15話 練習
月曜日を迎え、学校はクラスマッチの話で持ちきりだった。放課後になり、涼は茜に声を掛ける。
「俺、用事あるから先に帰ってていいよ」
「用事?」
すると、涼のスマホに着信がなる。姉の麗子だった。
「体育館に来なさい。私に頼み事あるんでしょ?」
「分かった、今から行くよ。」
茜も一緒に付いていくことに。体育館に着き、早速、涼は麗子の元へ行くが、茜はどうしていいか分からずにいると、副キャプテンである梓が優しく声をかけ、梓と一緒に2人の様子を見守ることにした。
麗子はウォーミングアップをしていた。
涼はなんとなく何をやろうとするか察しがついた。
「俺も軽く、体動かしたいんだけど...」
麗子はそれを許可しない。
「そんなの待てない。今から10点マッチ、あんたが勝ったら、手貸してあげる♪」
「はっ?そんなのずりぃーだろ!」
グダグダ言ってる間に麗子はダンクを決める。
「本気で戦わないと負けるわよ。残り8点で私の勝ちだからね♪」
こいつ、ナメやがって!後悔させてやる!!
10対4 涼の負けで終わった。
副キャプテンである梓が2人のもとにスポーツドリンクを1つずつ持っていく。
麗子はスポーツドリンクを飲みながら、息を整える。
やっぱり、ギリギリの勝負だったわね..
でも、これで狙い通りだわ!
涼も少し悔しそうにして、スポーツドリンクを飲む。
前半は体が重くて、全然動けなかったけど、今ので、大体は取り戻した!今の状態なら勝てるかもしれない!!
麗子はスポーツドリンクを飲み終え、涼の分もまとめて返そうと思い、涼に声を掛ける。
「涼、それちょうだい。まとめて返すから」
涼は麗子を少し睨みつける。
「もう一回、戦え!次なら勝てる!」
麗子は呆れつつ、涼に冷静になるよう促す。
「バカね、ホントに...やるわけないでしょ...勝負は一回限りだし、協力はしてあげるわ、ちょっとは私のことも信用しなさいよね」
「....」
何、考えんてんだ?麗子は...
麗子はさっと涼の持っていたスポーツドリンクを取ってまとめて梓のところへ持っていく。
「梓、今日、早めに切り上げそうだから、彼女さんもよろしくね♪」
「うん、分かった」
「あっ...はい」
麗子は再び涼の元へ戻る。
「今からチーム集めるわよ♪」
「チーム?」
「そう♪勝つためのチーム♪付いて来なさい♪」
涼は麗子の考えが何一つ理解できないまま、麗子の後ろを付いていく。
この勝負は男子バスケ部員もいる中で行われていた。男子バスケ部キャプテンである隼人、また副キャプテン、女子副キャプテンである梓は涼のプレーを見ていて、涼には間違いなく才能がある事に気付いた。
隼人はあの時、自分に勝負を挑んで来たのは感情の高ぶりではなく、本気で勝つつもりで言ってきたんだと、確信した。
間違いなく、才能はあるな、こいつ....後半はブランクを全く感じさせない...もし勝負が続いていれば恐らく、麗子の方が負けていた..へぇ〜ガチなんだ、あいつ...おもしろくなりそうだ♪
麗子は鼻歌を歌いながら、上機嫌のまま男子バスケ部のところへ向かっていく。
涼はまさかとは思いつつ、念の為、確かめる。
「おい!これって何だよ!?まさか、男子バスケ部からメンバー集めるんじゃないんだろうな!?分かってんのかよ!?俺、隼人と勝負するんだぞ!?」
「大丈夫だって♪私に任せときなさいって♪」
ホントに意味が分かんねぇ...
涼は隼人と目が合い、男子バスケ部に近づくのを躊躇するが、麗子が涼の手を引っ張って、男子部員の前に堂々と立つ。そして、隼人に宣戦布告する。
「隼人!あんた、うちら兄弟にちょっかい出したこと、後悔させてやるから、覚悟しなよ!
私と涼であんたらチームぶっ壊してやんよ!!」
突然のヤンキー口調に周りは驚く。涼自身も初めて聞くような口調でその迫力で少しビビる。
それに対して隼人だけは冷静だった。
「プフッ、下手な挑発はやめときなよ。そんな大口、叩いて負けた時に後悔すんのはあんたらなんだからさ♪」
「ホントに嫌いだわ...あんたみたいな奴は...」
「俺は麗子ちゃん、前から割とタイプだったから、ショックだなぁ♪プフッ」
涼は麗子が挑発しに来ただけとは思わなかったため、真意を確かめる。
「おい、結局、何がしたいんだよ!?」
「挑発はただやりたかっただけだから、安心してね♪」
「はっ?」
隼人は疑問視するように麗子を見つめる。
何が目的なんだ?...
麗子は一度、深呼吸する。
「あんたらの中で、私と涼のチームに加わりたいって人、手を挙げなさい!!!」
副キャプテンである八乙女太一が真っ先に手を挙げる。
「はい!!!」
男子部員は驚愕する。
「えー!!!」
隼人もまさかの反応に意図を確かめる。
「お前、どういうつもりだ?」
「俺、あんたのこと嫌いだったし、この際、面白い方に賭けるよ」
太一は涼の前に近づく。
「キミ、バスケいつぶり?」
「中2以来」
「最低2年以上のブランクか。おもしれぇ!」
麗子の美貌に他の男子も手を挙げだすが、
麗子はあっさりと切り捨てる。
「あんたらは要らないわ!」
「えー!!!」
麗子はいい人材が見つかったと笑みを浮かべる。
「あんた、気が合いそうね♪」
「俺の親父、教える専門だから、こいつの才能見たら、止められなくなるぜ♪」
「それじゃ、涼はあんたに任せるわ。」
こいつ、まさかここまで考えてたのか...
その後、涼は太一と帰り、茜は麗子と梓と一緒に帰ることになった。
「麗子はやっぱり優しいね♪もう少し素直になればいいのに♪」
「十分、素直だと思うけど!」
「あの、他にメンバーどうするんですか?」
「うちの部員使う?」
「それはダメね。涼と一緒にプレイするので満足して、本来の目的から外れそうだし」
「それじゃ、どうするの?」
「そんなの頼るのは一つしかないでしょ♪」
後日放課後、メンバー集まる。
早速、涼は太一の父親指導のもと、練習に励み、時には太一の力も借りつつ、2対1プレーでの練習もしたり、気合十分だ。それに加え、追加で入ったのは生徒会長と副会長は危機感がなく、イチャつき始める。2人は付き合っている。
「まさか、俺が救世主になるとはな、エッヘッヘ」
「さすが、ダーリン♪ステキ♪」
麗子は殺意に目を向ける。
梓は麗子の怖い視線に少しビビる。
「麗子!麗子!落ち着いて」
「それより、私達は何をすればいいんだ?」
麗子はニコッと答える。
「シュート100本練習しかないでしょ♪ちなみに休みの日は200本に増大ね♪」
「100本!?」
梓も驚愕する。
「マジ!?」
「私も一緒にやるから安心してね♪」
「だったら、一人25本か。」
「怖かったよ〜♪ダーリン♪」
「一人100本よ、バカなの?」
「私にそんなにできるかな、ダーリン♪」
「大丈夫だよ♪俺が守ってやるよ♪」
2人がイチャつき始め、また麗子はイライラし始める。
梓はとっさの嘘を考える。
「ここは誓いのゴールって伝説があって、シュート決めるたび、2人の愛が深まるって伝説あったんだよね♪」
2人はそれを聞いてやる気を出し、練習を始める
「ありがとう、梓♪もう少しで地中に埋めてやろうかと思ってたの♪」
「笑顔でそんな恐ろしいこと言わないでよね」
茜はどうすればいいかわからず、麗子に何をすればいいかを聞く。
「あの、私は何をすれば言いんでしょうか?」
「とりあえず、周りのサポートかな?水分補給だったり、食べ物、買い出し行ってもらったり。土日は朝から晩まで練習するから、大変になるだろうけど、よろしくね♪」
「はっはい!!」
残りクラスマッチまで2週間あまり、皆、必死に練習する。麗子、梓、太一は当然ながらこの期間、部活には顔を出さなかった。