14話 仲直りとファーストキス
その頃、隼人と茜はイオンモールの中に入り、映画館へ向かっていた。
「茜ちゃんはいつもどんな映画見るの?」
「やっぱりホラー...かな」
懐かしいなぁ...涼くんと見たんだ...
隣が涼くんだったらな...
隼人は茜が少し暗そうな雰囲気を出していたので、心配する。
「ごめん。辛いこと、思い出させちゃった?」
「いや!そんなことないよ!すごく楽しみにしてた映画なんだよね!」
何やってんだ!私! これは新しい恋を始めるチャンスでもあるんだから、ちゃんと隼人くんと向き合わないと!!
映画終わり、隼人と茜は記念特典として、映画が見た人だけがもらえるペアストラップ、激レアをもらう。
「おぉーー!!」
「奇跡!奇跡だよ!!」
「これってそんなにレアなの?」
「確率20%しか貰えない激レアグッズだよ♪今日来て良かった♪」
「結構あるなぁ..」
「ホラー映画って、あんまり見ないんだけど、すごく面白かったよ!」
茜は悲しい気持ちに蓋をして、元気を振る舞う。
「そうでしょ!面白いでしょ!やっぱりこのシリーズは外れないんだよね!」
早く涼くんを忘れないと...隼人くんの気持ちにちゃんと向き合って答えを出さないと..
「俺、茜がオススメする他のシリーズのホラーも見たくなったよ!」
「えーっとね、私のオススメは...」
たまたま同じ映画館に来ていた涼と美月が楽しそうに話してる2人を見かける。
涼は遠目で2人の様子を見て、悲しくなりつつ、茜に対しても怒りの感情を募らせる。
あいつ、本当に俺のこと、どうでもいいんだな...
ペアストラップまでして、なんだよ、それ....ふざけんなよ!
心のどこかでまだ俺のことを好きでいてくれると思ってた...あいつは俺以外のことを好きになることは絶対ないって...
けど、それは俺の思い込みだったんだ....!
もう、茜のことを考えるだけで辛くなる。
茜のことなんか忘れたほうが楽になるんじゃないのか...いっそ、このまま美月を好きになれば...
涼はやりきれない気持ちを抱いたまま、美月と映画を見る。映画は恋愛映画。
映画も終盤に差しかかり、美月は涼の手を握る。
映画がキスシーンに入ると、美月の握る力はより強くなる。
「...涼くん...」
涼は葛藤していた。美月に答えを出さないといけないけど、茜の思いが捨てきれずにいた。
美月は左手で涼の顔をそっと自分の方へ向け、顔を近づける。
涼は美月の色気、大人びた雰囲気に吸い込まれそうになる。
すごくいい匂いがする...ここで流されたら、後戻りできない...でも、断ったところで茜が戻るわけでもない...もう、それならこれでイイんじゃないか?..もう、何も考えたくない..もう嫌だ、茜のこと思い出すだけで辛くなる..忘れたい、茜との思い出も何もかも...
美月は涼が戸惑い、葛藤していると分かりながらも、悲しい気持ちを押し殺しながら誘惑を続ける。
ホントはこんなキスしたくない...けど、私にはこの方法しかない...これが私にとってのラストチャンス!もう誰にも渡さない!
お互いの唇が触れそうになった頃、ある映画のセリフで涼は近づくのを止める。
そのセリフはヒロインが相手役に
「一生の宝物にするね♪」
というセリフ。
涼は初めてデッサンした時のことを思い出す。
宝物?...そうえば、あの絵を渡してそんなこと、言われたっけな...
涼は茜との出来事を走馬灯のように思い出した。
そして、本当の想いに気づく。
何考えてたんだ!俺は!バカか!?茜はそんな奴じゃない!人を道具にしたり、人の思いをバカにするようなことは絶対にしない人間だ!今辛いのは俺なんかじゃない!茜だ!
俺は茜が好きだ!それが俺の答えだったんだ!!
涼はやっと自分の素直な気持ちに気付き、涙をボロボロと流し始める
美月は涙を流す涼を見て寸前でやめる。
「やっぱりできないよ...」
涼は美月の肩をそっと持ち、少し離す。
「ごめん。俺やっぱり茜が好きだ」
美月は笑顔で返す。
「うん、わかってた♪私のワガママに付き合ってくれてありがとう♪
行ってきなよ、茜ちゃんのところへ」
「うん!」
上映中ではあったが、涼はすぐに映画館を抜け出した。
美月は泣きながら、涼の背中を目で追うことしかできなかった。
その頃、隼人と茜はイオンモールを出て、ある場所へ向かっていた。隼人と茜は映画を見た後、イオンモール内のアイスクリーム屋に立ち寄っており、まだイオンモールからそこまで離れてはいなかった。
隼人は目的の場所に着く。
そこはイオンモールから徒歩5分程度の場所。それはラブホテルだった。
「茜ちゃんってさ、よく見たらすごくイヤらしい体してるよね♪」
茜は隼人の本性がこんな人だとは思わず、棒立ちで固まる。
「えっ?」
「涼を落としたのってアレでしょ♪楽しみだなぁ♪」
「あの...」
隼人は戸惑う茜を見て、腕を掴み、歩き出す。
「大丈夫だって♪優しくするからさ♪」
「やめて!やめてください!」
隼人は茜の声なんか聞くつもりはなかった。
「いいから、いいから♪」
茜は身の危険を感じた。もう、ダメかと思った時に、着信がなる。着信を見ると涼からだった。
茜はすぐに出て、助けを求める。
「助けて!涼くん!」
隼人は茜の電話をさっと奪う。
「何してんだ!てめぇ!」
「返して!返してよ!!」
隼人は本性をあらわにする。
「うるせぇ!」
「茜!大丈夫か!?返事しろ!!茜!!」
「あー、面倒な事させやがって、このバカが!」
涼は完全に隼人が悪人だと確信し、怒りをあらわにする。
「お前、茜に何しやがった?殺すぞ!」
「親殺しのお前が脅しとかマジウケるわ♪」
やめて..それ以上いわないで..
「お前、今どこにいんだよ?さっさと答えろ!!」
「いいこと思いついちゃった♪」
隼人はスピーカーにする。
「茜ちゃん、言ってあげなよ♪俺達の居場所?
ププッ」
「茜、早く言え!俺が助けてやる!!」
こんな場所言えない...涼くんまで巻き込んだらいけない...
「教えてやるよ♪」
「やめて!!」
隼人は場所を示す。カメラオンにして、ホテルの名前を映して、その後、茜を映す。
「.....」
茜は泣き出して、その場で、うずくまる。
「あーあ、いいとこだったのになぁ....」
「茜!そこから一歩も動くなよ!今向かってるから!!」
隼人は茜の顔をを人さし指で持ちあげる。
「あのさ、聞きたいんだけど、涼のやつ、お前みたいなの本気で好きになったの?」
「....」
「俺、信じられないんだよなぁ..てっきり、エッチが上手とかそんなもんだと思ってたけど、何もないじゃん、キミ」
「...うるさい」
「ホントにバカはバカ同士で惹かれ合うのかなぁ...まぁ、俺はバカじゃないからバカの気持ちなんかちっともわからないんだけど。
ねぇ、なんでそんなに2人はバカなの?」
「...許さない!あんたを絶対許さないから!」
バチン!!と茜が隼人をビンタする音が響く。
隼人は茜のほっぺをつかみ怖い目になる。
「あのさ、自分の立場分かって、もの言ってる?俺より格下が反抗すんじゃねぇよ」
茜は反抗的な目で反抗する
「私はいくらバカにされてもいい。私はバカで涼くんに助けられてばっかりだった。いつも背中に隠れて守られてた。そんな人、どんな風に言われたって仕方ないと思う。けど、涼くんは違う。涼くんは誰よりも優しくて人の痛みが分かる。あなたなんかよりすごい人なんだ!涼くんよりも格下のあんたがバカにすんな!」
ともう1度、茜は隼人に向かって思いっきりビンタする。
隼人はキレて、ビンタし返す。
「お前、許さねぇ!」
倒れ込む茜の首元を掴み、
「謝るなら今のうちだぞ?どうする?」
茜はバカにするように笑い
「やってみなよ、この負け犬が♪」
隼人はもう一度ビンタする。
茜は泣き崩れる。
私はバカだ...もっと早くに気付いていれば...
もっと素直になってれば変わってたのかな...
隼人の怒りは収まらず、首元を掴み、
「謝れ、謝れよ、ゴミが」
茜はニコッと笑う。
「ゴミはお前だよ♪」
このクソ女が!!!
グーの拳をした時、茜はもう終わりと思った。
茜は怖さのあまり、目を瞑る。隼人が本気で殴ろうとしたとき、大きな声が聞こえる。
「隼人!!!」
「ん?」
息を切らしながらも、隼人を睨みつける、涼。
「フフッ、ヒーロー登場ってか?」
涼は息を整える。
「今から、あんたをボコボコにしてやる!!」
「フフッやってみろよ♪カスが♪」
涼は隼人に殴りかかる。しかし、喧嘩に関しては隼人のほうが上であり、3発でやり返され、その場にうずくまる。
「喧嘩もろくにしたことねぇやつが俺に勝てるわけねぇだろ!ボケが!」
「うっ....」
私、最低だ..涼くんにこんな痛い思いまでさせて..
隼人は飽き、帰り始め、愚痴を言う。
「なんか、冷めたわ!あーあ、時間返してほしいわ!」
そのまま行こうとする、隼人を涼が止める。
「ちょっと待てよ!」
茜は涼がこれ以上、ケガしないように止めに入る。
「涼くん!もういいから!私のことなんか、もう..」
涼は茜に一喝する。
「うるせぇ!これは俺がやりたいからやってんだ!」
「涼くん...」
隼人は呆れるような目つきで涼を見る。
「まだやるつもりなのか?勝ち目ねぇぞ?分かってる?」
「バスケだ!今度のクラスマッチ俺とバスケで勝負しろ!」
「ププッ、今度は頭までイカれたのか?てめぇ」
涼は立ち上がり、強い決意を示す。
「大マジだ。バスケなら誰にも負けねぇ!」
「俺はバスケ部主将だぞ?本気で勝てると思ってんのか?」
「俺が勝ったら2度と茜に手、出すんじゃねぇ!」
「俺が勝ったらどうすんだよ?」
「その時は奴隷でも犬でも何でもやってるよ」
「ププッおもしれぇぜ!乗ったぜ!その勝負!」
茜は涼の優しさが嬉しく、涙が止まらない。
「涼くん、なんでそこまで...」
涼は優しく声を掛ける
「茜は俺の全てだ。こんな傷つけられて男として黙ってられねぇよ♪」
隼人は2人をあざ笑う。
「ホントにバカだなぁ♪お前ら♪お前みたいな見てると、壊したくなるぜ♪何がお前をそこまでさせるんだよ♪」
「バカはお前だよ♪」
「はっ?」
「あんなに多くの時間を茜と過ごして、何の魅力も気付かないお前はバカだつってんだよ!」
「あー、そういうこと言っちゃうんだ♪完全に頭きたわ!お前はまだ道具として優しく使ってやろうかと思ったけど、お前もその女も地獄を見せてやるよ♪」
「おもしれぇ♪やってみろよ♪」
隼人は去り際、一言脅しをする。
「もう容赦しねぇからな、お前ら..」
涼は座り込む茜に対して、優しく手を差し伸べる。
「帰るか?俺たちも♪」
「..うん」
帰り道、茜は自分を責める。
また、私は涼くんに助けてもらった...こんな関係いけないのに...それに涼くんを止めないと、このままだと涼くんも私のせいで地獄を...
「ごめん。もう、私のことはほっといていいから、変なことに巻き込んでごめんね。」
「何、勘違いしてんだよ。」
「勘違い?」
「隼人に勝負ふっかけたの俺だし、むしろ俺が巻き込んだくらいだ。」
「それは違うよ。私のせいだよ。全部。それに涼くんには美月ちゃんがいるでしょ?」
「今日、別れたよ」
「えっ?」
「別れたからお前のとこ来たんだよ。」
「ダメだよ!そんなことしちゃ!今からでもより戻しなよ!」
涼はほっぺをつかむ
「お前のそういうとこ大っきらいだ!!」
「少し痛い...」
「プライドとか意地は捨てろよ!俺が隼人に勝てば全部、解決すんだろ!
お前は俺に勝ってほしくないのかよ!!」
茜は泣き出す。
「勝って欲しいです」
涼はニコッと笑う。
「だったら、それがお前の気持ちだろ?違うか?」
茜は泣きながら涼に思いっきりハグする
「ずっと辛かったよ。涼くんと別れたくなくて、けど、別れないといけないんだって言い聞かせてた。ホントはずっと涼くんのそばにいたかった!!」
「俺も同じ気持ちだよ。好きだよ、茜」
涼は茜の顎をそっと持ち上げる。 そして、茜も目を瞑る。
「今からするのは俺のものだって証だから、一生、忘れんじゃねぇぞ。」
「...はい」
これが2人にとっての初めてのファーストキスであった。