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1ページ  作者: ぴーせる
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はじめのページ

作品完成日:2009/02/19

 

 俺はある日、突然女になってしまった。


 理由とか、そんなものはまったく知らない。


 医者とかにいろいろ説明された気もするけど、当時は自分のことで手一杯だったせいで覚えてないのだ。


 それは高校一年のときのこと。


 授業中に胸の奥からチリチリと焼けるような熱さを感じ、それが次第に全身に転移したかと思うと意識を失ってた。


 もうね、あのときは本当に死ぬかと思ったよ。


 お花畑まではさすがに見えなかったけどさ、走馬灯は経験した。


 やばいね。


 ネガフィルムが上から下に流れていくように、カタカタカタ……って自分の記憶が流れていくの。


 さも自分は映画の観客って感じでさ。


 今はなんとか生きてるからこうして笑い話だけど、それで死んじゃってたら洒落にもならなかったよ。


 ま、女になったことも、それどころじゃなかったんだけどね。




 でもこういうことって、普通はもっといろいろトラブルあるもんじゃないの?


 マスコミが大騒ぎとかさ、原因究明に政府が極力を尽くすとか。


 唯一あったっていったら、うちの家計に医療費が響いたことぐらい。


 周りも周りで意外と早く順応しやがってさ。


 俺を差し置いて、やつらと言ったらないよ、マジで。


 やれ、女の子はどう? だの。


 やれ、生理はきた? だの。


 挙句に乳をまさぐり揉まれた日にはカチンとくる騒ぎじゃ収まらなかったね。


 うちの先生も初めて見たって言ってたよ。


 同級生の男子を再起不能にまで追い込んだ女子は。


 まあおかげさまで、今はもう普通に生活出来るところまできたんだけど。




 ちなみに今は高校二年。


 女になってから一年ってところ。


 この頃になると迫り来る受験にプレッシャーを感じてはいるんだけど、良いとこ目指しているわけじゃないし、まだまだ遊べる季節なんだよね。


 先生は「二年のうちから受験の準備を始めれば」とかどうのこうの言ってくるけど、まあ関係ない感じ。


 それに、一年も経てば女としての生活にも慣れてくるんだよね。


 下着もスカートも何のその。


 そこら辺の女とそう変わらないぐらいにまですっかり馴染んできた。


 だからこそ女としての生活も楽しめるようになったし、せっかく楽しめるようになったんだから、それを満喫しなきゃ損だよ、損。


 もったいないって。


 実質的に、人生の半分以上損しちゃうことになるよ。




 でもね、そんないろいろなことに慣れてきた俺にも、一部例外があるんだよね。


 ――あいつ。


 あいつを見るとさ、何だか不思議な気分になるの。


 効果音で言うと、むふぁあってして、ほわってなって、ちゅんってなるの。


 俺にも分かんない。


 でもさ、その気持ちを詳しく書こうとすると、どうしてだかのた打ち回るほどに悶えちゃうんだよね。


 うああああってなっちゃうの。


 枕に顔を埋めて手足をバタバタさせたい感じっていうのかな。


 そんな気持ちに襲われたときには、最近ゲーセンで取った大きなスティッチのぬいぐるみをぎゅうと抱き締めて落ち着かせてるんだけど、これがまた時間掛かるんだよね。


 長いときで一時間。


 ずっと悶々うなされちゃう。


 やっぱさ、そんなリスクを負ってまでこんな日記に書く必要はないと思うんだ。


 胸に秘めておこう、って感じだね。




 まあ書き出しとしてはこんなもんかな?


 こんなの書くなんて生まれて初めてだからよく分かんない。


 人に見られるようなものでもなし、これでいっか。


 三日坊主で終わらなきゃいいけど。

 

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