第56話 激突! 鉄の結束と、青い狼の思い。
昭和39年(1964年)、晩夏。
相鉄本社の前は、怒号と赤旗に包まれていた。
「京急の買収反対!」「我々の職場を守れ!」
相鉄労働組合による、大規模なストライキ突入寸前の集会だ。
その先頭に立ち、ハンドマイクを握っているのは、企画課長・高見恭平だ。
「皆さん! 聞いてくれ!
あの赤い侵略者(五代)は、俺たちの線路を奪い、標準軌に変え、京急の手足として使おうとしている!
そんなことを許せば、相鉄の『自主独立』は死ぬ!
俺たちは砂利屋だ! だが、誇り高き砂利屋だ!!」
「そうだー!」「帰れー!」
組合員のボルテージは最高潮に達していた。
高見は、本社ビルの窓から見下ろす五代を睨みつけた。
(……見たか五代。これが相鉄の「現場力」だ。
株券をいくら持っていても、俺たちが電車を動かさなきゃ、あんたは何もできないんだ!)
* * *
【数時間後・団交会場】
殺伐とした空気の中、五代がたった一人で乗り込んできた。
組合幹部たちが野次を飛ばす中、五代は涼しい顔で高見の前に座った。
「……元気だな、高見課長。
これだけの人数を束ねるとは、大した統率力だ」
「お世辞はいい。……要求は一つだ。
『経営介入の中止』。それ以外は認めん」
高見は机を叩いた。
五代はニヤリと笑った。
「断る。
……だが、貴様らの言い分も分かった。
『誇り高き砂利屋』か。美しい言葉だ」
五代は立ち上がり、組合員たちを見渡した。
「だがな、お前たち。
一生、砂利と田舎の百姓だけを運んで終わる気か?
……俺が提案しているのは、お前たちを**『東京へ直通するエリート鉄道員』**にしてやるという話だぞ」
場がざわめく。
「横浜から都心へ一本で行ける。
相鉄沿線に巨大なニュータウンを作り、何十万という客を運ぶ。
……俺の傘下に入れば、給料も倍にしてやる。
それでも『誇り』とやらを選んで、ジリ貧のまま死ぬか?」
組合員たちの目が揺らいだ。
「給料倍……」「都心直通……」
高見が叫ぶ。
「騙されるな! こいつは口先だけの詐欺師だ!
そんな夢物語、できるわけが……」
「できるさ。お前がいればな」
五代は、高見の目を真っ直ぐに見つめた。
「高見。お前が引いていた図面、見たぞ。
『横浜駅ビル構想』『いずみ野線計画』……。
素晴らしい。俺が考えていたことと同じだ」
高見が息を呑む。
(……こいつ、いつの間に俺の机を……!?)
「だが、今の相鉄(役員たち)じゃ実現できん。金も度胸もないからな。
……俺と組めば、金は出す。政治力も使う。
お前の妄想を、全て現実にしてやる」
五代は手を差し出した。
「どうだ高見。
俺の『部下』になれとは言わん。
……俺を使って、お前の夢を叶えてみろ」
高見の心臓が早鐘を打った。
悔しいが……この男の言う通りだ。
今の腐った上層部の下では、自分の企画書はゴミ箱行きだ。
だが、この五代という劇薬を使えば……。
高見は、組合員たちを振り返った。彼らはもう、期待の眼差しで高見を見ている。
(……くそっ。ここで断れば、俺が組合員の将来を潰すことになるのか)
高見は、真っ赤な顔で五代の手を払いのけた。
「……ふん! 勘違いするなよ!」
高見は腕組みをして、そっぽを向いた。
「俺はあんたの部下になる気なんてさらさらない!
だが……!
組合員の生活を守るのが、委員長の役目だ。
給料倍増と、プロジェクトの全権を俺に任せるなら……話を聞いてやらんこともない!」
五代が破顔した。
「ハハハ! 素直じゃないな。
いいだろう。全権委任だ。好きに暴れろ」
「う、うるさい!
いいか、俺は相鉄のためにやるんだ!
あんたのためじゃないからな! 絶対にだぞ!!」
会場に、安堵の溜息と、五代の笑い声が響いた。
こうして、相鉄最強の労働組合は、五代の軍門に下った。
いや、高見という**「最強のツンデレ猛獣」**が、鎖に繋がれた瞬間だった。
次回、第57話。
「屈辱の軍門と、標準軌への突貫工事」。
「やるからには完璧にやるんだよ!」
五代の命令を受け、渋々(しかしノリノリで)標準軌化工事の指揮を執る高見。
そこで彼は、京急の技術力の高さに圧倒され、少しずつ「デレ(尊敬)」が芽生え始める。
会場の温度下げとくよ(^q^)
リモコンポチポチポチ
温度が下がんないよ(^q^)




