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1ページ  作者: ぴーせる
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練習試合のページ

 

 今日はうちの高校でサッカー部の試合があった。


 他校のサッカー部を呼んで、いわゆる交流がてらの練習ってやつ。


 で、自称エースストライカーのあいつもスタメン入り。


 そういえば、スタメンってスターティングメンバーの略なんだって。


 これは今メールであいつから聞いた豆知識。


 で、そのスタメンさまは、これがまた試合の中だとなかなか格好良いのな。


 自称してるだけあって、成功回数は少ないけどバンバンシュート打つの。


 あれはもうシュート製造機だね、間違いない。


 きっと自分に来たボール全てをゴールに向けるためだけに製造された人間なんだよ。




 でさ、そのバカバカシュートばっかり打つあいつも、試合が終わってみると尋常じゃないくらい汗をかいてるわけ。


 そりゃ残暑厳しいこの季節にあれだけ動けば汗もかくだろうけど、そんなレベルじゃないの。


 あれはたぶん体に含まれてる水分の半分は放出してたね。


 だらっだらってどころじゃない。


 どばっどば。


 そこでサッカー部マネージャーたる俺がタオルを差し出したわけなんだけど、やっぱり汗製造機は違うね。


 結構大きいタオルだったはずなのに、すぐ全部びっちゃびちゃに濡れちゃうの。


 全部で三枚ぐらいタオル使ってようやく収まった。


 まったく、いちいちタオルを取りに走る俺の身にもなれって話。


 いや、俺よりもあいつの方がよっぽど走ってたわけなんだけど。




 もちろん試合はうちの高校が勝利。


 相手が弱小校だからってのもあるけど、あんなにボンボンシュート打ってたんだから、勝てなかったら逆にあれだよなって感じ。


 いやあ、にしてもあいつ可愛いね。


 自分ではエースストライカーとか言ってはばからないくせに、部活のメンバーから「さすが!」とか言われると照れてやがんの。


 似合わないったらありゃしない。


 でもさ、照れてる姿見て「きもっ」って言っただけなのに人の頭ぶつことなくない?


 疲れてるせいかそんなに痛くなかったけど、俺にだけなんか厳しいの。


 ずるいわー。




 で、その帰り道、他のサッカー部たちと別れて俺たち二人で帰ってたわけよ。


 そう、二人っきり。


 俺としては修学旅行のぎくしゃくぶりがぶり返すかなぁって思ってたんだけど、あいつは試合に勝って嬉しかったみたい。


 無口どころか、頼んでもない話を、俺だってマネージャーとして見てたはずなのに、自分の活躍をいちいちハイライトしながら説明してきやがんの。


 あのときはこの角度でパスがきたからうまくシュートできた、とか。


 やっぱあそこは俺のフォローがあったから得点に繋がった、とか。


 それがまた楽しそうな顔してさ、こっちの相槌もままならないぐらいべらべら話してきて。




 俺としては無口なあいつよりはマシだと思うんだけど、問題なのがあいつの汗臭さ。


 身振り手振りを混ぜて雄弁に語るもんだから、その身振り手振りに合わせて汗臭さがこっちにまで漂ってくるわけよ。


 ホントに臭い。


 マジくっさい。


 くさやもビックリな臭さに、俺の鼻がおかしくなるかと思った。


 で、空気の読める俺はエイトフォーをシューってあいつにかけてあげたわけ。


 ほら、臭いって気になるじゃん?


 夏場が過ぎたとはいってもまだまだ暑い季節だしさ、俺はいつも常備してるのよ。


 それに、あいつとしても臭いを振りまくのは良くないだろうって思って、俺としては十分すぎるぐらいの優しさなわけ。




 でも、そしたらあいつ、エイトフォーが喉に入ったらしくって、げほげほっ思いっきりむせてんの。


 超だっせー。


 そんでむせたかと思ったら、今度は俺のエイトフォーを奪って俺にシュッシュかけてきやがったの、あいつ。


 くせえのはお前もだ! って。


 いやあ最悪だったね。


 こっちの優しさをむげにしてその扱いか! って感じ。


 つうか、元は男だったけど今はれっきとした女なわけよ、俺は。


 そんな俺に対してくせえとは何事だって話なのね。


 デリカシーがないっていうかなんていうか。




 そっからはもうエイトフォー合戦だったよ。


 俺も予備で持ってたもう一個のエイトフォーを取り出して応戦。


 年甲斐もなく道端で走り回ってエイトフォーかけ合う姿って、今思うと相当恥ずかしかったなぁ。


 あいつが電柱に隠れるから、俺が回りこんでシュー。


 回りこんだ俺を、さらに回りこんであいつが回りこんでシュー。


 最終的にただの追いかけっこっぽくなっちゃって、俺らはガキか! って感じ。


 でもさ、やっぱサッカー部のエースたるあいつの足はめっちゃ早いのな。


 追いかけっこモードになった瞬間、あいつの俊足がフル発揮だよ。


 とてもじゃないけど追いつける気がしないね。


 無理むり。


 挙句にバーカバーカって言いながら、あいつとっとと家に帰りやがったし。


 マジでガキかと思うね。


 って、そういえばあのエイトフォー返してもらってない……。


 あれって意外と高いからなぁ。


 今のうちに「返して」ってメール送っとこ。




 そんなわけで今はこうして家にいるんだけど、服はさすがに着替えたね。


 暑い中で走り回ったんだから汗もかいたんだけど、それ以上にエイトフォー臭い。


 やっぱ適量が一番だよ。


 ガキみたいに走り回ってたくさんかけまくったら、そりゃあもうすっごく臭い。


 尋常じゃないね。


 鼻がよじれすぎて折れるかと思ったよ。


 あいつも今ごろエイトフォー臭いユニフォームを洗ってるんだろうなぁ。




 俺の人のこと言えないけど、あいつも相当ガキ臭いからね。


 試合で疲れてたはずなのに、よくあんなにはしゃげるもんだよ。


 俺なんてもうくたくた。


 こうして書いてる右手も力が入んなくって、今にもペン落としそうだ。


 ああ、もうだいぶ眠くなってきた。


 それだけ疲れがたまっちゃったんだ。


 今日はもう、ちゃっちゃとシャワー浴びて、あいつにおやすみメール送って寝ることにしよう。


 それじゃあ、おやすみなさい。

 

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