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12話 亀裂と別れ

涼は1週間ほど病院で過ごし、医者から退院許可が下りる。早速、茜に報告のLINEする。


明日、退院するから、一緒に遊ぼう!


既読もつかないため、涼はある作戦を立てる。


茜はLINE自体には気付いていたが、どうしていいかわからず、読まずにいた。

学校が終わり、家に帰ると、母親と涼が桃鉄のゲームを楽しそうにしていた。

茜は驚く。

「何やってんの!?」

涼は茜をゲームに誘う。

「おかえり!茜!一緒にやろうぜ♪」

茜は戸惑いながらも一緒にゲームをすることに。

「...うん」


最初は緊張していたが、1時間ほどすると、茜も夢中で楽しんでいた。


3人で勝負し、2時間ほどして決着がついた。

茜がビリになり、茜は悔しくなり、もう一度勝負を頼む。

「もう1回!もう1回!勝負しようよ!」

「もう、夜の仕度しないといけないから無理よ」

「やるとしてもまた、今度な」

ゲームも一段落して、母親は茜に頼み事をする。

「茜、涼くんを家まで送ってあげなさい。退院ばかりなんだから、何かあるときはすぐに私に連絡しなさいよ、わかった?」

茜は退院後だということをすっかり忘れていた。

「ごめん!すっかり忘れてた!ホントはこんな事してる場合じゃ..」

涼は茜のほっぺを優しくつまむ

「俺から誘ってんだからいいじゃねぇかよ!ゲームの何がいけないんだよ!バカか!?お前!?」

茜は涼の優しさに涙目になる。

涼はニコッと笑い

「お前はお前のままでいいんだよ♪」


帰り道、涼は明るく振る舞いながら、桃鉄のゲームの話をして、できる限り、茜の自己嫌悪を取り除こうとする。でも、その気遣いは余計に茜を苦しませていた。茜は涼の優しさに気付いていたからこそ、ホントは自分が涼くんの立場になって支えなければいけないと考え、自分を責めていた。

また、美月や麗子から言われたことも思い出し、茜の心はより暗くなっていた。


もう少しで涼の家に着く頃、茜は自分から別れを切り出す決意を固める。

茜は独り言のように話し始める。

「私、逃げてたんだ。LINEも気づいてたけど、読めなかった。自分のせいで、こうなった現実を受け入れるのが怖かったんだ。だから、お見舞いも行けなかった...私は何も出来ない」


「考え過ぎだって!なんでお前が悪いってなるんだよ!おかしいだろ!」


「おかしくないよ。美月ちゃんだったらこんな事、ならなかったと思う。私が弱いから秘密を、あの写真を守れなかった..涼くんが発作を起こした時も私は何もできなかった。あの時、涼くんを救ったのは私じゃない、美月ちゃんなんだよ」


涼は救急車を呼んだのは茜だと思っていたため、美月が呼んだことを初めて知り、強く否定できなかった。

「そんなの関係ない...」


茜は必死に涙をこらえる。

「だから、美月ちゃんと付き合ってほしいの。あの人ならきっと涼くんを支えてあげられるから」


そのまま、茜は振り返り、帰ろうとするが、涼がとっさに茜の腕をつかむ。

「いや、意味わかんねぇよ。あいつとはただの幼なじみで、それ以上でも以下でもねぇよ。」


「何を言われても考えは変わらないから、ごめん、勝手に決めて。これからは友達でよろしくね」


「お前が今日、別れを切り出すってなんとなく分かってた。だから、茜がどうしても別れたいって言うなら受け入れるつもりだった」


「だったら、それでいいよね」


「それじゃ、なんでそんなに辛そうなんだよ?」


茜はこらえていた涙がボロボロこぼれだす。

「...」


「今回の件で茜は悪くないよ。俺自身の問題だから、気にしなくていい。だから、もう一度やり直そう!俺たちならきっとうまくいく!」


「嬉しいよ。涼くんの気持ちは嬉しい」


「だったら..」


茜は涙を流しながら、涼が差し止めてる手を優しくほどき、目を見てちゃんと話す。

「だから、ダメなの。私はその気持ちに甘えてしまう。このままだと私、ダメになっちゃう気がするんだ。私だけならまだいいの。けど、また涼くんが傷つくことになって、涼くんに取り返しのつかないことをしてしまう自分が怖いの....

私は大切な人を傷つけてまで隣にいようとは思わない。もう、傷つく涼くんを見るのは辛いの。

それが、私の答え。だから、もう私に優しくしないでね...」

涼は茜の気持ち、別れを切り出す本当の理由を知り、それ以上引き止めることができなかった。


夜、茜は自分の部屋で今までの思い出を振り返りながら、涼くんに送るLINEの文章を考えていた。

すると、涼から、LINEが来る。


ごめん。辛い思いさせて。一旦、別れよう。

落ち着いたら、やり直せないかな?俺達?


茜はポロポロと涙を流しながら、霞むスマホを片手に文字を打ち込む。


最後まで気を使わせてごめん。もう私は大丈夫だから、気にしないで。


翌日から涼は学校に通い始めることとなった。冷たい視線を向ける女子もいたが、未だに根強いファンも多かった。そのファンの間で注目していたのは茜との関係性であり、未だに付き合ってるのかどうかというところだった。


昼休みのチャイムが鳴り、涼は茜を誘うか迷ったが誘わずにそのまま食堂へ行く。

「カツカレーお願いします」

涼が席に座ると同時に、4.5人の女子生徒が涼を取り囲むように座る。


「あー、良かった、空いてて♪」

「涼くんの隣なんてツイてる♪」

「やった!私もカツカレー!相性いいかもね♪私達♪」

「ずるいよ!それは!」


美月が助けに入る。

「涼くん、一緒に食べない?」

「あぁ、その予定だったな」

涼はさっと席を立ち、美月と同席する。


「あのさ、茜ちゃんとはどうなったの?」

「一時的に別れた」

「一時的?」

「俺は待つことにした。茜だけは俺を裏切らないって信じたい...」

美月は涙目になる。

なんで、あの女なの?...なんで私を見てくれないの?ずっと近くで見てきたのに...


「ごめん。美月には感謝はしてるんだ。あの時、俺の味方をしてくれたのは美月だけだったから。だから、もし、茜が俺を裏切るようなことあったらその時は美月のことも真剣に考えようって思ってる」


「ありがとう。それだけで嬉しい...」


その頃、茜は屋上に呼び出されていた。

茜は3人の女子生徒に問い詰められる。

「あのさ、涼くんの連絡先教えなさいよ!」

「もう別れたんでしょ!必要ないじゃん!」

「今度は私たちの番でしょ!!!」


ちょうどそこに隼人が助けに入る。

隼人は屋上でたまたま昼寝をしており、周りがうるさく起きたのだ。隼人はすぐに状況を察した。

「あんたらさ、卑怯だって思わないの?そんな大人数で一人を責め立ててさ、おかしくない?」


周りは黙る。


「わりぃけど、こいつ今日から俺の女だから、余計な手出ししたらどうなるか分かってる?」


「えっ!?なんで!」

「隼人先輩!なんでですか!?」

「いつから付き合ってるんですか!?」


隼人は冷静に答える

「今からだけど。今助けを必要としてたから助けたついでに交際申請したんだけど、文句ある?」


「意味がわからない!?」

「何を言ってんの!?」


隼人はゴミを見つめるように怖い目になる。

「俺の時間を無駄に使うんじゃねぇよ、クズ共が!」


茜を囲ってた女子生徒は去っていく。


「あの..ありがとうございます」


「いや、いいよ。それよりさ、一応放課後、迎えに行くよ。また、こんな目に会うかも分からないしね。じゃ、またね♪」


「あの!何でそこまでするんですか!?」


「本気だから。俺、冗談で交際申し込んでないから。ただそれだけだよ♪」


えーーー!!!!


涼は食堂から教室へ戻る際に女子生徒のヒソヒソ話を小耳に挟む。


「今度は涼王子じゃなくて隼人先輩だってよ!」

「なにそれ!?ずるすぎない!?」

「もしかして、隼人先輩が本命で涼王子はそのための道具だったんじゃない!?」

「ホントに最低!あの茜って女!」


まさかな、あいつがそんなすぐに他の男に乗り換えるなんてないだろうな...


放課後、涼は念の為、噂話の真相を確認しようとした時、隼人がやってくる。隼人は廊下越しから茜に呼びかける。

「茜ちゃ~ん♪迎えに来たよ♪」

茜は少し躊躇はするが、そのまま隼人のもとへ行こうとするが、それをとっさに涼が止める。涼は何も言わずに去っていこうとする茜の腕をつかむ。

「なんだよ、それ...ふざけんなよ!」


「ごめん...」


「ホントにいいのかよ!」

何でそいつなんだよ!俺の何が不満なんだよ!


「うん。私はこれでいいと思ってるよ..」

ホントはこんな事言いたくないよ...


こいつ、もう知らねぇ!俺を裏切りやがった!

「だったら、俺は美月と付き合うことにする!」


「それなら、良かった」


「後悔しても知らねぇからな!」

涼は涙目になりながら教室を去る。

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