1話 飼い主とペット
季節は7月中旬に差し掛かかった、7月10日金曜日である。皆、もうすぐ夏休みで浮かれモードであったり、あるクラスでは夏休みに向けて女子生徒がある争奪戦をかけて火花を散らしていていた。
キーンコーンカーンコーン
放課後のチャイムがなり、成瀬涼のクラスの女子生徒は獲物を狩るような視線で成瀬涼に視線を向け、あっという間に成瀬涼の席の周りが埋め尽くされる。
女子生徒
「今度の夏休み、海、行かない♪」
「ズルい!私が先じゃん!」
「こんなうるさい人じゃなくて、私と行こうよ♪ねっ♪」
成瀬涼はイライラを募らせる。
こいつら、マジで邪魔クセェ!
机をバン!!と叩いて、席を立ち、一言放つ。
「夏休みは家から一歩も出ねぇに決まってんだろ!!」
そして、その場から立ち去ろうとする涼。
それを見かねた月野茜が涼を止める。
茜も机をバン!!!と叩いて自分の存在をアピールし、涼を指差しして、衝撃の発言をする。
「あなた!!本当に私のペットになりたいの!!!???」
周りの生徒は意味不明な発言すぎてキョトンとする。茜はクラスで便利屋として扱われていたこともあり、名前自体を覚えてる人はいなかった。
小言でざわつく生徒たち
「えっ?なに?ペット?」
「聞き間違い?」
「なんで便利屋が涼王子にペット?何を言ってんの!?あいつ..」
成瀬涼は月野茜がこういう発言をすることは事前に知っていた。半分、冗談なのではないか、そうであってほしいと願いも叶わず、茜のシナリオ通りに演技をすると腹をくくる涼。
涼は振り返り、少しずつ茜の元に近づき、茜にだけ聞こえる小さな声で話しかける。
「ホントにやらないといけないのか?」
茜はニコッと笑いながら、
「もちろんだよ♪」
涼は絶望しつつ、茜の前で忠誠を誓うように膝まづく。
周りの女子生徒はすかさず異様な光景に止めようとするが、涼が制止する。
「邪魔だ!!失せろ!!これは俺の問題だ!!外野が口出すんじゃねぇよ!!!」
茜はニヤリつき、右足を差し出す。
「覚悟しなさい、ポチくん♪」
涼は悔しそうな目つきで睨み返し、小言で言い返す。
「誰がポチだ、コラァ!」
茜は少し雰囲気を暗くしダーク感を増す
「返事はご主人様で統一しなさい、バカ犬」
涼と周りの生徒はあまりの変わりように若干の恐怖を感じるくらいだった。
涼は条件反射的に足元にキスをして、忠誠の言葉を口にする
「あなたのペットになれて光栄であります。女王様」
茜は軽く微笑み、涼の頭をポンポンとする。
「よくできましたね♪ご褒美あげるね♪」
茜はバックをゴニョゴニョと、探し始めあるものを取り出し、取り出した物を掲げ、宝石を見つめるような視線で見つめる。
「やっとこの日が来るなんて〜♪私の首輪〜♪」
周りの生徒は驚く
く..く..首輪!!!!???
そして、その首輪を当然のごとく、涼にカチッとつける。
茜は優しく涼に声をかけてあげる。
「長く座らせてごめんね♪立っていいよ♪」
涼は立ち上がり、無の表情で茜を見つめる。
茜は今までに1番嬉しいことがあったかような笑みを浮かべ
「すごく、似合ってるよ♪ポチ♪」
こいつ、頭バグってんのかよ!!!?
時を遡ること、昨日の20時過ぎ。
涼はバイト終わり、フィギュアを見に店に訪れていた。涼は楽しそうに店の中を物色する。
ちょうど茜も同じ店に来ていた。茜はフィギュアではなかったが、漫画本を見にきていた。
茜は遠目で涼の姿を発見する。茜と涼は隣同士の席ということもあり、自然と顔を覚えていた。
茜は少しずつ近寄り、観察することにした。
涼は観察されてるとは知らず、美少女フィギュアを手に取り、嬉しそうに観察する。
「やっべぇ〜♪ちょう綺麗じゃん♪ん〜♪」
茜は反射的にスマホでスクショする。
「気持ちわるっ!この人!」
涼も茜の顔はなんとなく覚えており、ヤバい状況になったと確信する。
涼はそっとフィギュアを置いて、茜に笑顔で手を振ってみることにした。
茜はスクショした写真を見せつけるようにして、手巻き猫のようにしてこっちに来るように促す。
「はやく、来なさんな♪」
「嫌な予感しかしねぇ....」
そんなこともあり、茜は写真で涼の弱みを握り、下僕として好きなように命令していたのだ。
そして、現在に至る。