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将棋と投資セミナー-2

「いやいや、もう行っちゃってるなら僕の説得意味ないじゃん」

「もし先生が俺の行動を肯定してくれたら、俺も自分を正当化できるじゃないですか。自分の行為を他人に正当化して欲しいときは誰にだってあるんですよ」

僕はため息をつく。

「それでいくら払ったのさ」

「とりあえず、最初は二万円でした。参加自体は無料だったんですけど、セミナーの途中で教材を買わないといけなくなって、、、俺も怪しいとは思ったんですけどね、実際に話を聞いてみたらこれがなかなで」

「それは随分と払わされたね、、、」大学生にとっての二万は大きいだろう。僕にとっても大きいが、、、

「そうなんですよ。けど買った教材の中身を見たら、少し調べれば分かるようなことばっかり載っていて」

「その上でまだ肯定を求めるのか、、、」

「人は弱い生き物ですからね、、、」またしても主語が大きい。

「そもそもどこで勧誘されたの?」

「普通に大学のキャンパス内で勧誘されましたよ」

「やっぱりそういうのあるんだね」僕の陰気な大学生活には怪しげな話すら入り込む余地がなかった。僕の青春は、それほどまでに孤独で完成された物だったのだ。

「クラスメイトの友達ぐらいの子から誘われたりした感じ?」

「いや、全然知らない、いかにもマルチとかやってそうな意識高めな雰囲気の人です」

「あー短髪でおでこ出してて、ジャケット着てる感じの人ね」

「清潔感って出しすぎると怪しくなってきますよね」

「あまりにも嘘っぽい感じがするからかな。そんな清潔な人がいるわけないもんね」

「人間なんて、みんなうんこしますからね」

「別にそう言う意味で言ってるんじゃないよ」

「けどまあ、その清潔感を出しすぎて逆に怪しげな島田って人に勧誘されたんですよ」

「なんて言われたの?」

「人生変えてみない?って」

「くー、物凄くダサいね」僕は謎の羞恥心を覚えてしまう。

「ああ言う人たちのインスタってものすごくダサいですからね。マルチとパパ活がブロックしたくなるアカウントの双璧ですからね。両雄が並び立ってます」竹内くんがうんうんと頷く。

「マルチとパパ活をやっていることを、他の人に知られたいってどういう感情なんだろう」隠したい物ではないのだろうか。

「現代科学が解き明かせない謎ですね。まあ承認欲求じゃないですかね」

「承認欲求が捻じ曲がりすぎて、逆方向に行っちゃってるよ。彼らに与えられるのは拒絶だけだよ。承認してくれるのなんて、同じ界隈の子だけでしょ」

「同じ界隈でも削りあってるんじゃないですか。知らないですけど」

「そうかな。パパ活はパパの太さとかで憎しみと虚栄と嫉妬が渦巻く、後宮の世界みたいになってそうだけど、マルチは俺たち仲間だぜみたいな感じじゃん。いつまでも青春を引きずるマイルドヤンキーみたいな感じじゃないの」

「マイルドヤンキーは地元っていう太い繋がりがありますけどね。マルチの俺ら仲間だぜは、彼らが出してる清潔感と同じで胡散臭さがあるんですよね。ヤンキーはアミーゴのピンチに駆けつけてくれそうですけど、マルチの奴らにはそもそもアミーゴなんていないですよ」

「そこまでマルチの悪口言えるのに、よく怪しげな投資セミナーなんて言ったね」

「俺もだんだん腹立ってきました。ちょっと払った金返してもらいたいですね」

「えー、それは難しそうだし、面倒臭そうだよ」

「先生も一緒に行きましょう。というか、ここに呼んでも良いですか?」竹内くんはとんでもない提案をしてくる。

「絶対に嫌だから。ここに呼ぶなんて論外オブ論外だよ。喫茶店でも行けば良いじゃないか」

「何言ってるんですか。喫茶店は奴らのホームですよ。ただでさえ不利なのに、奴らのフィールドに上がり込むことはないですよ。地の利ぐらいはこっち側にないと」

「こっち側ってやめてよ。僕はそこに入ってないからね」

「心配しないでください。俺が付いてますから」

「これほど根拠のない自信も珍しいね」

竹内くんはもうスマホを操作し始めている。彼のことなら本当に僕の家に呼びかねない。僕は諦めてため息をついた。

「分かったよ。二人で喫茶店に行こう」


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