたわけ。


 第三回目っていうとさ、だいたい中だるみじゃん?


 一回目、二回目はなんとか「進路のために!」的な目標を掲げて頑張ってたみたいだけど、今日は酷かった。


 だって、あいつの家に行くなり「ゲームしようぜ!」だよ?


 思わず楽しんじゃったけどさ。




 あ、そうそう。


 今日やったゲームはレースのゲームなんだけど、あれって思ってた以上に面白いよね。


 自分でやるのも面白いんだけど、見てるだけでも面白いの。


 だってさ、あいつコントローラー握りながら、カーブで体を傾けてるんだよ?


 左に曲がるときは左に傾いて、右に曲がると右に傾くの。


 本当笑っちゃう。


 おかしいったらありゃしない。


 たかがゲームじゃん。


 体重移動関係ないじゃん。


 なのにあいつときたら、性懲りもなくカーブのたびに体を右往左往傾けてるの。


 可愛いよね。




 でさ、後ろで笑ってたら「お前もやってみろよ」って口をへの字に曲げてコントローラー渡してくるわけよ。


 あれは相当不機嫌だったね。


 そもそも勉強せずに何やってんだとか思ったんだけど、挑戦ってのは受けてナンボじゃん?


 俺だって元は男なわけだから、逃げるなんて言葉は辞書に記載されてないわけよ。


 そんでその挑戦を受けてたったわけなんだけど、あいつって性格ねちっこいのな。


 俺がカーブ曲がるたびに「お前も傾いてるぞ」ってゲラゲラ笑ってきやがんの。


 ふざけんなって。


 傾いてなんかねえよ。




 俺としてはまったく傾いてるつもりなんかないわけ。


 なのにあいつはカーブのたびにゲラゲラ笑ってくるんだよ。


 間違いない、あれは嘘だね。


 ああやって嘘言って、自分のヘマをおあいこにしようって魂胆に違いない。


 めげずに俺は頑張ったよ。


 最終的にハイスコア出してやって、ぎゃふんと言わせてやった。


 あれは爽快だったね。


 もうやめらんない。


 またあいつんちでハイスコア出してやろう。




 でもさ、俺的にはそれで終わっても良かったわけ。


 オチとして、勉強してない~! ってわめきながら期末テストを受けるのも甘んじようと思ってたわけ。


 なのに、あいつときたらそのあとに勉強始めやがんの。


 さっきまでゲームしてたのは何?


 勉強諦めたんじゃないの?


 そう聞いたんだけどさ、あいつ、元々最初はゲームをする気だったって言い出したんだよね。


 もう俺は確信したよ。


 これはゲームに負けた憂さ晴らしだって。




 まあ憂さ晴らしにサッカーをしない分だけ偉いとは思うよ?


 しかもちゃんと勉強をするなんて、褒めてあげてもいい。


 だけどさ、悔しいなら素直に言おうよ。


 あれだ、ツンデレなんだな、あいつは。


 俺に負けて悔しい気持ちに素直になれないツンデレなんだな、うん。


 仕方ないなぁ、もう。


 まあ俺としても勉強しないとお母さんがうるさいから困るわけで、手伝うって名目で一緒にやってあげたわけ。


 俺ってば偉いよね。


 褒めてもらって当然だよね。




 でも、あいつ俺にこうぬかしやがったんだよ。


 息抜き終わったから帰っていいよ、って。


 死ね、って素で思ったね。


 何か、俺はお前の息抜き道具だったってわけか?


 ふざけるのも大概にしやがれ木偶の坊、って話。


 まあ普段の俺ならここで怒って本当に帰ったことだろう。


 でも今の俺は気付いちゃってるんだよね、あいつがツンデレだってことに。


 まったく、居てほしいならほしいって素直に言えばいいのに。


 ムカついた分だけ頭を引っぱたいて済ませてあげたけど、俺じゃなかったら絶対帰ってたな。


 あとでお礼の品でももらっておこう。




 でさ、勉強会だから、二人で向かい合って勉強するわけね。


 一つのテーブルしかなくて、しかも小さいから床に座って膝をつき合わせるの。


 やっぱ座ると身長差が縮むもんだねぇ。


 久々にあいつの顔を近くで見れた気がするよ。


 何せあいつは超長身。


 たぶん俺の成長エネルギーってやつを吸い取ってやがんだ。


 俺から吸い取った分だけ伸びたあいつの顔は、いっつも遥か高みでさ、今日みたいに座って向かい合わなきゃこんな近くに顔を見れることもないなぁって。


 ……あれ?


 座って身長差が縮んだってことは、もしかして俺の足って短いのかな?


 いやいや、まさか。


 きっとあいつの足が長いだけだよ。


 うん、そうに違いない。




 でね、俺は思ったわけよ。


 あいつ、ひげ伸びたなぁって。


 俺って高校一年のときに女になったからさ、ひげがそう生えてないうちに生えなくなっちゃったわけ。


 だから憧れっていうのかなぁ。


 正直あんま手入れされてなかったあいつの無精ひげが、ちょっとだけ格好良く見えちゃったんだよね。


 対して俺のあごは、時たまにきびが出来るぐらいのつるっつる。


 ひげも薄くて柔らかい産毛しか生えてこないの。


 周りの女子からは羨ましがられてるんだけど、俺としてはなんだかなぁ。


 いや、何もひげが生えてほしいってわけじゃないよ。


 ただ生えたらどんな感じなのかなぁって思っただけで。




 それにしても、あいつは真面目に勉強してたなぁ。


 俺なんてあいつのひげをじっと見てただけなのに、あいつはずっとうつむいてガリガリ勉強してんの。


 インテグラル~とか、ディーワイディーエックス~とか、数学を勉強してたみたいだけど、俺には外国語にしか聞こえなかった。


 わけ分かんないよ、数学って。


 でね、あまりにつまんないからあいつのあごひげを触ってみたの。


 手ですくい上げるような感じに。


 そしたらさ、めっちゃジョリジョリするのね、あれ。


 かりあげにした髪の毛のジョリジョリ感を、少し弱くしたぐらいのジョリジョリ感。


 ちょっと気持ち悪くて鳥肌立っちゃった。


 もちろん急に触ったからには、あいつに「何してんの?」って聞かれたんだけど、「ひげに憧れて」って言うの、何か恥ずかしい気がしてさ。


 適当に「ひげが芝生みたい」って答えたら、「ならあごでサッカーしようぜ!」って言いながらあごひげを俺の頬にジョリジョリしてきやがった。


 もうマジで気持ち悪い。


 痛がゆいし、あいつの鼻息臭いし、最悪だったよ。




 で、結局俺はあいつのあごひげから逃げ帰ってきちゃった。


 ちゃんと勉強しなきゃまずいかなぁ。


 まさかあいつにテストで負けるとは思わないけど、あの様子だとどうなることやら。


 負けたら悔しいから、ちょっとだけ勉強しとこ。


 あ、そうだ。


 テストでもぎゃふんと言わせてやろう。


 で、あいつに泣きながら今までの非礼を詫びてもらうの。


 やばいよ、それ。


 想像しただけで楽しくなってきた。


 よっし、思いっきり頑張っちゃおー!

 

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