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第223話 :幕張急襲! 国家権力とヤクザの蹂躙

千葉・幕張。海風が吹き荒れる広大な埋立地の一角にある、薄汚れた廃倉庫。

そこが、得体の知れない地場の過激派たちが、拉致した京成のトップを監禁しているアジトだった。

「……おい、ジジイ。さっさと裏帳簿の原本のありかを吐けよ」

パイプ椅子に縛り付けられた京成社長に対し、過激派の男が鉄パイプで床を叩きながら脅しをかけていた。

しかし、社長は口の端から血を流しながらも、一切の表情を変えず、ただ冷たく男たちを見下返している。

「……ちっ、気味の悪いジジイだ。だが、まあいい」

別の男が、薄ら笑いを浮かべてタバコに火をつけた。

「千葉のサツはどうせ動けねぇ。成田闘争で俺たちにビビり散らかしてる腰抜け共だからな。時間はたっぷりある。ゆっくりと口を割らせて……」

——その時だった。

ドドドドドドドドドッ!!!!!

突如、廃倉庫の外から、地鳴りのような重低音が響き渡った。

ただの車のエンジン音ではない。数十台の大型車両が、一斉にアジトを包囲する音だ。

「な、なんだ!? サツか!? 千葉県警が来やがったのか!?」

窓から外を覗き込んだ見張りの男が、信じられないものを見たように悲鳴を上げた。

「ち、違う!! パトカーじゃない!……青と白の、大型輸送バスだ! しかも、盾を持った奴らが……何百人も降りてきやがるッ!!」

「バスだと……? まさか」

リーダー格の男が顔面を蒼白にさせた瞬間。

ドガァァァァンッ!!!

アジトの分厚い鉄扉が、重機によって紙切れのように吹き飛ばされた。

もうもうと立ち込める粉塵と、連続して投げ込まれる閃光弾フラッシュバンの強烈な光と音。

「ぐあぁッ!!」「目が、目がァッ!!」

視力と聴力を奪われ、床に転げ回る過激派たちの前に、地獄の使者たちが雪崩れ込んできた。

彼らが装備していたのは、千葉県警のそれではない。

大楯にハッキリと印字された**『警視庁(TOKYO)』**の金文字。

日本最強の武闘派集団——東京の機動隊が、管轄という絶対のルールを札束と権力で踏み越え、千葉の泥沼へ完全武装でカチ込んできたのだ。

「ば、馬鹿なッ! なんで警視庁がここに!? ここは千葉だぞ!! 越権行為だ!! 法律違反だぞッ!!」

過激派の一人が鉄パイプを振り回して叫ぶが、機動隊員たちは一切の言葉を発しない。

彼らに与えられているのは、大蔵省の桜田から下された「国家プロジェクトを邪魔するテロリストを、徹底的に排除せよ」という絶対命令だけである。

「無抵抗の市民になんてことを……ッ、ぎゃあぁぁぁッ!!」

ジュラルミンの大楯が容赦なく男たちの顔面を叩き割り、特殊警棒が彼らの膝の関節を次々と砕いていく。

そこに「話し合い」や「警告」など存在しない。ただひたすらに、システム化された圧倒的な『国家の暴力』が、泥沼のテロリストたちを物理的にすり潰していく。

「ヒィィッ! た、助けてくれ……ッ!」

先ほどまでイキっていた過激派たちは、あまりの暴力の次元の違いに泣き叫びながら、次々と手錠をかけられ、青と白のバス——『優しいお兄さんたちが待つ、檻付きのバカンス(刑務所)』へと、文字通りゴミのように放り込まれていった。

***

「……終わったね」

アジトから少し離れた高台に停められた、黒塗りのベンツ。

その後部座席で、五代は葉巻の煙を細く吐き出しながら、双眼鏡から目を離した。

隣に座る成田は、ガタガタと震えが止まらなかった。

彼が自分の足で泥を這い、血を流して戦ってきた『成田の泥沼(過激派)』が……五代という男が電話を一本かけただけで、東京の警察によって、たったの数十分で跡形もなく蹂躙されてしまったのだ。

「これが、大人の喧嘩だよ、成田くん」

五代は、震える若き英雄に向かって、反吐が出るほど優しい笑顔を向けた。

「インフラという巨大な利権を動かすには、正義や情熱だけでは足りない。時には、法律の壁すら札束と野心(官僚)でぶち破る、本物の『悪』が必要になる。……君がくれた『アイドルの極秘データ』の代金としては、十分すぎる掃除だっただろう?」

成田は何も言えなかった。

アジトからは、無傷で救出された社長が、機動隊に守られながら姿を現していた。

社長の命は救われた。

だが、その代償として、成田は「京成の魂(新車両のデータ)」を悪魔に売り渡し、国家権力という絶対的な暴力を目の当たりにしてしまった。

五代の言葉通り、成田はこの瞬間、本当の意味で「インフラの底なしの闇」へと足を踏み入れたのである。

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