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1ページ  作者: ぴーせる
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手紙

 

 こうやって手紙を書くのは初めてです。


 すごく緊張しちゃってるから、字が震えちゃってても気にしないでね。




 えっと、君の告白のことだよね。


 ほら三日前、俺と一緒に帰ってるときにしてくれたあの告白。


 俺と別れる直前に引き止めて言ってくるんだもん。


 ずるいよ。


 卑怯だよ。


 あれから、俺がどれだけ悩んだのか分かってるの?


 いや、分かってないね。


 分かってないからあんなタイミングで告白してくるんだ。


 最低だよ。


 この手紙読み終わったら、ちゃんと謝りにきてね。


 約束だから。


 破ったらタダじゃおかないからな。




 それにさ、なんでホワイトデーに告白するわけ?


 普通はクッキーじゃん。


 おいしいおいしいクッキーじゃん。


 楽しみにしてたんだよ?


 俺が最近そういうの好きなこと知ってるよね?


 前に言ったもんね?


 なのに、この仕打ちはあんまりだよ。


 あれだけ人のチョコパイ食べておいて、仇で返すつもり?


 今度でいいから、絶対にクッキーおごってよ。


 駅前においしいって噂のお菓子屋できたのも、前に言ったよね?


 そこ限定だから。


 あの店のクッキーじゃなきゃ許さないから。


 いいね?




 それと、この際だからついでに書くけど、お前、人のこと今まで散々からかいすぎ。


 なに? やっぱりSなの?


 人をいじめてそんなに楽しいの?


 六月の雨のやつ、あれは特に酷かった!


 なんで女の子を濡らすわけ?


 下着が透けちゃって、ものすっごく恥ずかしかったんだよ?


 なのにお前は人を見てゲラゲラ笑うしさ……人としてのモラルを疑うよ。


 最低。


 結局、教科書の弁償もしてくれなかったじゃん。


 あれからずっとぶよぶよの教科書使ってたんだよ?


 信じられる?


 開くたびに硬くなった紙がパリパリいってさ、変な染みができて文字が読みづらいしさ。


 先生に教科書読め、って当てられたとき、毎回テンパらなくちゃいけなかったんだからね。




 あと、エイトフォーだよ。


 俺のエイトフォー。


 結構前の、部活の練習試合の帰りのやつ。


 覚えてるよね?


 忘れた、なんて言わせないよ?


 俺のを勝手に持って帰ってそのままじゃん。


 あれもまだ弁償してもらってないんだからさ。


 早く返してよ。


 もしくは新しいの買ってよ。


 八百円近くしたんだからね。


 バイトでいったらほぼ一時間分だよ。


 俺のために一時間働けって話。




 あ、そうそう、お前の傘。


 それも忘れてた。


 大丈夫、捨ててないから。


 ちゃんと家に置いてあるって。


 また今度返す。


 っていうかお前から取りにきやがれ。




 あ、でも今度部屋に入るときにはちゃんとノックしろよ?


 うちのお母さんに勝手に上げてもらうなよ?


 下着見られたとき、超恥ずかしかったんだから!


 分かってる?


 下着だよ、下着。


 パンツ!


 あのときの謝罪もまだ終わってないし!


 本当、いい加減にしてよね。




 って、違うよね。


 そういうことじゃないんだよね。


 返事だよ、返事。


 うん、分かってるの。


 こんな文句を言うために手紙を書いてるわけじゃないもんね。


 君への返事を書くために手紙書いてるんだもんね。


 でもさ、こうやって改めてどうこう書くっていうのもさ……。


 なんていうか、違うんだよね。


 うん。


 そういうのはさ、ほら、お前がやったみたいにさ、直接会って正面切ってした方がいいと思うんだよ。


 手紙で書いて渡すだけ、なんてお門違いっていうかさ。


 そうなんだよ!


 うん、そうに違いない!


 こういうのは、ちゃんと会って話をしなくちゃいけないの。




 分かる?


 だからさ、これを読んだらすぐにダッシュでうちまで来ること。


 いい?


 ダッシュだからね?


 ダッシュ、猛ダッシュ。


 遅かったら来年のチョコあげないから!


 来なかったらサッカー部のマネージャー辞めてやるから!


 まさかサッカー部のエースが足で後れを取るわけないよね。


 だから、今から俺を追いかけて!


 予定通りなら、この手紙は放課後に渡して、俺は走って帰ってるはずだから。


 俺に追いついたらご褒美あげる。


 なんだと思う?


 予想が当たってたら、もう一つご褒美あげる。


 パーフェクトなら二つもあげちゃうんだよ?


 すごくない?


 走りながら、頑張って考えてね。


 ご褒美、俺も考えてあげるから。




 じゃあ、待ってる。


 ばいばい。

 

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