236-240
236振り子の赤ベコ
自然現象がAIで制御される現在
珍現象がアイムで制御される未来
現象の果にオレンジの果実が滴る過去
その狭間でゆらゆらする影法師
その狭間で逆さまに立ち尽くす
振り子の赤ベコ
そんなに遠くて
そんなに近くて
そんなに気づかないで
ジグソーパズルのピースではめ込む
感情のネジ穴
螺旋の先に
ありもしない
高原の風
ほほえみが涙する
237ココア
ココアの美味しい暑さ
ココアのやけどする悪戯
ココアのあここするココア
ココアやココアの届いた絵手紙
ココアにしてココアにあらず
ココアですますココア
ココアの甘さが辛い日もある
明日ココアを飲むことはない
明日ココアはどこにもいない
明後日どこにいるかもわからないココア
ココアにしてココアにあり
ココアであってココアの衣のココア
238シジュウカラ
鳳凰の羽をひとつだけもつ
シジュウカラ
ウグイスに声が悪いとバカにされ
カラスに悪さが足りないとバカにされ
鳩に呑気さがないとバカにされ
だれもしらない しらないだれか
鳥の真理はトサカに揺れる
シジュウカラのない腕がうずいている
笛より歪な声のウグイスを飛び越して
カラスの悪さより厳しい爪で
鳩の象徴を奪う空を覆う翼で
羽ばたく
舞い落ちるシジュウカラの羽は
鳳凰の落とした鳥の世界でできた
卵の殻
239ドレミの歌
シチューよりシチューな市長
市長より視聴な事情
自乗より自浄な字上
じじょうをじじょうしてじじょうにして
じじょうに似てるさんじょうの河原
で首になった英雄たちが歌う
ドレミの歌
240裂けるチーズ
夏の愛は嘘の愛
夏の恋は虚構の恋
夏の夏らしさは
うっとおしい
真夏の中心で
愛が裂けるチーズ