第20話 ランドマークの祝祭と、70キロの壁(140km/hへの渇望)
台風の猛威を無傷で乗り越えた『横浜ランドマークタワー』は、秋晴れの下でグランドオープンを迎えた。
高さ296メートル(史実超え)。
日本一の摩天楼を見上げるために、連日数十万人の群衆が押し寄せていた。
オフィスは外資系などの超一流企業で満室。ホテルは連日満員。
低層階のモールでは、伊勢佐木町の老舗と海外ブランドが軒を連ね、飛ぶように商品が売れている。
記念式典の壇上。
大原社長が誇らしげにスピーチをしている横で、俺(五代)はシャンパンを煽っていた。
「……完璧だ。これぞ大京急コンツェルンの城だ」
隣に立つ技術部長の加賀谷が、感無量といった表情で呟く。
「専務。これで借金も完済、向こう10年は安泰ですね」
「安泰?」
俺は苦笑した。
「加賀谷、お前には聞こえないか? ……悲鳴が」
「え?」
俺は、会場の隅にいた三崎の商店街組合長、**源蔵**を手招きした。
彼は、祝賀ムードの中で一人、浮かない顔をしていた。
「……五代さん。ランドマークの完成はめでたいよ。横浜はすげえ賑わいだ」
源蔵は、悔しそうに言った。
「だがな、その分、三崎のドーム客が減っちまうかもしれねえ。……横浜が面白すぎて、みんな三崎まで足を延ばさずに帰っちまう」
「それに、ドームに来てくれた客もそうだ」
源蔵は続けた。
「『帰りが遠い』って言って、試合が終わるとすぐに駅へダッシュだ。……あと15分。電車があと15分余裕があれば、客は三崎でシメの雑炊を食って、土産も買っていけるんだ」
俺は加賀谷に向き直った。
「聞いたか? これが現実だ」
みなとみらいの成功は、同時に**「横浜一極集中」**のリスクも孕んでいる。
三崎(約70キロ先)というコンテンツを生かすには、物理的な距離を「時間」で縮めるしかない。
「現在、京急の最高速度は120km/h。……これでも国鉄特急並みだが、客のニーズには追いついていない」
俺は、窓の外を走る赤い電車を指差した。
「遅いんだよ、あれじゃ」
俺は手帳を開き、新しいプロジェクト名を書き込んだ。
【 Operation : 140km/h 】
「か、加賀谷部長……」
加賀谷が絶句した。
「140キロって……新幹線並みの領域ですよ!? 今の線路規格じゃ、カーブで脱線します! ブレーキも間に合いません!」
「だから、**『魔改造』**するんだ」
俺は淡々と言った。
「みなとみらいで稼いだ金、全部つぎ込むぞ。
線路のカント(傾き)をきつくする。
ロングレール化で振動を消す。
そして、未来の信号システム**『C-ATS(デジタル信号)』**を導入して、車間距離を極限まで詰める」
「……正気ですか?」
「大真面目だ。……源蔵さん、約束しますよ」
俺は源蔵の肩を叩いた。
「品川から三崎まで、60分を切らせます。……客に『近い』と言わせてみせる」
源蔵の目が輝いた。
「へへっ……。頼むぜ、京急の若大将。待ってるからな」
式典の拍手喝采の裏で、俺たちの新たな戦いは始まっていた。
横浜という「城」はできた。
次は、その城と領土(三崎・浦賀)を結ぶ「道」を、世界最強の高速道路に変える。
だが、その前に片付けなきゃならない問題が山積みだ。
みなとみらい周辺の道路渋滞、地下鉄乗り入れ、そして……川崎の公害問題。
「加賀谷、休む暇はないぞ。……まずは足元(横浜・川崎)を固めつつ、線路を磨き上げるんだ」
大京急帝国、第二章の幕開けである。
赤い彗星は、音速の夢を見る。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
ついに、横浜に「ランドマークタワー」が建ちました。
500億の借金から始まった五代の逆襲、まずは不動産とホテルで「財閥」としての基盤が固まりました。
しかし、京急の本懐はあくまで「鉄道」です。
どんなに立派なビルを建てても、電車が遅ければ客は満足しません。
次回、いよいよ**「京急本線・140km/h化計画」**が始動します。
昭和の技術で、どうやって新幹線並みの過密・高速運転を実現するのか?
五代と技術屋たちの「魔改造」にご期待ください!
「ビル完成おめでとう!」「もっと速く走れ!」と思っていただけましたら、
下の**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にして応援していただけると、執筆速度も140km/hになります!
次回更新:2月21日(土)
お楽しみに!




