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第231話 :泥濘のカルテル 〜極道の算盤、狂気の牙〜

千葉・幕張。

リーダーの拳がやんちゃな若頭の顔面を捉えた直後、待機所は凄惨な暴力の坩堝るつぼと化した。

「……ッ!! このクソガキどもがァァァッ!! 殺せ!! 息の根止めねえ程度に手足の骨全部折って、タコ部屋に放り込めェッ!!」

鼻血を吹き出しながら激怒した若頭の号令で、数十人のヤクザが一斉に若者たちに襲い掛かった。

本職の極道による、徹底的な『フィジカル・ディスカッション』。木刀が唸りを上げ、鉄パイプが肉を打ち据える鈍い音が幕張の夜に響き渡る。

数分後、若者たちは全員アスファルトに這いつくばらされ、血と泥にまみれていた。

「……ハァ、ハァ……。どうだ、目が覚めたかクソガキ。2億の借金、きっちり体で払ってもらうからな」

若頭が革靴でリーダーの頭を踏みつけ、勝利を宣言した——その時だった。

「……ひひッ……」

リーダーは、折れた歯の隙間から血の泡を吹きながら、不気味に笑った。

そして、顔面を踏みつけている若頭の足首に、狂犬のようにガブッと噛みついたのだ。

「ギャアアアッ!? て、テメェ何しやがる!!」

「……殺せ……ッ! 殺して、俺たちを成田へ行かせろ……! あの裏切り者のサブと、権藤のジジイを……俺たちの手で八つ裂きに……!!」

他の若者たちも同様だった。腕の骨を折られながらも、ヤクザのズボンの裾を掴み、「成田……」「カネを返せ……」「ブッ殺す……」と、焦点の定まらない目でうわ言のように呪詛を吐き続けている。

借金の恐怖で支配し、奴隷としてこき使う。それがやんちゃ方々の『足し算引きビジネスモデル』だった。

しかし、若者たちの頭の中には、すでに「命」や「痛み」、そして「借金」という概念すら存在していなかった。あるのは、裏切り者への純度100%の殺意だけ。

若頭は、足首から血を流しながら、薄ら寒い悪寒に襲われた。

(……こ、こいつら……人間じゃねえ。話の通じねえ、ただのバケモノだ……!)

***

数日後。幕張の夜は、ヤクザたちにとって終わりのない地獄スターリングラードと化していた。

若者たちはやんちゃな方々のタコ部屋に入るどころか、幕張の廃材置き場や下水道に潜伏し、完全なゲリラ戦を展開し始めたのだ。

彼らの目的は、幕張の利権ではない。**【成田へ向かうための『足(やんちゃな車)』と『武器』の強奪】**である。

深夜、見張りで立っていたやんちゃな方々の足元に、突然マンホールの隙間から火炎瓶が投げ込まれる。

「うわぁぁぁッ!? 敵襲だ!! 敵襲!!」

パトロールに出たベンツが、暗闇から飛び出してきた盗難ダンプに真横から突っ込まれ、大破する。中から這い出してきたヤクザを、血走った目の若者たちが鉄パイプでメッタ打ちにして、武器を奪って暗闇へ消えていく。

プレハブの仮設事務所で、若頭は胃薬を水で流し込みながら、組長に泣きついていた。

「……オヤジ。また若い衆が4人、病院送りになりました。車も2台オシャカです。あいつら、メシも食ってないはずなのに、夜中になるとゾンビみたいに湧いて出てきやがる……!」

「……クソがッ! 1円の足し算(利益)にもならねえのに、毎日毎日、治療費と車の修理代(引き算)ばっかり飛んでいきやがる! やんちゃなケンカじゃねえぞこんなモン!!」

暴力のプロフェッショナルが、素人の狂気に精神と資金をゴリゴリと削られていく。

恐怖による支配が通じない相手との戦争は、やんちゃな方々にとって最もコスパの悪い『大赤字の泥沼』でしかなかった。

***

同じ時刻。品川・京急本社の高層階。

幕張で起きている「利益なき消耗戦」の報告書を読みながら、五代はクククと喉を鳴らして笑った。

「……素晴らしいね。あいつらの『計算式ビジネス』は、失うもののない『狂気』の前ではただの紙切れに過ぎない。やんちゃな方々は今、自分たちが手を出してはいけない『本物の狂犬』の尾を踏んでしまったことに気づき、震え上がっている頃だろう」

五代は、冷え切った目で幕張の夜景を見下ろした。

「さあ、もう少しだ。極道の心が完全にへし折れ、あの焦土から逃げ出すまで……。我々は安全な場所で、極上の喜劇(殺し合い)を見学させてもらおうか」

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