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大晦日とキャバ嬢

「これが大晦日ね」ウタさんはこたつに入りながら、年越しそばを啜っている。

「小学生が合法的に夜更かしを許されている日ですね」

「夜更かしする小学生捕まるね?」

「捕まりますね。捕まった後に特別施設に送られて、規則正しい生活リズムを叩き込まれます。それが体に染み付いたら出てこられます」僕は平然と嘘をつく。

「田中は捕まったことあるの?」

「僕はないですよ。早寝早起きが得意なので。竹内くんはよく捕まっていたらしいですね」竹内くんは千葉の実家に帰省中だ。

「ウタさんの星では大晦日とかないんですか?」

「あるある。私の母星は休日が少なくて年末年始しか長期休みがないね」

「休日少ないんですね。なんか意外でした」勝手にユートピア的なところを想像していたのだが。

ウタさんはため息をついた。

「少ないよ。週は六日あるんだけど、そのうちの五日は労働ね。これは最低限働かなければいけない日数で、法律で決められてるね。働くのが好きな人は休日も副業してるよ」

「それは大変ですね」日本よりハードではないか。

「技術が発展しても、全然労働時間は減らないね。職がなくなっても、次々に新しい職が出てくるね。昔では想像できなかった仕事がたくさんあるよ」

 ウタさんの星と地球とでは、技術レベルに差はあるが似たようなことが起こっているのかもしれない。どれだけ技術が発達しても、人類は楽になっていない。空いた時間に他の仕事が入ってくるだけだ。

「ウタさんは何の仕事をしてたんですか?」

「私は老化防止薬を作ってたね。それを飲めば体の老化を止めることができるね」別の星のエピソードは、さらっと衝撃的な話が出てくる。

「え、じゃあウタさんの星の人って老けないんですか?」

「薬を買える人はね。この薬高いからお金持ちしか飲めないね。それが貧富の格差として非常に問題になっているね」

「そんだけ技術が発展しても貧富の格差は無くならないんですね」

「技術が発展しても人の本質は変わらないからね」ウタさんは悲しそうに言った。

せっかくの大晦日なのに少し暗い雰囲気になってしまった。

「どうですか?蕎麦うまいですか?」僕は話を変えた。

「こないだ食べた立ち食い蕎麦の方が美味しかったね。天ぷらも乗ってないし」

「人の家の食べ物に文句を付けないでください」ウタさんの本来の性格なのか竹内くんの影響なのか、ウタさんはどんどん礼儀というものを失っていっている。もっとまともな日本人に関わってもらわないと、ウタさんの人格形成に影響が出てしまう。

「けど、田中と食べられるから美味しいね」飴と鞭がすごい。

「ウタさん、母性でキャバ嬢とかやってました?」

「男から巻き上げた金でホスト行くの楽しー!」

「すごい嫌なキャバ嬢じゃないですか。もしも自分が貢いでるキャバ嬢がそのスタイルだったら泣きます」

「田中は女に理想を抱きすぎね。そんなんだから童貞なんだよ」ウタさんは箸を僕に向け、無慈悲な一言を突き刺した。

「なんで僕が童貞って知っているんですか!」僕は完全に動揺を隠せず、童貞の見本のような反応をしてしまう。

「田中が思っているより、田中はチェリーボーイ丸出しね。ソーリーチェリー」ウタさんは目を細めて馬鹿にしたようにこちらを見てくる。

「僕は女の人になんか全然興味ないよ風の雰囲気を出してたつもりなんですけど」知的でクールで物憂げであり、教室の窓から外を見ている男の子の雰囲気を出しているつもりだったが。

「いやー全然出てないね。童貞がそんな雰囲気出しても、カモフラージュしているのがバレバレね。根っこの部分から童貞臭が滲み出てるよ」ウタさんは肩をすくめた。

「なんでそんな酷いこと言うんですか。確かに僕は童貞ですよ。けど他の童貞に比べたら、僕はあとちょっとな気がしますけどね。少しのボタンの欠け間違えで童貞になっているだけで、そこさえハマれば人生のフィーバータイムを謳歌できるんですけどね!」僕は早口で捲し立てた。

「けど私は今の田中が好きよ」僕はウタさんの言葉にガックリきてしまう。飴と鞭がすごい。

「ウタさんってやっぱりキャバ嬢やってました?」

「弟が学校に行くために、、、」

「童貞が好きなキャバ嬢じゃないですか」僕は思わず笑ってしまった。

ウタさんが突然テレビを指差した。

「田中、それどころじゃないよ。いつの間にか新年を迎えてるね」僕はテレビを見た。時刻は〇時を過ぎていて、初詣に訪れている人たちの映像が流れていた。この寒い深夜に行列を作る気持ちにはなれない。一年の初めが寝不足からのスタートというのも、あまり嬉しいものではない。なので僕は、深夜の初詣に行ったことがないし、行きたいとも思わない。

「本当だ。それでは、明けましておめでとうございます」

「今年もよろしくね。まず初めに、今から初詣行くね」

「絶対嫌です」

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